2026年9月18日金曜日

Felipe Dulzaides Con Quinteto y Orquesta - Tenderly


St.GIGAアーカイヴ「Half moon A」より。キューバ出身のピアニスト/作曲家フェリペ・ドルサイデス率いる楽団による1960年録音のアルバム「As Time Goes By」収録曲。原曲はウォルター・グロス作曲、ジャック・ローレンス作詞により1946年に出版されたポピュラーソングで、その後ジャズ・スタンダードとしてさまざまな演奏家に取り上げられています。ドルサイデスによる「Tenderly」は、ラテンとエキゾチカの中間に位置するような、気怠い南国風味が心地よい落ち着いたアレンジ。ヴィブラフォンやストリングス、金管を含むオーケストラ編成で、ホテルのラウンジが似合いそうな優雅で洗練された仕上がりです。音の潮流はその後、波のSEとともにBert Kaempfert「Sweet Dreams」へ。Half moon AとBは、おおよそ60年代のラテン音楽やイージーリスニングからの選曲で、90年代中頃の夏に放送された「水の時間」のプログラムだったのではないかと思います。以下は、プログラム冒頭から聞き起こした寮美千子によるヴォイスです。

太陽の足跡 風の音楽 夢の風景が刻まれる場所
耳をあてると 砂の思い出が聞こえてきませんか
たった一人 季節を待つ時間
遠い日の記憶を 砂が教えてくれます
こちらはセントギガです

2026年9月16日水曜日

Melting Steine - Universal Crush


Label: Phantom Island
Catalog#: PHI-25
Format: Digital, Album
Country: Switzerland
Released: 2024

1 Dodge 3:13
2 Front Porch Days 3:03
3 Glide 3:13
4 Cassis 3:44
5 Endless 2:50
6 Sun Puls 4:12
7 Dream Magazine 1:20
8 Universal Crush 4:05
9 Wings 3:54
10 Inselmoment 3:50

Moon MullinsやKolumbo、あるいはSven Wunderのような、かつてのエキゾチカ/ムード音楽/映画音楽が持っていたヴィンテージな質感や異郷幻想を、現代のチル感覚で再解釈するポスト・イージーリスニング的潮流。それがはたしていつ頃から始まったのか、現在どのようなタームで呼ばれているのか。いまひとつ掴めずとも、こうした感触を持つ作品と出会うたび心惹かれるものがあります。本作は、スイスを拠点に活動する3人のマルチ奏者によるプロジェクトMelting Steine(メルティング・シュタイネ)のデビューアルバム。レーベルが「地中海にある夢の島のサウンドトラック」と評する通り、アナログシンセや古い録音機材を用いた、どこか架空の南国リゾートを想起させる音楽。全編素晴らしい仕上がりですが、フルートとコンガが効いたボッサ風のタイトル曲「Universal Crush」、フローティングなエキゾ感が心地よいクロージングトラック「Inselmoment」(島で過ごすひととき、の意)が殊に良いです。

Melting Steine are multi-instrumentalists Martin Schenker, Luzius Schuler and Dshamilja Kalt. Their nostalgic, warm instrumental music combines elements of jazz, bossa and psychedelic synthesizer music and sounds like the soundtrack to your dream island in the Mediterranean Sea. Their incomparable sound is created in a garage in the middle of Switzerland, where they record their compositions on an old Tascam tape machine with guitar, drum machines, flute and analog synthesizer. Lots of chorus, tape delay, vibrato, spring reverb and the warmth of analog recording technology give the music a psychedelic touch and you can hear the musical influences of the 60s and 70s. This is carefully crafted mood music that is sophisticated but has catchy melodies and unique sounds that have earworm potential.

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2026年9月14日月曜日

World Standard - II


Label: FOA Records
Catalog#: FRCA-1003
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 1995

1 フィルバニア通信 3:47
2 森の音楽 3:00
3 風のモナド 3:58
4 エル・スール(南) 3:33
5 見当のつかない大きな青い星 4:32
6 私の20世紀 4:11
7 Celeste = 空色 5:03
8 新・ヴァン・ダイク・パークス 2:04
9 太陽マヂック 4:08
10 エーテルの火 3:29
11 風のシンフォニー 4:32
12 第七天国 4:45

エブリシング・プレイの旅を経て、原点に立ち返った鈴木惣一朗率いるワールド・スタンダードの第二章。当時自宅録音が可能になったことで、納得がいくまで音作りに没頭できたというベッドルーム・レコーディング作品。
「シャンバラ通信」に准えた(?)タイニーワールドへの序曲「フィルバニア通信」から、音楽列車の頃を思わせる愛らしく牧歌的な「風のモナド」、ベスト盤にも収められたワルスタ流ウォリー・バダルー再解釈「エル・スール(南)」、お馴染みのフレーズが顔を覗かせる「太陽マヂック」、世界で最も静かなエキゾチカ「第七天国」まで。草花の芳香に包まれ、動物や精霊たちがひそかに交感する幻想世界へ迷い込んだかのような、穏やかでイマジナリーな12篇の物語。国境もジャンルも曖昧なまま、ぷかんと浮いているような不思議な佇まいは、響きそのもの以上にアンビエントで、世界に対するフラットな意識を感じさせます。発売元は細野晴臣らとともにユーキャン内に設立したFOA Records。2021年に他作品と合わせてリマスター配信。

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2026年9月10日木曜日

Superstar - Table for Two


Label: Bedroom Suck Records
Catalog#: BSR060
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Australia
Released: 2015

A1 Cool Memories 6:54
A2 Folding Gold 6:22
A3 Glistening Bliss 4:15
B1 Intermission 4:05
B2 The Long Frond 6:13
B3 Slice of Paradise 4:10

2000年代後期からメルボルンを拠点に活動するデュオプロジェクトSuperstar。初期の実験的なカセット作品を経て、地元のインディレーベルBedroom Suck Recordsから発表した2作目となるアルバム。メンバーはSweet Whirl名義でも知られるEsther Edquist(ヴォーカル/鍵盤)と、Keiran Hegarty(ギター/ドラムマシン)。夏が過ぎ去った海岸線を眺めるような静かなイントロダクションから、チープな打ち込みとシンセ、ギターと歌声という簡素な編成で繰り広げられる、ひんやりと郷愁を帯びたドリームポップ。Edquistの物憂げで呟くようなヴォーカルの傍らで、HegartyがVini ReillyやMaurice Deebankを彷彿とさせる煌びやかなギターフレーズを絶えず奏でていて、そのどちらも主役になりそうでならない絶妙なバランスが印象的です。80年代のDIYバンドとも見紛うサウンドですが、当時はオブスキュアな発掘音源が立て続けにリイシューされ、現行アーティストもそれらを参照しつつ、古い機材を使った宅録作品をリリースしていた時期で、そうした再発盤と新譜の境界が曖昧だった2010年代半ばのインディ/バレアリック界隈の空気感を思い起こさせてくれます。

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2026年9月6日日曜日

Not Drowning, Waving - Another Pond


Label: Liberation Music
Catalog#: BLUE109.2
Format: CD, Album
Country: Australia
Released: 2007 (1984)

1 Making A Desert And Calling It Peace 1:24
2 Another Pond 4:12
3 Hibakusha 0:43
4 Moving Around 7:29
5 Dare Not Say A Word 3:20
6 Frogs 1:37
7 Walk Tired 5:44
8 John Wayne Visits Port Augusta 2:05
9 Perfect Design 3:50
10 Waterdrops 4:59
11 Home On My Own 4:14
12 Mr Suharto Man 3:11
13 Mr Pooh (Do Be A Don't Be) 3:31
14 Oliver Le Strange 1:30
15 Once Like This 2:23
16 The Cheshire Cat 3:27
17 Hunting For Nuggets 5:10
18 Untouched 3:13
19 Perfect Design (1990) 3:31
20 Another Pond (1990) 4:22
21 The Wooden Box 3:17
22 Pilon And The Tum Tum Tree 4:06
23 Happy As Can Be 1:53

David Bridie(ヴォーカル/鍵盤)とJohn Phillips(ギター)により1983年に結成された、メルボルンのロックバンドNot Drowning, Waving(ノット・ドラウニング・ウェイビング)。「手を振っていたんじゃない、溺れていたんだ」というグループ名は、イギリスの詩人Stevie Smithの詩から引用されています。
Rowan McKinnon(ベース)を加えた3人+ドラムマシンという編成で録音したシングル「Moving Around」で翌84年にデビュー。別プロジェクトEasterからRussel Bradley(ドラム)、James Southall(パーカッション)、Tim Cole(エンジニア/プロデューサー)をメンバーに迎え、シングルに続いてリリースされたファーストアルバムが本作「Another Pond」。この再発盤は、84年初版と86年再版で収録内容の異なるアナログ盤の全収録曲に加え、2曲の再録とB面曲を網羅した拡張版となっています。
UKポストパンクの影響を窺わせる内向的なヴォーカル曲や、ピアノやチェロを交えた静謐な室内楽的アプローチに、シンセやエフェクト、蛙や鳥の鳴き声、水辺の音を織り交ぜたインスト曲が挿入される構成。川のせせらぎと物悲しげなピアノが重なるエンディングに至るまで、孤独や疲弊といった鬱屈とした感情が自然風景に滲んでゆくような、センシティヴな心象風景が広がります。本作を特徴づけているアンビエント的な空間処理と抑制された音数、ダウナーなトーンで統一されたプロダクションが生み出すメランコリックなサウンドは、同時代のポストパンクよりも、Bark PsychosisやRed House Paintersといった後のポストロック/サッドコア勢を想起させるところがあります。
この作品以降、グループは民族音楽の要素を取り入れ、パプアニューギニアのシンガーGeorge Telekをフィーチャーした90年作「Tabaran」では、ワールドミュージック路線を前面に押し出してヒットを記録。オルタナティヴ・シーンにおける存在感を高めていきますが、94年に解散。その後、一時的な再結成ライブを経て本格的に活動を再開し、2025年には「Tabaran」路線をさらに発展させた、実に32年ぶりとなる新作アルバム「Malira」を発表しています。

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2026年9月4日金曜日

Blast Head - Nu Island


Label: Free Hand
Catalog#: fh007
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2009

1 Day Light Comm'inn 4:59
2 Mangrove Monkey 6:44
3 Singin In The.... 4:49
4 Sky High 5:01
5 In Water Disco 5:04
6 Nu Wave 8:59
7 BBQ Jam 4:24
8 After The Squall 4:36
9 Exotic 6:19
10 Mellow Mood 3:53
11 Midnight Beach 1:51

先月JET STREAMの冒頭で流れてきたメロウで気怠げなギター・インストゥルメンタルが耳に留まり、曲名を検索するとBlast Headの「Midnight Beach」という曲でした。90年代から2000年代にかけて精力的に活動していたDJ Hikaru & Tetsuによるデュオで、これまで未聴だった2009年作「Nu Island」からの一曲。アルバムも全編通して素晴らしく、遅まきながら繰り返し聴いています。
Blast Headというと無国籍で雑多なサウンドを交錯させた、無我へと潜っていくようなディープなインナートリップを連想しますが、本作ではそうしたサイケデリックな感覚は残しながらも、より開放的でトロピカルなオーガニック・サウンドが前面に出ています。中盤のシームレスな展開は、ひと続きのミックスを聴いているかのよう。タイトルの通り、鮮やかで眩い「空想の南国」のイメージが浮かんできます。JET STREAMでは「Midnight Beach」から、Steve Hiett「Sleep Walk」、B.J. Cole「Gnossienne No. 5」へと連なる選曲も良かったです。

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2026年9月2日水曜日

Chamber Music - If Not Now?


Label: -
Catalog#: -
Format: Digital, Album
Country: Sweden
Released: 2022

1 Glasgow #1 2:18
2 Bluest of Blue(feat. Christian Kjellvander) 2:38
3 Oslo 4:06
4 Fernweh 2:33
5 Masthugget 3:07
6 If Not Now? 1:54
7 Lyckoamulett 2:56
8 But She Didn't Say It Back 3:10
9 Chamber Music 2:56
10 Tracey Thorn 2:46
11 Glasgow #7(feat. Sara Isaksson) 2:58

スウェーデンの港町ヨーテボリを拠点とするプロジェクトChamber Music。中心メンバーは、マルチ奏者でオーケストラ編曲家でもあるMartin Schaub(マルティン・シャウブ)と、シンガーソングライターのHenning Sernhede(ヘニング・セルンヘーデ)。ともにアイリッシュ/スコティッシュの伝統音楽に根ざしたフォークロックバンドWest of Edenで活動してきた2人が、ある日の何気ない会話のなかで「インストゥルメンタルの曲を録ってみようか」と思い立ち、レコーディングを開始。その最初の成果として発表されたのが本作。エレクトリックギター、ピアノ、ドラムマシン、そしてサックスや木管楽器の響きを丹念に織り交ぜた、穏やかでアトモスフェリックな室内楽的アンサンブル。インストゥルメンタルを軸としながらも、「Bluest of Blue」には北欧オルタナカントリーの重鎮Christian Kjellvander、「Glasgow #7」にはジャズ/ポップスシーンで活躍するシンガーSara Isakssonをゲストとして迎え入れ、その歌声が物語に緩やかな起伏と陰影を添えています。制作にあたり彼らが思い描いていたイメージは、「濡れたアスファルト」と「ミッドナイトブルー」。深く沈み込む青い憂鬱と、暗がりの中にほのかに浮かぶ光の気配。Blue Monologueの系譜に連なるようなクワイエット・ポップの秀作です。

「Chamber Musicは、僕たちが集まって一緒に演奏する部屋なんだ。主役は僕たちじゃなくて、その部屋。少し離れた壁には、The Blue NileやPrefab Sproutの色褪せたポスターが貼ってある。僕たちは普段、誰かのために、あるいは誰かと一緒に曲を書くことに慣れているけれど、Martinをピアノの前に座らせたり、僕の膝にギターを置いたりすると、遅かれ早かれ、送り主のいないメロディが現れる。ここは、そんなメロディたちの居場所なんだ。」 - Henning Sernhede

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2026年7月30日木曜日

Eleventeen Eston - Indian Blue


MoonbootsとJason Boardman主宰による名門バレアリックレーベルAficionado Recordingsから、2015年にリリースされたオムニバス形式の10インチ「Nado 1001」より。Andras Foxとの共作でも知られるJohn TannerのソロプロジェクトEleventeen Estonによる一曲。2010年代半ばらしいポスト・ニューエイジ感が漂う、蕩けるような湯加減の脱力チルトラック。以前はAficionadoのBandcampでも配信されていましたが、レーベル活動の幕引きと新プロジェクト移行に伴い、現在はページが閉鎖されているようです。この動画はパリのDJ/キュレーターLes Yeux Orangeのチャンネルにアップされたもの。

[related]
Test Pressing - Aficionado At 25 Years An Interview With Moonboots and Jason Boardman

2026年7月22日水曜日

ayanama - ayanama


Label: Uncharted Worlds
Catalog#: -
Format: Digital, Album
Country: UK
Released: 2022

1 Home Phone 3:20
2 Palmetto Cove 5:34
3 East River Lawn 4:01
4 Where To? 3:29
5 Offset Wave 3:21
6 Kala 5:39
7 Water Mirror 3:06
8 Blue Like Clouds 11:14

夢のなかの通勤時間。都市の境界を越え、海岸線の向こうに広がる深い緑の野原へ。振り返ると遠くに街がぽつんと佇んでいる。───アルバムに添えられた短いテキストには、そのような空想の風景が淡々と描かれています。
本作は、「Ayanama」という架空都市を舞台にしたサウンドトラックのような作品。通り過ぎることはできても、行こうとすると不思議と辿り着けない、淡く儚いユートピア。ギターを中心にエレクトロニクスや環境音で構成された、軽やかで心地よいインストゥルメンタル。前半でどこか懐かしい感覚を覚えるのは、2001年の夏(25年も経つのですね)に繰り返し聴いていたRay BarbeeのEPの記憶と重なるからかもしれません。後半へ進むにつれ、より穏やかなアンビエントへと表情を変えていきます。

Ayanama is a sprawling metropolis of glittering spires and shimmering iridescent textures. A city of a future that will never arrive, where silent transit systems glide smoothly past manicured public parks and towers that arc and twist towards the sun. They carry you as you look out the window at the shining city below, slipping beyond its borders – down to the old grey coastline and the deep green fields beyond it. Walking out, you sink into the long grass and look back at the city behind you.

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2026年7月20日月曜日

A Past Mix Inspired by the Windham Hill Sound



以前LYL Radioで担当していた「Mori To Kiroku No Ongaku」のアーカイブをYouTubeに公開しました。拙いトークや特集部分を省き、純粋なミックスのみで再構成しています。2019年1月放送の第9回前半は、Windham Hillサウンドに着想を得たセレクション。Fred SimonやMark Ishamといった同レーベルゆかりの作家のほか、直接つながりのないアーティストの楽曲も多く交えながら、Windham Hillのイメージを自分なりに解釈した選曲になっています。

A selection of new age/ambient, inspired by the Windham Hill sound, comprising the first half of the 9th episode of Mori To Kiroku No Ongaku. Originally broadcast on LYL Radio on January 4, 2019. I hope you enjoy it.


tracklist:
Erik Wøllo - Hjallepallo
Karsten Brustad - Eve
Peter Maunu - Broken Blossoms
Paul McCandless - Cloudy This Morning
Fred Simon - That Fall
Conrad Praetzel - Harlequinade
Shur-I-Kan - Awakenings
Schönherz & Scott - Gold Or Ivory Or Purple
Mark Isham - The Invitation
Nobukazu Takemura - Pastral Waltz
Michael Whalen - Close Your Eyes, The Right Approaches
Altocamet - Triste Calor (Wechsel Garland Remix)
Alieno De Bootes - Giorni Di Vento (Edit)