2026年5月27日水曜日

Mix for Mitamine Lab


2016年5月にメキシコシティ拠点のプラットフォームMitamine Labに提供したミックス。公開から10年が経ち、改めてトラックリストとともにアーカイブとして残しておきたいと思いました。当時はアコースティックなミニマリズムやフォークロア、創作楽器、民族楽器、サウンドアートの派生音源などに、ポストアンビエントの視点から惹かれていた時期で、そうした関心が素直に反映された内容になっているように感じます。選曲に対する気負いもなく、自由に楽しみながら録音しました。当時声をかけてくださったこと、そして10年間たった今も公開されていること(相当な月日だと思います)に改めて深く感謝したいです。

This is a mix I contributed to Mitamine Lab, a Mexico City-based platform, in May 2016. A decade has passed since its release, and I wanted to preserve it as an archive along with the track list. At the time, I was drawn to acoustic minimalism, folklore, homemade instruments, ethnic instruments, and sounds derived from sound art—all viewed through a post-ambient lens—and I feel this selection honestly reflects those interests. I recorded it freely and with enjoyment, without any pressure regarding the track selection. I’d like to express my deep gratitude once again for the opportunity back then, and for the fact that it’s still available today, ten years later (which feels like quite a long time).

tracklist:
Anna Meredith - Blackfriars (ft. Oliver Coates)
Mary Lattimore - The Quiet At Night
Craig Kupka - Acoustic Piano, Bess, Bass And Drums
Entourage Music & Theatre Ensemble - Euphoric Bells
Valentin Clastrier - Rituel Ii
Warren Burt & Ernie Althoff - Improvisation In An Ancient Greek Mode
Dan Joseph - Conclusion
Jam Money - Noble Spruce
Matteo Nasini - Montescrew 1998
James Stephen Finn - This Antique Metronome Keeps Me Awake When I Should Be Dreaming
Loto Retina - Oisiveté En Milieu Aquatique
Nick Storring - Unexpecting
Killing Time - Psychotropicnic

MITAMINE LAB
Culture Curators based in Mexico City

2026年5月25日月曜日

Rocco Notte & Richard Bush - Elysian Fields


Label: Mu-Psych
Catalog#: MP-5002C
Format: Cassette, Album
Country: US
Released: 1985

A1 Three Pieces In A Shape Of A Pair Of Pants 5:30
A2 Echostasis 10:52
A3 Wake Up In Baby's Room 6:50
B1 Inevitable In 8b 7:57
B2 Eleanor 8:23
B3 Rite On The Beach 6:03

フィラデルフィアを拠点とする5人組パワーポップ・バンドThe A’sの中心メンバーRocco Notte(ロッコ・ノッテ)とRichard Bush(リチャード・ブッシュ)の2人が、バイオフィードバックや心理療法を専門とするカセットレーベルMu-Psychからデュオ名義で発表したアルバム。タイトルはギリシャ神話における「死後の楽園」の意。短命に終わった同レーベルのカタログにおいて、その立ち上げと同時にリリースされた第一弾タイトルと見られます。
幼少期よりジャズとクラシックを学んできた鍵盤奏者のノッテは、シンセサイザーを用いて繊細なメロディやハーモニーを構築。一方、普段バンドのフロントマンを務めるブッシュは、ここでは歌う代わりに自身の声を霧のような音響素材へと加工し、空間エフェクトなどのサウンド・プロセッシングに専念しています。リラクゼーションや瞑想という実用性を背景に持ちながらも、ニューエイジ特有の神秘主義的な演出はなく、徹底して慎ましく抑制された構成は同時期の日本の環境音楽作品にも近しい作風。夢の中で柔らかな芝生の上を裸足で歩くような、あるいは小さな水たまりの奥に広がる透明な別世界を覗き込むような感覚。優しい空想時間へと静かに誘うイマジナリーなエーテル・アンビエント。

「MU-PSYCHは、ニューエイジ・ミュージックという広範な枠組みの中で、優れた音楽的才能の発掘と育成に注力するレコードレーベルです。私たちはニューエイジ・ミュージックを、音楽家自身がリラックスするため、そして自分自身や他の人々にインスピレーションを与えるために創造する音楽と定義しています。MU-PSYCHは、バイオフィードバックや心理的セルフヘルプ技術の世界的リーダーであるFUTUREHEALTH社の音楽事業部門です。同社のニューエイジ・ミュージックへの関心は、トワイライト・ラーニング(半覚醒学習)や催眠誘導オーディオカセットの開発から自然な流れで発展したものです。これらのカセットは、深いリラックスや活力をもたらす音楽と、コロラド大学ヘルスサイエンスセンターのバイオフィードバック先駆者、トーマス・バジンスキー博士によるガイダンスを組み合わせたものです。MU-PSYCHの心理技術専門家は、レコーディングスタジオでアーティストと連携し、音楽がより強力な心理的効果を生むようサポートを行っています。

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[related]
The Philadelphia Inquirer - Rocco Notte, 72, keyboard player and songwriter for Philly rock band the A’s, has died

2026年5月22日金曜日

Because - Mad Scared Dumb And Gorgeous


Label: Haven Records
Catalog#: HAVENCD 1
Format: CD, Album
Country: UK
Released: 1992

1 Orientation 5:05
2 Her Rhythm And Her Blues 3:47
3 A Glass Room 4:02
4 Song Of All Things 5:48
5 Archaeology 4:30
6 Love Is Coming 5:15
7 Stolen 4:19
8 Feast Of Stephen 2:38
9 You Don't Forget 3:44
10 Mad Scared Dumb And Gorgeous 4:52

イギリスのニューウェイヴ・バンドFurnitureのフロントマンであり、後に音楽ジャーナリストへと転身するJim Irvin(ジム・アーヴィン)。バンドが解散へ向かっていた90年代初頭、長年の友人であるジャズ畑出身の鍵盤奏者Chris Ingham(クリス・インガム)と共に、新たに始動したソングライティング・プロジェクトBecause。本作は、The BibleのBoo Hewerdine(ブー・ヒュワディーン)が立ち上げたレーベルの第1弾タイトルとしてリリースされた唯一のアルバム。
当時最新鋭だったシンセサイザーKORG M1をはじめ、最小限のレンタル機材を自宅に持ち込んだプライベートな環境でレコーディング。彼らが傾倒していたBrian Wilsonの内省的な世界観や、The Blue Nileの静謐な都市感覚を手がかりに、インガムが緻密なシンセサイザーでサウンドの骨格を構築し、アーヴィンが独自の語り口で翳りを帯びたヴォーカルを重ねるスタイルで制作されています。壊れゆく関係性や孤独感を描いたPrefab Sprout風の男女デュエット「A Glass Room」。アトモスフェリックな音響に人生の省察を投影した「Song Of All Things」。Brian Wilsonの影を朴訥としたアレンジで表現した「You Don't Forget」ほか。いずれの楽曲も音数を削ぎ落とし、余白を活かしたクワイエットなプロダクジョン。同じ志を持つヒュワディーンが共感したのも納得できる、UKスムースポップ〜ソフィスティポップの静かな地平を指し示すような秀作です。

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2026年5月18日月曜日

Stefano Delù - Chitarre Solo I + II


Label: -
Catalog#: -
Format: CDr, Album
Country: Italy
Released: 2011

1-1 Aelfraed 3:25
1-2 Lao-Tzu & Harry Haller 7:10
1-3 Ealafrith 7:55
1-4 Rosso Profondo 4:20
1-5 Viaggio Di Un Bhikku Con Un Bagaglio Di Pane E Ideali 7:20
1-6 Bijou 1:25
1-7 Guarda Dritto E Vai Avanti! 2:35
1-8 Buonanotte 0:40
2-1 Serenatassira I 2:53
2-2 Serenatassira II 5:09
2-3 Autoharp I 6:22
2-4 Serenatassira III 4:34
2-5 Autoharp II 3:11
2-6 Come sarà Milano? 6:53
2-7 Mr. Jeff Gurd 1:35
2-8 Ergon & Parergon 5:58
2-9 Aelfraed II 8:41
2-10 Al Farabi 6:28
2-11 25 May at Brienz 4:33
2-12 Prestidigitami 4:32
2-13 Glaßharpe 6:51
2-14 Aelfraed I 4:25

ドイツの先達Hans Reichelが提示したギター音響拡張のアプローチに感化を受け、自作カスタムギターによる即興演奏の可能性を追求したミラノ出身の音楽家Stefano Delù(ステファノ・デルゥ)。前衛ロックバンドStormy SixのメンバーであるFranco Fabbriらが設立した非商業音楽のためのレーベルL'Orchestraから、1983年に発表された唯一のソロアルバム「Chitarre Solo」を、作者自らの手で復刻した私家再発盤。2枚組CD-R仕様となっており、ディスク1にはオリジナルLPの全8曲を収録。ディスク2には同時期に録音された未発表音源や別テイクがコンパイルされています。
デルゥが考案したカスタムギターは、ブリッジサドルとネックの間に木製バーを梯子状に増設した特殊な構造。右手で弦をバーに押し当てて弦長を区切ることで、高域の倍音や不均一なうねりが発生し、金属造形やガラス細工の光の煌めきのような繊細で澄んだ音色が引き出されます。本作ではこの変則的な楽器と通常のギターを駆使し、既存音楽の枠組みにとらわれない自由な爪弾きに、穏やかな余韻と空白を交えて瑞々しい音像を立ち上げています。
アヴァンギャルドの文脈にありながら決して難解なものではなく、全編通じて牧歌的で親しみやすいメロディセンスと、随所で滲む風通しの良い実験精神や遊び心が印象的です。静けさと点描的なフレーズが際立つディスク2のなかでも、エフェクトを効果的に用いた「Come sarà Milano?」や「25 May at Brienz」といった楽曲は、Durutti Columnの初期作にも通じるナイーヴな創作衝動と地中海のメランコリーが交差する、本作ならではのハイライトだと思います。
現在のデルゥは活動の場を実用音楽へと移し、ドイツのヒーリング音楽専門レーベルSantec Musicの主要コンポーザーの一人として活動。アコースティック/クラシック・ギターを用いた内省的な楽曲の書き下ろし、クラシック古典曲の演奏など、自然の情景や静寂を表現する環境音楽・インストゥルメンタル作品を提供し続けています。

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2026年5月15日金曜日

Flipside - Inside


Label: Horizon
Catalog#: hrzn-002
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2003

1 Relief 6:30
2 Unwind 6:47
3 Swerve 4:00
4 Caló Des Moro 5:13
5 Outside 5:13
6 Suite 4:43
7 Goof 5:45
8 Cph/Malmoe 5:07
9 Re:Version 1:20
10 Andante (For Frederik) 5:20

ブログを休止していた間、Real Ibizaをはじめとするイビサ系コンピレーションの中古CDを買い集めて、ひたすら聴き入っていた時期がありました。CDの販売枚数がピークに達した2000年前後。チルアウトは大衆を巻き込んだ大きなムーブメントとなり、夕陽やビーチのイメージを掲げた企画盤が次々とリリースされていました。今日まで形を変えながら連綿と続くジャンルである一方で、当時の華やかなブームの中にあった作品の多くは、今ではほとんど話題に上ることもなく、ひっそりと静かなまま取り残されているような印象も受けます。それは、以前ウィンダムヒル作品の収集に没頭していた頃に感じた、往年の自然派ニューエイジの凋落ともどこか重なるものがあります。

2000年代初頭、このヨーロッパの潮流に日本から呼応し、BlissやCantomaなどの良質な作品を国内に紹介していたのがHorizonの「blueline」シリーズ。そのリリース作品にふれて特に印象深かったのが、コンピレーションに収録されていたFluffと、このFlipsideという二つのユニットでした。

Fluffは、北欧コペンハーゲンの名門Music for Dreamsを象徴するBlissの主要メンバーであるMarc-George Andersen(マーク・ジョージ・アンデルセン)とJan Winther(ヤン・ヴィンター)によるユニット。もう一つのFlipsideは、同じくBlissの核を担うKlaus Bau Jensen(クラウス・バウ・イェンセン)が、スウェーデン出身のギタリストSebastian Lilja(セバスチャン・リリャ)と組んだユニット。いずれもBlissの派生プロジェクトでありながら、ユニット名だけがさりげなく提示されているため、やや匿名的にも感じられます。しかしその背景には、イェンセンが共同設立したLoadstar RecordsやRealtime Studioを中心とするローカルコミュニティが存在し、身近なアーティスト同士が互いにリミックスを提供し、ゲストとして参加しあう、地に足の着いたクリエイティヴな関係が築かれていたようです。

本作「Inside」は、そのLoadstar Recordsから発表されたFlipsideの1stアルバム。哀愁を帯びたアコースティックギターのフレージング。淡く重なるメロウなシンセパッド。チェロやコルネット、ピアノといったゲスト奏者を迎え、当時の潮流のなかでもひときわ静謐なタッチで、清涼感と有機的な温かみが共存する独自のサウンドを構築しています。民族音楽やクラシックの要素を取り入れて壮大な世界観を提示したBlissに対し、Flipsideはあくまでインストゥルメンタルに徹し、映像的でイマジナリーな余白を残した表現にフォーカスしています。その志向は、かつてウィンダムヒルの奏者たちが身近な音楽仲間たちと、質直なアンサンブルを通してレーベルカラーを育んでいった歴史とも、やはりどこか共振しているように思えます。

彼らが残したオリジナルアルバムは、本作を含め全3作。作風に大きな変化はなく、リリースを重ねるごとにやや停滞感を覚える部分もありますが、それでも本作の静謐なタッチには、BGMとして消費されることを拒むような、穏やかながら研ぎ澄まされた職人的な美意識が確かに感じ取れます。レイヴ文化の熱狂に対するカウンターとして生まれ、ダブやジャズを吸収しながら深化を遂げたダウンテンポ/チルアウト。やがてリゾートカフェやラグジュアリーホテルのような洗練されたイメージが付加され、消費の対象へと加速していきました。自分にとっては好きな部分と、そうではない部分の両方があります。Flipsideの音楽は、その境界線の上で理性を保ち、確かな場所へ踏みとどまろうとする良心のような存在にも感じられます。

コロナ禍を境に社会の雰囲気や自分自身の生活も大きく変化し、また子どもたちの成長という個人的な節目も重なり、その移り変わりのなかで聴いていた作品には、特別な感情が湧きます。ブルーリスニングのクラシックとして、聴き続けたい一枚です。

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2026年5月11日月曜日

Boozoo Bajou - Aurelia


Label: PILOTTON
Catalog#: No 037
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Germany
Released: 2025

A1 Deckards Harp 5:11
A2 Una Nuova Distessa 6:21
A3 The Novelist 5:06
B1 Stillight 5:38
B2 Nemune 4:55
B3 Mila 5:34

ドイツ・ニュルンベルクを拠点とするベテランデュオBoozoo Bajou。キャリア25周年の節目に自主レーベルを立ち上げ、自らの原点を見つめ直した前作「Finistère」を経て、よりディープで内省的なアンビエント・サウンドへと踏み込んだ6thアルバム。具象的な風景描写から、存在の状態そのものへの関心の変化、そして本質へ向かう止観の境地。彼ら特有の渋みのある枯淡の世界観が、余剰を削ぎ落とした静謐で純度の高い表現へと昇華されています。Another Fine DayとRobin Guthrieが出会ったかのような穏やかなハイライト「Una Nuova Distessa」が殊に素晴らしく、聴くたびにじんわりと馴染んでくる一作です。

Deep atmospheric soundscapes have always been a part of Boozoo Bajou during their 27 years as producers. Each of their previous 5 albums had those almost beatless melancholic beauties as part of the musical presentation. Since this is a key element Peter Heider & Florian Seyberth aka Boozoo Bajou decided to dedicate a new six track album called „Aurelia“ to this genre of music which might be called Ambient but is rather a free flow through their musical minds. Based on a warm analog mix there are various instruments giving guidance to this journey even enriching the overall quality impression of the music which is provided by this new output from Boozoo Bajou.

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2026年5月7日木曜日

C.W. Vrtacek - Silent Heaven


Label: Cuneiform Records
Catalog#: Rune 79
Format: CD, Album, Compilation
Country: US
Released: 1996

1 Poison 1:20
2 War 1:05
3 Tumbling 3:30
4 Inside 1:11
5 Revenge 2:13
6 Song For Marcel 1:59
7 Rain 2:07
8 Emily, Are You Happy ? 3:21
9 Breathing 1:01
10 Silence 0:24
11 When 1:42
12 Thinking 3:16
13 Fly / Wave 6:01
14 Picture In An Empty Frame 5:05
15 Minus My Friend 1:33
16 History Of The Heart, Mystery Of The Mind 1:35
17 Part Of Me Here, Part Of Me With You, Always 1:20
18 Stone Steps 1:17
19 Preparing The Bridge (For Heaven) 5:09
20 Saying Goodbye To The Beauty And Complexity Of Life On Earth 5:42
21 When Heaven Comes To Town 26:16

1970年代もいよいよ終わりを迎えようとしていた頃、ヴルタチェク(後にチャールズ・チャック・オメアラの名でも知られる)は、当時市販されたばかりの世界初となる4トラック・カセットデッキTEAC 144を購入し、1980年から1988年にかけて4枚のソロアルバムを録音した。「ポータスタジオ」の名称でも知られるこの革新的で比較的安価な機材は、ミュージシャンが自宅において低コストで音楽を録音することを可能にし、宅録ブームの火付け役となった(当時の雑誌「OPのバックナンバーを参照してほしい)。これは彼がフォーエバー・アインシュタインを結成する数年前のことである。
本作「Silent Heaven」は、彼の3作目「Learning to Be Silent」(1986年)と4作目「When Heaven Comes to Town」(1989年)を1枚にまとめた特別盤だ。フォーエバー・アインシュタインとは全く異なり、ここでの音楽は静かで落ち着きがあり、内省的で、時に遊び心を感じさせつつも、しばしばどこか暗い影を帯びている。オメアラは、2018年に心臓発作のため65歳でこの世を去った。

「静かな部屋で瞑想に耽ることができれば、それに越したことはない。だが、私たちがそんな場所に身を置けることは滅多にないのだ。だから、いつも同じ疑問が浮かぶ。この混沌のただなかで、いかにして静寂を見出せるだろうか?」 - C.W. ヴルタチェク

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2026年5月4日月曜日

Tim Weston / Shelby Flint - The Lady Weeps


St.GIGAアーカイヴ「Coral reef A」より。LAジャズ/フュージョンの名門グループを渡り歩いたギタリスト/作曲家Tim Weston(ティム・ウェストン)と、60年代初頭のフォークシーンから活動するシンガーソングライターShelby Flint(シェルビー・フリント)。公私ともに長年のパートナーである二人が1993年に発表したアルバム「Providence」からの選曲。Gary Willisのフレットレス・ベース、Peter Erskineのドラム、John Beasleyのピアノという、当時のLAシーンを象徴する精鋭たちが支えるクワイエットで洗練されたジャズサウンドで、穏やかな緊張感の中で各奏者の細やかなニュアンスをじっくり味わえる構成になっています。50代を迎えたフリントの深みのある歌声と、40代前半のウェストン。二人の信頼関係から生まれる親密な熱量が伝わってくる実に佳い一枚です。音の潮流はその後、波のSEとともにLiz Story「Leap of Faith」、David Foster「Water Fountain」へと連なっていきます。

2026年4月30日木曜日

Fila Brazillia - Mess


Label: Pork Recordings
Catalog#: pork 031
Format: CD, Album
Country: UK
Released: 1996

1 The Last Of The Red Hot Brethren 2:15
2 Big Saddle 4:58
3 Space Hearse 6:07
4 Half Man Half Granary Thorax 1:39
5 But Momma 4:55
6 Laying Down The Law On The Lard 5:03
7 Wavy Gravy 4:37
8 Soft Music Under Stars 10:10
9 Hairy Insides 6:50
10 Dp's R Us 2:32
11 On Yer Haunches 4:51
12 Howard Dan Ryan 5:34
13 Blood 5:33
14 The Return Of The Red Hot Brethren 2:13

掴みどころがなく、なんとなく入り込めずにいたFila Brazillia。それがふとしたきっかけで腑に落ちて、それからは初期から中期にかけての作品を繰り返し聴くようになりました。なかでも特に気に入ったのが、フロア志向から生バンド的なアプローチへの移行期にあたる「Mess」と「Black Market Gardening」。
彼らのサウンドは、大まかにはダウンテンポやチルアウトに分類されるもの。しかし、実態はとても複雑でプログレッシヴな折衷主義で、一つの楽曲から特徴を捉えようとすれば、次の曲ではぐらかされることもあります。カウチに座ってテレビをザッピングし、積み上げられた雑誌を斜め読みし、棚から古いレコードを気まぐれに選んだりする。そんな散漫な好奇心が、いつの間にか自分が宇宙飛行士やロックスターであるかのような妄想遊泳へと繋がっていく。男臭くも繊細で、夢見がちな感性を備えた英国趣味人たちが集うメゾンやコーポ。あるいは秘密基地。彼らの拠点としていたインディペンデント・レーベルPork Recordingsは、そういった場所だったのだろうと思います。
1996年発表の3rdアルバム「Mess」は、自然体で力の抜けた彼らの美学が高純度で具現化された一枚。初作に見られた電子的なダンスグルーヴはさらに抑えられ、よりオーガニックで緻密なリスニング志向のサウンドへと移行しています。テクノ/ハウスやヒップホップのフォーマットを前提としながらも、自分たちのバンド経験に裏打ちされたサイケデリック・ジャム的な反復、ズレやヨレといった呼吸感に重きを置いたルーズでレイドバックしたファンクネス。さまざまな音楽からの引用や奔放なアイデアを感性の赴くままに詰め込んだようでいて、アルバム全体としてはミックステープを聴いているような統一感があり、どの楽曲も人の手が作り上げた生々しい感触が充溢しています。
過度に主調せず、手も抜かず。飄々として粋を尊ぶ、彼らなりの音楽愛。現代のインターネット・ブラウジングやプレイリスト文化を先取りするような雑食的な編集感覚と、決して意味を捨てない絶妙なバランス。それが、本作を色褪せない名作たらしめている所以なのかもしれません。掴みどころがないゆえに、聴くたびに意外ところで仕掛けや遊び心に気付かされることもあり興味深いです。

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2026年4月28日火曜日

Marco Lucchi - Il Gioco delle Perle di Vetro


Label: Muscando
Catalog#: MUS 032
Format: CD, Album
Country: Italy
Released: 1999

1 Intro 5:21
2 Invito 1:18
3 Meditazione # 1 5:18
4 Musa 2:20
5 Danza # 1 3:33
6 Danza # 2 4:49
7 Invocazione 5:43
8 Canto 0:52
9 Lied 2:32
10 Meditazione # 2 9:32
11 Outro 3:51

80年代イタリアン・エクスペリメンタルの地下水脈から現れた、モデナ出身の作曲家/マルチ奏者Marco Lucchi(マルコ・ルッキ)。初期の電子音楽をはじめ、イーノの生成音楽や武満徹作品の再解釈、Arvo PärtやSimon Jeffesへのオマージュ、東洋美学への傾倒を投影したピアノ・アンビエントに至るまで。自主レーベルStella Neraを拠点に、現在まで膨大な作品群を発表し続けています。本作は、ヘッセの遺作であり精神的到達点「ガラス玉演戯」を主題に、1997年に開催された水彩画展「Mostra degli acquerelli di Hermann Hesse」での朗読とダンス・パフォーマンスの付随音楽として構想されたコンポジションを収録。Lino Capra VaccinaやFrancesco Messinaらとも共鳴する、地中海特有の幽かなエキゾチシズムと迷宮めいたミニマリズム。「音楽と数学が統合された架空の遊戯」というヘッセの知的ヴィジョンを、中世的な静けさと夢想的アンサンブルで音像化した、彼のキャリアにおける名演のひとつです。

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