2026年3月13日金曜日

志間貴司 - One Day In Summer


Label: Woorell Records
Catalog#: LU25-5029
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Japan
Released: 1984

A1 Wilful Lady 4:09
A2 One Day In Summer 6:14
A3 Afternoon Dreamin' 9:40
B1 Harbour Line 3:55
B2 Glory 8:49
B3 Illumination 5:01

ハワイ直輸入の日焼け用オイルブランド「サン・タン・クラブ」のプロモーションを兼ねた企画レコード。日焼けの度合いを「ライト」「ダーク」「プロフェッショナル」「ウルトラ」の4段階に分け、それぞれにフィットする音楽を収録した全4タイトルのうち、本作は軽い日焼け(ライト・タンニング)を楽しみたい人向けに制作された一枚。作者は、短すぎるTシャツを着たサーファーのジャケットで知られるシティポップ・グループPIPERのキーボーディスト志間貴司。和製フュージョン〜ニューエイジ調の楽曲を波音のSEが繋ぐというATLAS「BREEZE」を彷彿とさせるシームレスな構成で、バブル景気に向かう直前の日本人が抱いていた爽やかなビーチリゾートのイメージが鮮やかに描かれています。

「小麦色の肌は夏のステイタス。サンサンと降り注ぐ太陽の下、ヘルシーでリッチな日焼けタイムはサマーリゾートのもっともベイシックな過ごし方。一冊のペーパーバックと軽いドリンク、そしてお気に入りのミュージックをたずさえてゴキゲンなサンタン・タイムを楽しみましょう。サン・タン・クラブ・シリーズは日焼けタイムにフィットするGood Musicのベスト・パッケージ。最も効果的で上手な日焼けのメソッドであるステップ・タン(段階的日焼け)を音楽の部分にも応用したものです。軽い日焼けからプロ級の日焼けまで、4段階の日焼けにピッタリのアーティストとナンバーをセレクトしてあります。ですから、あなたがしたい日焼けのステップに応じて、サンタン・オイルを使いわける感覚で音楽もチョイスして下さい。きっと、あなたの気分にピッタリの素敵なサンタン・タイムが過ごせるはずですよ。」 - インサートより

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2026年3月11日水曜日

23 Degrees - ...An Endless Searching For Substance


Label: Silent
Catalog#: SR9467
Format: CD, Album
Country: US
Released: 1994

1 The Start Of An Unfinished Chain Reaction 9:48
2 The End Of New Beginnings 3:08
3 Radio Free Ian (Negative Ion Version) 3:59
4 Nagshbandi Escape Hatch 6:35
5 Dissolving Essence Of Dub (Last Laboratory Edit) 8:31
6 The Invisible World (Let Me See) 4:42
7 The Other Side (Chant Down Babylon Edit) 11:57
8 Floating 5:22
9 A Love You Never Knew 7:39
10 Dissolver Of Sugar (Intro) 5:54

ティモシー・ヘンドリックス率いるアンビエント・ダブ・プロジェクト23 Degreesが、サンフランシスコの名門Silent Recordsから発表したデビューアルバム。メンバーは中心人物のヘンドリックス(プログラミング/サンプラー)のほか、バーサ・マトゥス(キーボード/ベース)、ロイ・ロビンソン(コンガ/ジェンベ)、ヤーン・ネフ(サンプラー)、スティーヴン・ヒッチコック(ディジュリドゥ)。タイトルは「本質への終わりなき探求」の意。 
かつてのノイズ/インダストリアル路線から、より美しく永劫なるものへと志向を変え、チルアウトやサイケデリックの潮流を取り込みながら、デジタル技術と神秘主義を融合させる「テクノ・シャーマニズム」の実践拠点となっていたSilent。音を「意識を別次元へ運ぶ触媒」と考える同レーベルの思想を体現するように、本作もまたアンビエントの手法を内面世界の探究というテーマへと結びつけています。静かな意識の離陸から始まり、自己からの脱却、宇宙的な広がりを経て全体性へと帰一する瞑想的なプロセス。民族楽器によるトライバルなリズムとダブ的な空間処理。さらにラスタファリやイスラム神秘主義といった宗教的モチーフがモザイク状に織り込まれ、香木の煙が立ち込める寺院に迷い込んだかのような濃密な異郷情緒を醸し出しています。アンビエントが精神世界の象徴であった時代の空気を色濃く反映しつつ、コンセプチュアルな構成でありながら曲毎のアプローチが多彩で、純粋なリスニング・ミュージックとしても充実した一作です。 
23 Degrees名義でリリースされたアルバムは、本作と翌年の「Born Of Earth's Torments」のみ。Silentのアーカイブサイトによると、その後ヘンドリックスはレーベル所属のアラウラと結婚してハワイへ移住。近年は茨城県日立市を拠点を移し、自作スタジオでの音楽制作とサーフィンを中心としたクリエイティブな生活を送っているようです。

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2026年3月9日月曜日

Netherworld - Mørketid


Label: Glacial Movements Records
Catalog#: GM002
Format: CD, Album
Country: Italy
Released: 2007

1 Dreaming Arctic Expanses 9:16
2 New Horizons 9:24
3 Mørketid 12:33
4 Jøkul 7:28
5 North Pole 7:58
6 Virgin Lands 12:47

極北の自然現象や孤絶した世界観をコンセプトに掲げるローマのアンビエント・レーベルGlacial Movements。その主宰者であるアレッサンドロ・テデスキが、ソロプロジェクトNetherworld名義で発表したレーベル初となるフルレングス作品。タイトルはノルウェー語で「極夜(Polar Night)」。極地で太陽が地平線上に昇らず、一日中夜が続く季節を意味しています。
氷塊が軋む音、吹雪の風鳴り、オーロラの微弱な電磁ノイズ。北極圏で実際に採取されたフィールドレコーディング音源と電子音、ドキュメンタリー音声の断片などで重層的に構築された、気状化した静謐さが広がるサウンドスケープ。ドローンの雲霧の中をゆっくりと浮き沈みする長周期のパターンと、知覚できないほどのグリッド構造。地の底から響くような超低域の脈動は、人智を超えた生命秩序の蠢きとして作用し、自律音響世界における状況=アンビエンスの迫真性を際立たせています。孤独でありながらダークに陥らず。低明度の美しい光の存在を感じさせる秀作です。

Glacial Movements is a Rome-based ambient label dedicated to the concepts of Arctic natural phenomena and isolated worldviews. This release marks the first full-length album on the label by its founder, Alessandro Tedeschi, under his solo moniker Netherworld. The title, Norwegian for "Polar Night," refers to the season in polar regions where the sun never rises above the horizon, leaving the landscape in perpetual darkness.
The soundscape is a multi-layered construction of ethereal stillness, woven from authentic field recordings captured in the Arctic Circle, electronic tones, and documentary fragments—the groaning of ice floes, the howl of blizzards, and the faint electromagnetic hum of the aurora borealis. Long-period patterns drift slowly through clouds of drone, anchored by an almost imperceptible grid. Pulsations in the sub-bass range, resonating as if from the depths of the earth, evoke the movements of a life force beyond human comprehension, heightening the immersive realism of this autonomous sonic world. Solitary yet never veering into darkness, this is a masterful work that reveals the presence of a beautiful, low-luminosity light.

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2026年3月7日土曜日

Joan Bibiloni - Oníric


Label: Satie Producciones Audiovisuales
Catalog#: -
Format: Digital, Album
Country: Spain
Released: 2021

1 Agua Profunda 3:05
2 Massatge Oníric 7:19
3 Espasiado Fuera 10:19
4 Badia Onírica 6:13
5 Fila Onírica 2:52
6 Capell Oníric 5:23
7 Espasiado Fuera - Loving Obituary 10:22

スペイン・マヨルカ島出身のギタリスト/コンポーザーJoan Bibiloni(ジョアン・ビビローニ)が近年精力的に公開しているデジタル・アーカイブより、未発表音源や別テイクを自ら編纂したコラージュ・シリーズの4作目。カタルーニャ語で「夢のような」を意味する本作は、1986年から87年にかけてスペイン国営放送TVEで放送された自然ドキュメンタリー「Silencio Roto」のサウンドトラック素材をベースに、Javier Mora(キーボード)とLlorenç Barceló(オルガン)を迎えた新規セッションを織り交ぜ、長い時間をかけて解体再構築したコラージュ/リワーク作品。原曲の澄んだエッセンスのみを抽出して放散させるような編集手法により、彼の長いキャリアの中でも際立ってアンビエント色の濃い、幻想的な仕上がりとなっています。コロナ禍という閉塞した時期に、ビビローニが心の中に描いた楽園世界。他界した親しい友人たちに捧げた「Espasiado Fuera - Loving Obituary」をはじめ、全編通して海や風の気配と一体化した慈愛に満ちた空気が広がっています。

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2026年3月5日木曜日

Kevin Postupack - Release


Label: RM Records
Catalog#: PRM-1-1020
Format: Vinyl, LP, Album
Country: US
Released: 1984

A1 Giselle 2:58
A2 Release 7:56
A3 Summer Solstice 7:13
A4 Escape 5:27
B1 Windsong 4:45
B2 Devotion 1:13
B3 Eye Of The Storm 2:43
B4 For Absent Friends 3:47
B5 La Mer 7:54

現代社会や政治を鋭く風刺する小説家であり、劇作家、ビジュアルアーティスト、脚本家、ミクソロジストの顔も持つ多才な芸術家ケヴィン・ポスチュパックが、ミュージシャンとして活動していた80年代に自主レーベルから発表したソロアルバム。1983年1月と6月、コネチカット州のスタジオにて録音。クラシック/スチール弦ギター、テナーリコーダー、ウィンドチャイムといったすべての楽器を彼自身が演奏しています。
ポスチュパックの音楽性は、ジャズ、クラシック、フォーク、ミニマリズムのあいだに位置する混成スタイル。装飾を排したフレージングと余白を活かした構成に、時にスペイン近代ギターの語法や旋法的なアプローチを交えながら、影を帯びた内省的な曲想を淡々と描き出していきます。A面はタイトル曲をはじめ、美しい流れを持つ私的な心象スケッチ群。B面では、キース・ジャレットやジョン・マクラフリンへの敬意を表した楽曲(B1-2)、スティーヴン・クラムと共作(B3-4)など、より動的に外の世界へ意識を広げつつも、根底にある透徹した世界観は変わらず。息遣いが聴こえてくるような親密なレコーディングも相まって、作者の内面世界へと静かに引き寄せられていきます。
下記はジャケット裏に記された、モダニズム詩人ウォレス・スティーヴンズの詩「青いギターを持った男(The Man With the Blue Guitar)」の一節。音楽表現に対するストイックな姿勢の根源が垣間見える引用で、とても興味深い言葉です。

“Throw away the lights, the definitions,
And say of what you see in the dark
That it is this or that it is that,
But do not use the rotted names.

Throw the lights away, Nothing must stand
Between you and the shapes you take
When the crust of shape has been destroyed.
You as you are? You are yourself.

from “The Man With the Blue Guitar”,
by Wallace Stevens, ⓒ 1937, Alfred A. Knopf, Inc.

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2026年3月3日火曜日

Steve Khan - In A Silent Way


St.GIGAアーカイヴ「Ebb tide A」より。アメリカのフュージョン系ギタリストSteve Khan(スティーヴ・カーン)による、Joe Zawinul(ジョー・ザヴィヌル)作品のカバー。敬愛する巨匠たちの名曲を繊細なアレンジで再構築した1980年のアルバム「Evidence」に収録。アコースティック・ギター(6弦・12弦)とエレクトリック・ギターが多重録音で丹念に重ねられ、時に低音弦のループを半速再生させるなど、彼独特の緻密なスタジオ・テクニックが施されています。ニューエイジ・ジャズ的な手触りがあり、どこか懐かしいような穏やかで心地よい余韻が感じられるナンバーです。

2026年2月28日土曜日

Xiomara Fortuna - De la Loma al Llano


Label: -
Catalog#: -
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Dominican Republic
Released: 1987

A1 Quiero Abrir una Ventana 3:49
A2 Mujer Campesina 3:48
A3 Tiempo Oportuno 3:56
A4 Gagá Lola 4:42
A5 Ay! Si Yo Tuviera Tierra 3:09
B1 Quisiera Con Mil Amores 4:29
B2 Muchacho Haragán 4:31
B3 Trabajo y Mas Trabajo 3:22
B4 Tenemos Que Organizarnos 4:40
B5 Estoy Unida 3:41

「フュージョンの女王」の異名を持つドミニカ共和国の国民的歌手シオマラ・フォルトゥーナが、1987年に発表したキャリア初となるアルバム。農村開発や女性の権利擁護を理念に掲げるドミニカ=スイス共同の文化支援プロジェクトの一環として制作。複数存在するエディションのうち、本作は自主制作に近いかたちで流通したヴァイナル・エディション。
フォルトゥーナ率いるチームが国内の農村部を巡り、近代化の影で失われつつあったアフロ・ドミニカ系のフォークロアを現地奏者や女性たちから採集。そうした数年間にわたるフィールドワークの成果を糧に、トニー・ヴィシオーソやガイ・フロメタといった越境的感性を持つ精鋭ミュージシャンらとともに結実させたのが本作。サトウキビ農園の労働者に根付く「ガガ」。土着の守護聖人を祀る祭礼や儀式において演奏される「パロス」。死者の魂を弔う複雑なポリリズムを特徴とする「コンゴ」。───土の匂いが立ちこめるような伝統的リズムの躍動と、ジャズ/フュージョンの洗練、そしてフォルトゥーナの深く力強い歌声が交わり、複雑でスリリングながらも有機的なアンサンブルへと昇華されています。
当時主流だった華やかなメレンゲとは一線を画し、自らのルーツと社会的現実に真摯な眼差しを向けたドミニカン・オルタナティヴの嚆矢に位置づけられる名作。全編通して素晴らしい内容ですが、特にミニマルなギターフレーズとコンゴのリズムが絡み合う「Quisiera Con Mil Amores」の高度なハイブリッド感と抑制美にかなり引き込まれます。

Xiomara Fortuna, the Dominican national treasure known as the "Queen of Fusion," released her debut album in 1987. Produced as part of a Dominican-Swiss cultural project focused on rural development and women’s rights, this particular vinyl edition was distributed almost as a private press among several existing versions.
Fortuna and her team traversed the country’s rural heartlands, documenting Afro-Dominican folklore—traditions then fading in the shadow of modernization—directly from local practitioners and women. Drawing on years of fieldwork, she collaborated with visionary musicians like Tony Vicioso and Guy Frómeta to bring this vision to life. From "Gaga," rooted in the life of sugarcane plantation workers, and "Palos," performed in rituals for patron saints, to "Congo," characterized by complex polyrhythms for the departed—the album captures it all. The primal, earthy energy of these traditional rhythms intersects with jazz/fusion sophistication and Fortuna’s commanding vocals, resulting in a complex, thrilling, and organic ensemble.
Standing in stark contrast to the flashy, mainstream merengue of the era, this masterpiece is a cornerstone of Dominican alternative music, born from a sincere gaze at one’s roots and social reality. While the entire album is stellar, the sophisticated hybridity and restrained beauty of "Quisiera Con Mil Amores," where minimalist guitar phrases intertwine with Congo rhythms, is truly captivating.

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2026年2月25日水曜日

Hector Zazou - The Long Voyage


フランスのアンビエント智者エクトル・ザズーが、北極圏周辺の厳しい自然環境とその土地に息づく伝統歌にフォーカスして制作した94年作「Songs From The Cold Seas」(原題:Chansons des mers froides)より。アルバムでは3曲目に収録され、後にリミックスカットされた曲。作曲はザズー自身。歌詞はアイルランドの詩人オスカー・ワイルドの詩「Silhouettes」に基づき、ヴォーカルはスザンヌ・ヴェガとジョン・ケイルが担当。CD付属のブックレットには、1878年に史上初めて北東航路を制覇したフィンランド出身の探検家ノルデンショルドの航海記録からの引用が添えられています。文化人類学的な探究、遠い歴史に静かに耳を澄ます姿勢、異文化を結びつける芸術的好奇心に至るまで、きわめてクワイエット・ヒップな作品だと思います。

「北西航路を初めて切り拓いた船の一隻は、「ヴェガ号」と呼ばれていました。氷の極地を征服したその船と、スザンヌ・ヴェガの温かな歌声が同じ名前であることは、単なる偶然とは思えないほど密接に結びついています。今回、「ラ・ヴェガ(ヴェガ号/スザンヌ)」に同行するのは、ウェールズ人のジョン・ケイル(彼の先祖もまた冷たい海を渡った人々です)と、ダブリンの不逞の輩、オスカー・ワイルドです。それは確かに長い航海であり、脳波をたゆたう物憂げなクルーズでもあります。浮き沈みを繰り返しながら描かれるこの「大いなる北(The Great North)」の様式化された肖像は、見かけよりもずっと現実味を帯びているのです。」

「ヴェガ号の乗組員と、係留地の隣の村に住むチュクチの人々との関係は、すぐに非常に友好的なものとなりました。そこには多くの子供たちがいて、彼らは幸せそうで健康、そして親たちに大切にされていました。女性は男性と対等に扱われていました。チュクチの人々は、いささか混乱した清潔感を持っています。さらに冬の間、水を手に入れるのが非常に困難な時期(彼らはオイルランプの上で氷を溶かして水を作ります)、女性たちはためらうことなく尿を使用します。食事の後、この独特な「オー・ド・トワレ(化粧水/トイレの水)」を満たしたボウルで彼女たちが手を洗うのを目にすることも珍しくありません。この人々には、生まれ持った誠実さがあります。冬の間ずっと、ヴェガ号の乗組員から窃盗に関する苦情はただの一件も出ませんでした。」 - アドルフ・エリク・ノルデンショルド男爵
 

2026年2月23日月曜日

No Data - Música Naïve


Label: Som Livre
Catalog#: SL 854-2
Format: CD, DVD, Album
Country: Portugal
Released: 2005

1 Vivo Deste Quase Nada 4:27
2 Lago Da Paz 3:18
3 Heaven On Earth (It's So Difficult) 6:25
4 Ma Voix 4:56
5 Angustia Del Sagrado 4:38
6 Espírito Santo Dos Açores 5:02
7 Cult Of Tea 3:25
8 Verão Indiano 4:17
9 White Noise (Batucada) 4:23
10 África Em Lisboa 3:14
11 Hino Ao Vento 4:57
12 Viagem A Plutão 5:09
13 Bebé Nirvana 3:51
14 Sleeping Cats 9:11

ポルトガル初のニューウェイヴ・バンドCorpo Diplomáticoの創設メンバーであり、国民的グループMadredeusでの活動でも知られるリスボン出身の音楽家Carlos Maria Trindade(カルロス・マリア・トリンダーデ)。彼が同郷のDJ/プロデューサーLuís Beethoven(ルイ・ベートーヴェン)とともに2003年に始動させたプロジェクトNo Dataのデビューアルバム。地中海周辺からアフリカ、アジアなど諸国への旅を通じて吸収した各地のフォークロアや伝統楽器の響きを、現代的なプロダクションと融合させたエレクトロニック志向のエスノサウンド。当時のチルアウト/ラウンジの潮流を反映した女性ボーカル曲も収録される一方、ペンギンカフェを思わせる「Espírito Santo Dos Açores」や既発曲のリテイク「Bebé Nirvana」など、トリンダーデ主導の牧歌的な楽曲にしみじみとした味わいがあります。付属のDVDには4曲のビデオクリップをはじめ、インタビューやポエトリーを収録。

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2026年2月21日土曜日

NTS Guide to: Czech Tearoom Ambient


特定の土地や時代を切り口に音楽を紹介する、ロンドンのラジオ局NTS Radioのシリーズ「NTS Guide to」より。2025年6月16日に放送されたチェコ・アンビエント特集。共産主義体制下およびその崩壊直後のチェコスロバキア/チェコにおいて、密かに育まれていたアンダーグラウンドな音響派の先駆者たちを辿るガイドとなっています。タイトルに冠された「ティールーム」(チェコ語でČajovna/チャヨヴナ)とは、東洋の茶文化がチェコ独自の形で発展した文化空間のこと。革命後に街中で急速に花開き、かつて地下に潜伏していた芸術家や音楽家たちが集うサロンとなったことから、当時のオルタナティヴな空気感を象徴する言葉として用いられています。選曲・ミックスを担当したのは、プラハ・カレル大学で教鞭を執り、自国の埋もれた音楽史を探究しているジャーナリストMiloš Hroch(ミロシュ・フロフ)。

Tearooms in post-revolution Czechoslovakia symbolised places through which new spiritualities were flowing, and the influx of largely uncharted ways of life closely intertwined with new age, ambient, folk and minimalism. With their minds altered thanks to smuggled records by Fripp & Eno or Steve Reich, this loose network of musicians had begun composing meditative music, using loops and handmade instruments, with a different sensibility. Compared to the boisterous Zappa-adjacent and booze-soaked underground movement, which was led by Plastic People of the Universe and provoked the state authorities, this music was meant instead for tea rooms and spiritual sites like churches or monasteries, as if occupying some place where time flows anticlockwise. Music journalist Pavel Klusák dubbed this 1990s scene a “tearoom alternative”. Experimental folk singer Oldřich Janota, Jaroslav Kořán’s various ensembles like Modrá or Orloj Snivců (The Horologe of Dreamers) or Irena and Vojtěch Havlovi were drawn by the light and composed music that didn’t match the fast pace of newly imported capitalism.