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2026年7月14日火曜日

Kevin McCormick & David Horridge - Light Patterns


Label: Smiling C
Catalog#: SC#07
Format: Vinyl, LP, Album
Country: US
Released: 2021 (1982)

A1 Glass Dreams 4:51
A2 Last Chances 3:12
A3 Coast Lines 4:07
A4 Dance For Two Strangers 2:23
A5 Jules & Jen 3:13
B1 Sandpatterns 3:55
B2 Reflections 3:07
B3 Quickdance 3:31
B4 Highlife 4:19
B5 Sunshowers 2:12
B6 Special Places 3:12

マンチェスターを拠点に活動していた2人のギタリスト、Kevin McCormick(ケヴィン・マコーミック)とDavid Horridge(デヴィッド・ホーリッジ)。初期Pink Floydのプロデューサーとして知られるPeter Jennerが設立したSheet Recordsから1982年に発表された唯一のアルバムを、カリフォルニアのレーベルSmiling Cが正規再発。発掘されるまで存在すら知らなかった作品ですが、近年のリイシューの中でも特に印象に残っている一枚です。
2人が出会ったのは1970年。地元の小さなクラブで演奏していたマコーミックと、いくつかのバンドを掛け持ちしていたホーリッジ。ともに空気感や間を重視した音楽を志向し、その感覚を共有できる相手を探していたことから意気投合。マコーミックの実家でジャムセッションを重ねながら、デュオとしてのサウンドを少しずつ形にしていきました。70年代後半のマンチェスターは、Joy DivisionやThe Fallをはじめとするポストパンク勢が台頭していた時代。しかし彼らはそうしたシーンとは距離を置き、John MartynやDavid Crosbyらの影を追いかけながら、シンプルな編成でジャズとフォークの境界をたゆたうような独自のインストゥルメンタルを追求しました。本作に収められた11曲は、自宅の簡素な録音環境で古いアナログ機材とカセットデッキを使って制作されたもの。ミニマルなアルペジオの反復、メランコリックな旋律に即興性を織り交ぜた静かなアンサンブル。2人の楽曲がほぼ交互に並べられ、アルバム全体がローファイでくぐもった質感に貫かれています。同郷ということもありThe Durutti Columnを引き合いに出されることも多いですが、彼らの音楽はよりメロウでリラックスした雰囲気があり、もやがかった淡い白昼夢のような佇まいと繊細な感性は、フランスのDidier BoninやドイツのG. B. Beckersにも近しく感じられます。
この再発盤で目を引いたのが、オリジナルLPのジャケットを手がけたグラフィックデザイナーBarney Bubbles(バーニー・バブルス)に関する資料。インナースリーブには、ジャケットのラフスケッチやコンセプトを書き記した2人宛ての手紙をはじめ、代表的なデザインワーク、1983年に亡くなった際のNME誌の追悼記事が掲載されています。バブルスの手紙によると、オリジナル盤はライトグレーを基調に淡いピンクとグリーンを配色することで、ハレーションを起こしてゆっくりと動いて見える視覚効果を意図していたとのこと。2色の淡いインクは、2人の音楽を光に見立てたものだったのかもしれません。再発盤ではタイポグラフィの配色がモノトーンに置き換えられ、よりモダンな印象へと再構築されています。音楽だけでなく、デザインの背景にもフォーカスを当てた素晴らしいリイシューワークだと思います。

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2026年7月9日木曜日

The George Shearing Quintet and Orchestra - Blue Chiffon


Label: Capitol Records
Catalog#: TOCJ-9708
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2011 (1959)

1 Love-Wise 3:00
2 For Heaven's Sake 2:45
3 Nocturne 2:31
4 Young And Foolish 2:43
5 Nina Never Knew 2:59
6 Kinda Cute 2:54
7 I'm Old Fashioned 2:58
8 I Love You 2:44
9 Welcome To My Dreams 2:47
10 My One And Only Love 5:46
11 I'm Gonna Laugh You Right Out Of My Life 2:33

「シフォン」とは、絹糸で織られた薄く柔らかな生地のこと。ブルーを基調とした美しい紙ジャケットに惹かれるまま、特に深く掘り下げることもなく親しんできた作品。当時のジャズについて知識もなく疎いのですが、優美なストリングスと落ち着いたタッチのピアノ、絶妙なラテン風味が心地よく、体温を少し下げてくれるようなムーディなチルアウトジャズとして聴いています。リーダーであるジョージ・シアリングは1919年イギリス生まれ、2011年2月に91歳で逝去。紙ジャケットCDはその報せを受けて追悼盤として再発されたものでした。かつてイージーリスニングやライトミュージックと呼ばれた音楽は、決してイージーでも軽々しくもなく、妥協せずしっかりと作られた贅沢なものだったのだと改めて気付かされます。

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2026年6月12日金曜日

Danielsson / Dell / Landgren - Salzau Music On The Water


Label: ACT
Catalog#: ACT 9445-2
Format: CD, Album
Country: Germany
Released: 2006

1 Part I 9:17
2 Part II 4:51
3 Part III 7:39
4 Part IV 6:54
5 Part V 2:45
6 Part VI 5:53
7 Part VII 6:18
8 Part VIII 1:48
9 Part IX 3:21
10 Part X 3:04
11 Part XI 10:50

スウェーデン出身のベーシスト/チェロ奏者Lars Danielsson(ラルス・ダニエルソン)、トロンボーン奏者Nils Landgren(ニルス・ラングレン)、ドイツ出身のヴィブラフォン奏者Christopher Dell(クリストファー・デル)。欧州ジャズシーンの最前線で活躍する3人の名手が、2005年7月にドイツ北部のザルツァウで開催されたジャズフェスティバルJazzBalticaで行った早朝ライブの記録。
舞台になったのは、緑に囲まれたザルツァウ城の池に設置されたインスタレーション「Salzau Music on the Water」。旧ソ連出身の現代美術家カバコフ夫妻とウラジミール・タラソフが手がけたこの作品は、浮島のように造られた木製のステージであり、その空間全体が水上に浮かぶ「巨大な楽譜」として設計されたもの。五線譜に見立てて張り巡らされたワイヤーには、無数の金属棒やカトラリーが音符のように吊り下げられ、風が吹くたびに揺れてランダムな音を奏でる仕掛けになっています。
夜明けとともに始まる穏やかな即興演奏。風鈴を思わせる涼しげな金属音、水鳥の羽音、小鳥のさえずり。周囲の気配や息遣いのすべてが音楽の一部となり、奏者たちもまた刻々と変化する朝の空気に呼応するようにフレーズを重ねてゆく。そうした人と自然との交感の一部始終が、場の臨場感とともに克明にドキュメントされています。湖畔や川沿いをひとり散歩した時のような、清々しい充足感が感じられる名作です。

「ウラジーミル・タラソフと私は、閉鎖空間でのインスタレーションに長年取り組んできたため、当然のことながら、開放空間におけるインスタレーションの構造についても慎重に検討し、様々なアイデアを交換してきた。ある時、ヴェネツィア・ビエンナーレの準備のために滞在していたリド島のビーチを散歩していた際、海に向かって長く伸びる桟橋を作り、そこに様々な金属製の物体(私たちの頭に浮かんだのは、錆びた缶、スプーン、釘など)を取り付け、海から吹く風でそれらがぶつかり合い、思いがけない音楽的な音を生み出すというアイデアが浮かんだ。海に向かって桟橋を歩く人の視点から見れば、すべてがロマンチックで魅力的に映るだろう。孤独な散歩、風、そして鐘の音に似た、どこか物悲しい金属の音……。1994年、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州にあるザルツァウ城でのコンサートの際、タラソフはこのアイデアを音楽祭の主催者であるライナー・ハールマンに話した。ハールマンは並々ならぬ熱意を示し、城の前にある小さな湖にそのようなインスタレーションを制作することを提案してくれた。彼が送ってくれたカラー写真から、そこがまさにこのプロジェクトに最適な場所であることは明らかだった。そして間もなく、私たちは現地を視察し、どのように実現するかを検討するためにザルツァウへ向かった。」 - イリヤ・カバコフ

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2026年5月18日月曜日

Stefano Delù - Chitarre Solo I + II


Label: -
Catalog#: -
Format: CDr, Album
Country: Italy
Released: 2011

1-1 Aelfraed 3:25
1-2 Lao-Tzu & Harry Haller 7:10
1-3 Ealafrith 7:55
1-4 Rosso Profondo 4:20
1-5 Viaggio Di Un Bhikku Con Un Bagaglio Di Pane E Ideali 7:20
1-6 Bijou 1:25
1-7 Guarda Dritto E Vai Avanti! 2:35
1-8 Buonanotte 0:40
2-1 Serenatassira I 2:53
2-2 Serenatassira II 5:09
2-3 Autoharp I 6:22
2-4 Serenatassira III 4:34
2-5 Autoharp II 3:11
2-6 Come sarà Milano? 6:53
2-7 Mr. Jeff Gurd 1:35
2-8 Ergon & Parergon 5:58
2-9 Aelfraed II 8:41
2-10 Al Farabi 6:28
2-11 25 May at Brienz 4:33
2-12 Prestidigitami 4:32
2-13 Glaßharpe 6:51
2-14 Aelfraed I 4:25

ドイツの先達Hans Reichelが提示したギター音響拡張のアプローチに感化を受け、自作カスタムギターによる即興演奏の可能性を追求したミラノ出身の音楽家Stefano Delù(ステファノ・デルゥ)。前衛ロックバンドStormy SixのメンバーであるFranco Fabbriらが設立した非商業音楽のためのレーベルL'Orchestraから、1983年に発表された唯一のソロアルバム「Chitarre Solo」を、作者自らの手で復刻した私家再発盤。2枚組CD-R仕様となっており、ディスク1にはオリジナルLPの全8曲を収録。ディスク2には同時期に録音された未発表音源や別テイクがコンパイルされています。
デルゥが考案したカスタムギターは、ブリッジサドルとネックの間に木製バーを梯子状に増設した特殊な構造。右手で弦をバーに押し当てて弦長を区切ることで、高域の倍音や不均一なうねりが発生し、金属造形やガラス細工の光の煌めきのような繊細で澄んだ音色が引き出されます。本作ではこの変則的な楽器と通常のギターを駆使し、既存音楽の枠組みにとらわれない自由な爪弾きに、穏やかな余韻と空白を交えて瑞々しい音像を立ち上げています。
アヴァンギャルドの文脈にありながら決して難解なものではなく、全編通じて牧歌的で親しみやすいメロディセンスと、随所で滲む風通しの良い実験精神や遊び心が印象的です。静けさと点描的なフレーズが際立つディスク2のなかでも、エフェクトを効果的に用いた「Come sarà Milano?」や「25 May at Brienz」といった楽曲は、The Durutti Columnの初期作にも通じるナイーヴな創作衝動と地中海のメランコリーが交差する、本作ならではのハイライトだと思います。
現在のデルゥは活動の場を実用音楽へと移し、ドイツのヒーリング音楽専門レーベルSantec Musicの主要コンポーザーの一人として活動。アコースティック/クラシック・ギターを用いた内省的な楽曲の書き下ろし、クラシック古典曲の演奏など、自然の情景や静寂を表現する環境音楽・インストゥルメンタル作品を提供し続けています。

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2026年5月4日月曜日

Tim Weston / Shelby Flint - The Lady Weeps


St.GIGAアーカイヴ「Coral reef A」より。LAジャズ/フュージョンの名門グループを渡り歩いたギタリスト/作曲家Tim Weston(ティム・ウェストン)と、60年代初頭のフォークシーンから活動するシンガーソングライターShelby Flint(シェルビー・フリント)。公私ともに長年のパートナーである二人が1993年に発表したアルバム「Providence」からの選曲。Gary Willisのフレットレス・ベース、Peter Erskineのドラム、John Beasleyのピアノという、当時のLAシーンを象徴する精鋭たちが支えるクワイエットで洗練されたジャズサウンドで、穏やかな緊張感の中で各奏者の細やかなニュアンスをじっくり味わえる構成になっています。50代を迎えたフリントの深みのある歌声と、40代前半のウェストン。二人の信頼関係から生まれる親密な熱量が伝わってくる実に佳い一枚です。音の潮流はその後、波のSEとともにLiz Story「Leap of Faith」、David Foster「Water Fountain」へと連なっていきます。

2026年4月22日水曜日

Cinq - Sketch


Label: Noble
Catalog#: CXCA-1094
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2002

1 Rill 5:44
2 Kicker 8:02
3 Lefty 5:56
4 Spillover 6:34
5 Sugamo Beach 7:02
6 Sleepy Eyes 7:49
7 DaN 5:48

「ケルンの深い針葉樹林」「綺麗な蜘蛛の巣をぬける木漏れ日」「夜と朝のあいだの、薄青い時間」「誰もいない学校の体育館」。───これらの言葉は、本作リリース時に他のアーティストやライターたちが寄せたコメントから一部抜粋したものです。既成のジャンルやタームをなるべく避け、それぞれに思う風景や出来事を重ねながら、この作品の不思議な魅力に触れようとしている。それがなんだかとても納得がいきます。エレクトロニックとアコースティック。都市と自然。冷たさと温かさ。音響派以降の繊細な感性が、何かと何かの間にある最も平穏な場所にぽつんと浮いている。本作「Sketch」は、涼音堂茶舗の中心的ユニットsnoweffectのメンバーである竹村理明が、ソロプロジェクトcinq(サンク)名義で発表した1stアルバム。リリース元は、MIDI Creative傘下で「日常のための音楽」をコンセプトに立ち上げられたnoble。公式ページはいまも当時の空気のまま残されています。

“Deep coniferous forests in Cologne.” “Sunlight filtering through a beautiful spiderweb.” “The pale blue hour between night and morning.” “An empty school gymnasium.” — These fragments are taken from comments by artists and writers at the time of the album’s release. It feels only natural that they chose to avoid conventional genres, reaching instead for personal landscapes to describe the mysterious allure of this music. Electronic and acoustic. Urban and natural. Cold and warm. A delicate post-digital sensibility floats quietly in the serene space between one thing and another.
Sketch is the debut solo album by Masaaki Takemura (a member of the unit snoweffect) under the name cinq. It was released on noble, a sub-label of MIDI Creative dedicated to “music for everyday life.” Even today, the official website remains, capturing the same atmosphere of those early days.

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2026年3月24日火曜日

David Lee - Freedom From Stress







昨年NumeroからリリースされたParadise Is A Frequency監修によるコンピレーション「The Style Of Life」。その冒頭に収録されていたのが、David Leeなる人物による「Freedom From Stress(ストレスからの解放)」。かつてカリフォルニア州サンタモニカに存在したレーベルMindstar Tapesのカセット音源で、可聴域外の音量や速度でポジティブなメッセージを忍ばせ、繰り返し聴くことで潜在意識に働きかけるという、80年代に流行したサブリミナル効果を謳うリラクゼーション・シリーズの一作だったようです。クレジットには作曲/プロデュースとしてBrad Marlinの名が記されていることから、Lee自身は音楽家というより、春山茂雄や渡辺茂夫のような健康法や心理学的アプローチを提唱する監修者的な立場だったのかもしれません。
「The Style Of Life」には、他にも80年代から2000年代にかけて制作された知られざるニューエイジ/スムースジャズ(一部フェイクを含む)が収録され、いずれもテレビの深夜放送とか自己啓発教材ビデオで流れていそうなデジタルでイージーな雰囲気の楽曲ばかり。本来の目的や用途から機能的音楽を切り離し、未知なる感傷をともなう純粋な聴取対象として捉え直すレアグルーヴ的発掘が、本当にニッチな領域まで達しているのだなと感じます。アメリカという巨大なマーケットの底知れなさを実感させられる素晴らしいコンパイルです。


va The Style of Life (Numero Group, 2025)
compiled by Mario Martinez & Scott Trausch
cover painting by Stan Solomon

2026年3月18日水曜日

Fra Ola Narr - Fra Ola Narr


Label: Sidespor
Catalog#: SCD 9002
Format: CD, Album
Country: Norway
Released: 1988

1 Gilje 3:52
2 Bergtatt 4:00
3 Røskatten 4:06
4 Ola Narr 4:03
5 Tawinul 4:00
6 Kvarv 5:06
7 Indris 3:04
8 Gand 4:00
9 Blå Folk 3:30
10 Banzul 3:44
11 Sinkadus 3:06
12 Hogg 3:50
13 Tango Fot To 3:50

「楽器の魔術師」と称されるオスロ出身の作曲家/フルート奏者Svein Hansen(スヴェイン・ハンセン)を中心に、ノルウェーにおけるラテン音楽の探究者らによって結成されたプロジェクトFra Ola Narr(フラ・オラ・ナール)のデビューアルバム。
祝祭の場で踊られるスクエア・ダンス「フィーレトゥル」。山間部の牛呼び歌「クロック」。イギリスから伝来した三拍子舞曲「エングリス」。スルナダール地方の素朴な子守唄「ボーンスッル」。軽快で弾むようなポルカの亜種「ポルケット」。───ノルウェー各地に根付く土着の伝統形式に、ハンセンが長年培ってきた中南米のリズムを高度に結びつけた新感覚のフォーク・フュージョン。北欧とラテンという対極的な異文化混交を試みた野心的作品でありながら、音楽的な難解さは感じられず。随所に散りばめられた知的なユーモアと、空き瓶や椅子の背もたれまでも取り入れた遊び心あふれるアンサンブルが、耳新しくも懐かしい空想民族的な味わいを生み出しています。
プロジェクト名の「フラ・オラ・ナール」とは、オスロに実在する丘の名前に由来。19世紀に農村から大都市クリスチャニア(現オスロ)へ移住し、外務省の給仕などを務めながら、その派手な服装や振る舞いから「道化師オラ(オラ・ナール)」の愛称で親しまれたOle Arnesen(オーレ・アーネセン)なる伝説的人物の逸話に因むものだそうです。以下は、ブックレットに寄せられた作家Arild Nyquist(アリール・ニクヴィスト)による解説の抜粋です。

「今日、ほとんどの人は旅人です。私たちは美しい曲線や細い経度をなぞって地球を横断し、吸収し、受け入れ、耳を傾け、観察します。未知のものが依然として未知であり続け、言葉や動きが理解できないとき、私たちは彼らが与えてくれる音楽に耳を傾けます。音楽はおそらく、あらゆる言語の中で最も普遍的なものです。このレコードで、私たちはノルウェーとラテンアメリカのフォークミュージックの融合に出会います。特に後者は、さらに多くの文化が交差する地点から生まれてきたものです。そしてそのような「交差点」こそが、オーレ・アーネセンが帽子を脱ぎ、彼の都会の分身であるオラ・ナールに挨拶を交わす場所なのです。」 - アリール・ニクヴィスト

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2026年3月16日月曜日

Arto Lindsay - Ecomixes


Label: Avex Trax
Catalog#: AVCD-11833
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2000

1 Prefeelings (Calm Remix) 8:56
2 The Prize (Yukihiro Fukutomi Remix) 5:52
3 Pode Ficar (Da Lata Cucumber Mix) 4:05
4 Modos (Child's View Remix) 8:19
5 Ondina (Chari Chari Remix) 5:49
6 Counting The Roses (Self-Remix) 6:32
7 Tone (Hair Stylistics Remix) 5:14
8 Pode Ficar (Live) 4:16
9 Ex-Preguiça (Live) 2:58
10 Interior Life (Live) 3:36
11 Unsure (Live) 5:18

大胆に再構築すると原曲の粋が際立ち、逆に忠実だとかえって手跡が感じられたり、リミックスという表現は絶妙なバランスで成り立っているものだと感じます。本作は鬼才Arto Lindsay(アート・リンゼイ)が1999年に発表した「Prize」の日本企画リミックスアルバム。Calm、竹村延和、Chari Chariら先達各々の感性が冴え渡るなかで、リンゼイ自身の声や存在感は瑞々しく自由で普遍的。原曲のたゆたうようなアヴァンな甘美さに無国籍でジャンルレスなトリップ感が加わり、耳と脳に心地の良い仕上がりです。映画監督/美術キュレーターDiego Cortez(ディエゴ・コルテス)による海の漂流物をモチーフにしたCD/12インチの一連のアートワークも秀逸。

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2026年3月7日土曜日

Joan Bibiloni - Oníric


Label: Satie Producciones Audiovisuales
Catalog#: -
Format: Digital, Album
Country: Spain
Released: 2021

1 Agua Profunda 3:05
2 Massatge Oníric 7:19
3 Espasiado Fuera 10:19
4 Badia Onírica 6:13
5 Fila Onírica 2:52
6 Capell Oníric 5:23
7 Espasiado Fuera - Loving Obituary 10:22

スペイン・マヨルカ島出身のギタリスト/作曲家ジョアン・ビビローニが近年精力的に公開しているデジタル・アーカイブより、未発表音源や別テイクを自ら編纂したコラージュ・シリーズの4作目。カタルーニャ語で「夢のような」を意味する本作は、1986年から87年にかけてスペイン国営放送TVEで放送された自然ドキュメンタリー「シレンシオ・ロト(破られた沈黙)」のサウンドトラック素材をベースに、ハビエル・モラ(キーボード)とリョレンス・バルセロ(オルガン)を迎えた新規セッションを織り交ぜ、長い時間をかけて解体再構築したコラージュ/リワーク作品。原曲の澄んだエッセンスのみを抽出して放散させるような編集手法により、彼の長いキャリアの中でも際立ってアンビエント色の濃い、幻想的な仕上がりとなっています。コロナ禍という閉塞した時期に、ビビローニが心の中に描いた楽園世界。他界した親しい友人たちに捧げた「Espasiado Fuera - Loving Obituary」をはじめ、全編通して海や風の気配と一体化した慈愛に満ちた空気が広がっています。

This is the fourth installment of the collage series by Mallorcan guitarist and composer Joan Bibiloni. The project features unreleased recordings and alternate takes handpicked from his recently active digital archive.
The album title, meaning “dreamlike” in Catalan, is a collage/rework project meticulously deconstructed and reconstructed over time. It blends soundtrack material from the 1986–87 Spanish national TV (TVE) nature documentary Silencio Roto with new sessions featuring Javier Mora (keyboards) and Llorenç Barceló (organ). By extracting and diffusing only the purest essence of the original tracks, Bibiloni has created a fantastical work with an ambient depth that stands out in his long career.
This music represents the inner paradise Bibiloni envisioned during the isolation of the COVID-19 pandemic. From “Espasiado Fuera - Loving Obituary,” dedicated to late dear friends, the entire album is imbued with a compassionate atmosphere that breathes in harmony with the sea and the wind.

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2026年3月5日木曜日

Kevin Postupack - Release


Label: RM Records
Catalog#: PRM-1-1020
Format: Vinyl, LP, Album
Country: US
Released: 1984

A1 Giselle 2:58
A2 Release 7:56
A3 Summer Solstice 7:13
A4 Escape 5:27
B1 Windsong 4:45
B2 Devotion 1:13
B3 Eye Of The Storm 2:43
B4 For Absent Friends 3:47
B5 La Mer 7:54

現代社会や政治を鋭く風刺する小説家であり、劇作家、ビジュアルアーティスト、脚本家、ミクソロジストの顔も持つ多才な芸術家ケヴィン・ポスチュパックが、ミュージシャンとして活動していた80年代に自主レーベルから発表したソロアルバム。1983年1月と6月、コネチカット州のスタジオにて録音。クラシック/スチール弦ギター、テナーリコーダー、ウィンドチャイムといったすべての楽器を彼自身が演奏しています。
ポスチュパックの音楽性は、ジャズ、クラシック、フォーク、ミニマリズムのあいだに位置する混成スタイル。装飾を排したフレージングと余白を活かした構成に、時にスペイン近代ギターの語法や旋法的なアプローチを交えながら、影を帯びた内省的な曲想を淡々と描き出していきます。A面はタイトル曲をはじめ、美しい流れを持つ私的な心象スケッチ群。B面では、キース・ジャレットやジョン・マクラフリンへの敬意を表した楽曲(B1-2)、スティーヴン・クラムと共作(B3-4)など、より動的に外の世界へ意識を広げつつも、根底にある透徹した世界観は変わらず。息遣いが聴こえてくるような親密なレコーディングも相まって、作者の内面世界へと静かに引き寄せられていきます。
下記はジャケット裏に記された、モダニズム詩人ウォレス・スティーヴンズの詩「青いギターを持った男(The Man With the Blue Guitar)」の一節。音楽表現に対するストイックな姿勢の根源が垣間見える引用で、とても興味深い言葉です。

“Throw away the lights, the definitions,
And say of what you see in the dark
That it is this or that it is that,
But do not use the rotted names.

Throw the lights away, Nothing must stand
Between you and the shapes you take
When the crust of shape has been destroyed.
You as you are? You are yourself.

from “The Man With the Blue Guitar”,
by Wallace Stevens, ⓒ 1937, Alfred A. Knopf, Inc.

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2026年3月3日火曜日

Steve Khan - In A Silent Way


St.GIGAアーカイヴ「Ebb tide A」より。アメリカのフュージョン系ギタリストSteve Khan(スティーヴ・カーン)による、Joe Zawinul(ジョー・ザヴィヌル)作品のカバー。敬愛する巨匠たちの名曲を繊細なアレンジで再構築した1980年のアルバム「Evidence」に収録。アコースティック・ギター(6弦・12弦)とエレクトリック・ギターが多重録音で丹念に重ねられ、時に低音弦のループを半速再生させるなど、彼独特の緻密なスタジオ・テクニックが施されています。ニューエイジ・ジャズ的な手触りがあり、どこか懐かしいような穏やかで心地よい余韻が感じられるナンバーです。

2026年2月28日土曜日

Xiomara Fortuna - De la Loma al Llano


Label: -
Catalog#: -
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Dominican Republic
Released: 1987

A1 Quiero Abrir una Ventana 3:49
A2 Mujer Campesina 3:48
A3 Tiempo Oportuno 3:56
A4 Gagá Lola 4:42
A5 Ay! Si Yo Tuviera Tierra 3:09
B1 Quisiera Con Mil Amores 4:29
B2 Muchacho Haragán 4:31
B3 Trabajo y Mas Trabajo 3:22
B4 Tenemos Que Organizarnos 4:40
B5 Estoy Unida 3:41

「フュージョンの女王」の異名を持つドミニカ共和国の国民的歌手シオマラ・フォルトゥーナが、1987年に発表したキャリア初となるアルバム。農村開発や女性の権利擁護を理念に掲げるドミニカ=スイス共同の文化支援プロジェクトの一環として制作。複数存在するエディションのうち、本作は自主制作に近い形で流通したヴァイナル・エディション。
フォルトゥーナ率いるチームが国内の農村部を巡り、近代化の影で失われつつあったアフロ・ドミニカ系のフォークロアを現地奏者や女性たちから採集。そうした数年間にわたるフィールドワークの成果を糧に、トニー・ヴィシオーソやガイ・フロメタといった越境的感性を持つ精鋭ミュージシャンらとともに結実させたのが本作。サトウキビ農園の労働者に根付く「ガガ」。土着の守護聖人を祀る祭礼や儀式において演奏される「パロス」。死者の魂を弔う複雑なポリリズムを特徴とする「コンゴ」。───土の匂いが立ちこめるような伝統的リズムの躍動と、ジャズ/フュージョンの洗練、そしてフォルトゥーナの深く力強い歌声が交わり、複雑でスリリングながらも有機的なアンサンブルへと昇華されています。
当時主流だった華やかなメレンゲとは一線を画し、自らのルーツと社会的現実に真摯な眼差しを向けたドミニカン・オルタナティヴの嚆矢に位置づけられる名作。全編通して素晴らしい内容ですが、特にミニマルなギターフレーズとコンゴのリズムが絡み合う「Quisiera Con Mil Amores」の高度なハイブリッド感と抑制美にかなり引き込まれます。

Xiomara Fortuna, the Dominican national treasure known as the "Queen of Fusion," released her debut album in 1987. Produced as part of a Dominican-Swiss cultural project focused on rural development and women’s rights, this particular vinyl edition was distributed almost as a private press among several existing versions.
Fortuna and her team traversed the country’s rural heartlands, documenting Afro-Dominican folklore—traditions then fading in the shadow of modernization—directly from local practitioners and women. Drawing on years of fieldwork, she collaborated with visionary musicians like Tony Vicioso and Guy Frómeta to bring this vision to life. From "Gaga," rooted in the life of sugarcane plantation workers, and "Palos," performed in rituals for patron saints, to "Congo," characterized by complex polyrhythms for the departed—the album captures it all. The primal, earthy energy of these traditional rhythms intersects with jazz/fusion sophistication and Fortuna’s commanding vocals, resulting in a complex, thrilling, and organic ensemble.
Standing in stark contrast to the flashy, mainstream merengue of the era, this masterpiece is a cornerstone of Dominican alternative music, born from a sincere gaze at one’s roots and social reality. While the entire album is stellar, the sophisticated hybridity and restrained beauty of "Quisiera Con Mil Amores," where minimalist guitar phrases intertwine with Congo rhythms, is truly captivating.

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2026年2月6日金曜日

X.Valdez - Higher Grace


Label: Toy's Factory
Catalog#: TFCK-87816
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2000

1 Everlasting Breath 5:14
2 Higher Grace 5:05
3 Whirlpool 5:37
4 Universal 6:07
5 Polite Endeavour 4:39
6 Horse 6:18
7 Whirlpool (Remix by Jersey Street) 5:17
8 Polite Endeavour (Remixed by Silent Poets + Chari Chari) 3:13
9 Whirlpool (Remixed by Misa Negra) 8:32
10 Universal (Remixed by Playing For The City) 6:42

北アイルランドの伝説的パンクバンドThe Undertonesのオリジナルメンバーとして知られるDamian O'Neill(ダミアン・オニール)が、フレンチタッチの重要人物Xavier Jamaux(グザヴィエ・ジャモ)をプロデューサーに迎え、女性ヴォーカリストAthena Constantine(アセナ・コンスタンティン)をフィーチャーして発表したX.Valdez名義のアルバム。
本作の基軸となっているのは、オニール所有のレコードから抽出されたノイズ混じりのサンプリング素材。ソウルやジャズの手触りを残すバンドサウンドの断片に、アセナの気だるく抑制の効いたヴォーカル、ジャモによる現代的なプログラミングが重なり、古びたナイトクラブの幻影を呼び起こすような優雅でデリケートなダウンテンポ/ラウンジが全編にわたり展開されます。元々はYellow Productionsのオフィスに届いたデモテープをジャモが偶然耳にしたことがきっかけで制作が始動。Yellow関連でリリースが計画されていたようですが、結果的にアルバムとして正式に発売されたのはこの日本盤のみとなっています。アルバム後半にはハウス/ブロークンビーツの豪華布陣によるリミックスを収録。その人脈を含め、作品全体の輪郭を決定づけているのは裏の立役者ともいえるジャモの存在だと感じます。
オニールは翌年、本作の路線をさらに実験的に推し進めたA Quiet Revolution名義のアルバムを、Alan McGee主宰のPoptonesレーベルより発表。サンプリング素材をよりアブストラクトに解体・再構築した空想エキゾ/アンビエント作品で、The CaretakerやWunderを好むリスナーにおすすめしたい内容となっています。 

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2026年2月4日水曜日

Orkiestra Ósmego Dnia

Jan A.P. Kaczmarek (1953-2024)

ポーランド出身の作曲家ヤン・A・P・カチュマレクを中心とする音楽プロジェクト「Orkiestra Ósmego Dnia」(オルキェストラ・ウスメゴ・ドニャ:第八の日の楽団)。1976年、古都ポズナンに拠点を置く実験劇団「Teatr Ósmego Dnia(テアトル・ウスメゴ・ドニャ:第八の日劇場)」の劇伴制作のために結成。その翌年以降に独立したプロジェクトへと発展していきました。この「第八の日」という名は、神による7日間の天地創造を経て、「人間が自らの手で自由な世界を創り始める日」という意味で、表現の自由が厳しく抑圧された当時のポーランドにおいて、創造性と自由を切望する芸術家たちの意志が投影されています。

カチュマレクは、ドイツ製チターを改造した創作楽器「Fisher's Fidola(フィッシャーズ・フィドラ)」を考案。ハープのようでもあり電子音のようでもある、この神秘的で透明感のある音色が、彼らの作品を特徴づける音響的な核となっています。クラシック、ミニマリズム、ジャズ、フォークロア、電子音や即興───様々な要素を複雑に融合させた独特のスタイルは、当時の既存ジャンルでは形容しがたいものでした。それはまた、重苦しい社会情勢の中で「外の世界が閉ざされているなら、自らの内面へ進むしかない」という強い信念のもとで、新たな芸術形式を模索しながら「内なる自由」「精神の解放」を表現しようという実験的な試みでもありました。

以下は、1982年から85年にかけて彼らが発表した3枚のアルバム(ポーランド3部作)について。作品ごとに編成が変わり、共同制作者それぞれの持ち味が作風に反映される点もこのプロジェクトの大きな特徴であり魅力だと思います。

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①「Muzyka Na Koniec / Music For The End」(1982)
舞台の劇中音楽をもとに制作されたデビューアルバム。共同制作者はギター奏者のグジェゴシュ・バナシャク。カチュマレクが操るフィドラ、フルートやピアノといった伝統楽器に、バナシャクのアコースティック・ギターが均衡を保ちながら絡み合う繊細なアンサンブル。東欧特有の幽玄な空気感。張り詰めた静寂。詩性と霊性。全編通して深く沈んだモノトーンな音響が展開されますが、その曇り空から差し込む鈍い光のようなフィドラの音色が印象的です。グループ初期の作風「アコースティック・ミニマリズム」を象徴する作品であり、当初の演劇的な演出要素が色濃く反映されています。初版はアメリカのFlying Fish Recordsより。フォークやブルースを主軸とする同レーベルからのリリースは、当時東側陣営の一員だったポーランドのバンドとしては異例なことでした。1984年にポーランドのSavitorレーベルから再発。検閲により政治的言説が封殺された時代における、言葉を超えた「静かな抵抗」のドキュメントとして極めて重要な作品だと思います。

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②「At The Last Gate」 (1984) 
ポーランド屈指のベーシスト、クシシュトフ・シチェラニスキを共同制作者に迎えたセカンドアルバム。前作のフォーク/クラシカル要素に加え、チェラニスキが持ち込んだジャズ・フュージョンの語法や民俗的旋法を高度に融合させた作品。カチュマレクが操るフィドラの崇高な響きに、シチェラニスキのフレットレス・ベースとギターがもたらす浮遊感とミニマルなグルーヴ。音響はより重層的になり、全編通して静謐でありながら濃密な熱量も感じさせる、奇跡のようなアンサンブルへと昇華されています。A面は旅の始まりと自然の風景。B面は内面への深い沈降を経て、旅の終着点へ。前作の「終わり」のその先にある未知の領域。内省から外の世界へと意識が広がり始めた過渡期を象徴し、現代のアンビエント・ジャズ視点からも高く評価される一枚。ジャケット右端の折れ目は、見開き中面に印字されたレーベルロゴを表示させるための仕様だったようです。リリース元はポーランドのSavitor。

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③「Czekając Na Kometę Halleya」 (1985) 
当時接近していたハレー彗星をテーマにしたコンセプチュアルなサードアルバム。邦題「ハレー彗星を待ちながら」。カチュマレクが作曲・指揮、フィドラなどの主要楽器を担当。初作の共同制作者であったグジェゴシュ・バナシャク、そしてマチェイ・タラガら総勢16名もの奏者が参加した意欲作です。前作までのアコースティックな音響から一転して、シンセサイザーを大々的に導入したダークでスペーシーな世界観。ドローンやサステインを主体とした音響構造に、ソプラノ歌唱や朗読、合成音声も交え、「耳で鑑賞する舞台作品」というような叙事性と宇宙的漂泊感が演出されています。音楽ファンからは「荘厳なシンフォニック・プログレ」とも評されるオーケストラルな音作りが特徴的で、映画音楽作曲家として大成するカチュマレクの来たるべき作家性がいち早く萌芽した一枚といえます。初版はSavitor。2011年にYesterdayレーベルからCD再発。

2026年1月29日木曜日

Cláudio Mourão - Cuma-É


Label: -
Catalog#: 7804.558
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Brazil
Released: 1992

A1 As Sete Cores Do Arco-Íris 2:59
A2 A Era De Aquário (Instrumental) 4:02
A3 Os Mistérios Da Paixão 2:36
A4 Cuma-É 4:00
A5 Anjo 3:49
B1 Pala 3:31
B2 Imagem 2:57
B3 Refletino 3:49
B4 Sentimento De Artista 3:41
B5 Os Mistérios Da Paixão (Instrumental) 2:36

リオグランデ・ド・スル連邦大学の教授で、ろう教育やブラジル手話(Libras)を専門とするCacauことCláudio Mourão(クラウディオ・モウラン)。彼が故郷ミナス・ジェライス州でシンガーソングライターとして活動していた1992年に、自主制作で発表した唯一のアルバム。
音楽監督およびアレンジを務めたのは、ミナス派の名ギタリストJuarez Moreira。クレジットにはAndré Dequech、Ivan Corrêa、Ezequiel Lima、Roberto Zara、Esdra "Neném" Ferreira、Paulinho Pedra Azul、Ronaldo Venturiniといった「街角クラブ(Clube da Esquina)」界隈の重要人物や、ブラジリアン・ジャズ/フュージョン界の実力派プレーヤーが名を連ねています。
希望の虹をモチーフにした瑞々しいオープニング曲「As Sete Cores do Arco Íris」に始まり、浮遊感溢れるシンセとギターのアルペジオが印象的な「A Era de Aquário」。子供の無邪気さと社会的な現実を対比させた表題曲「Cuma-É」。繊細なスローナンバー「Anjo」。ビートルズ風の「Refletino」。哀愁漂うカンサォン「Sentimento de Artista」。曲ごとのスタイルはとりどりでありながら、全編通してミナス特有の透明感とメランコリー、ジャジーなサウンドに特徴付けられる極めて純度の高い楽曲が並び、Lo BorgesやBeto Guedesの作品に親しんだリスナーであれば間違いなく心に響く内容だと思います。
音楽家としてのアルバムは本作のみですが、先述の通り現在は教育学の博士としてLibrasを用いた文学や芸術の普及に尽力。手話による詩の朗読(Sarau)や、俳優、ダンサー、振付師としてのキャリアも長く、ろう文化における教育と芸術表現の第一人者として長年にわたり活動を続けています。

「Cuma-É(クマ・エ)とは、謙虚な心で世界やわが国の出来事を考え、普遍的なものとして捉えてくれた、ある子供のニックネームです。それは私たちの日常生活、日々の現実を映し出しています。物質的(社会的)な貧困と、夢を実現しようとする精神的な豊かさとの対比。Cuma-Éとは、まさに生きる意志そのものなのです。」 - ジャケット裏より

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2026年1月27日火曜日

Heitor - Unreal


St.GIGA Stream「海流の中の島々」より。リオグランデ出身のギタリスト/マルチ奏者Heitor T.P.ことHeitor Pereira(エイトル・ペレイラ)が1994年に発表したソロアルバム「Heitor」の収録曲。Simply Redに在籍していた頃の録音で、ブラジル音楽のフィーリングが漂う洗練されたインストゥルメンタル曲が並ぶ中、この曲ではペレイラ自身の柔らかなスキャットをフィーチャー。プログラムではGontiti「UPC」とMichael Franks「Vincent's Ear」の間に挟まれていて、その流れも心地よいです。

2026年1月10日土曜日

TIME 1 Produced by PARLIAMENT


Label: E-License
Catalog#: EF-2003-01
Format: CD, Compilation
Country: Japan
Released: 2003

1 Hajime Yoshizawa - I Am With You (Radio Edit) 3:51
2 Hajime Yoshizawa - Secret Flight (Original Mix) 4:59
3 Electric Sheep - Green 6:51
4 Electric Sheep - Naked Noon 6:36
5 Cosmic Village - Starseed 4:50
6 Sleep Walker - Elina 5:01
7 Cosmic Village - Earth Rise 3:51
8 Cosmic Village - Aquasphere 4:58

フィリップ・モリス社のタバコブランド「パーラメント」のプロモーション用として制作された非売品コンピレーション・アルバム。選曲・監修は音楽プロダクションExtra Freedomが手がけています。
収録内容は、Kyoto Jazz Massiveで知られる沖野修也と、ピアニスト吉澤はじめの両氏が関わる複数のプロジェクト、および吉澤氏のソロ楽曲で構成。「アメリカン・ブルー」を基調とするパッケージで、パーラメントが掲げる「洗練された大人のリラックスタイム」というブランドイメージと寄り添うように、全体はフューチャージャズ/ラウンジ系の落ち着いたグルーヴで統一されています。なかでも印象深いのが、シェリー酒ブランドTio Pepeのレーベルから12インチレコードで限定リリースされたクロスオーバー#3「Green」と、都市の孤独感をたたえたジャジーなディープハウス#4「Naked Noon」。CDでは本作以外で聴くことができない、Electric Sheep名義による2曲の流れがとてもよく、交互に繰り返し聴きたくなります。パーラメントからは本作のほかに「Quiet Voyage」というコンピレーションも制作されていますが、そちらは女性ジャズヴォーカル曲からセレクトされたものでした。

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2025年12月31日水曜日

Estratos - Estratos


Label: La Reserve Records
Catalog#: -
Format: Digital, Album
Country: US
Released: 2025

1 Incantation 1:29
2 Puzzle 3:23
3 Gameover 3:17
4 Vesper (ft. Michael Mayo) 2:35
5 Paddy's Interlude 1:18
6 Battlecry 2:32
7 Donal's Sequence 3:03
8 Crush (ft. Julia Easterlin) 3:23

ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するDiego Joaquin Ramirez(ディエゴ・ホアキン・ラミレス)によるソロプロジェクトEstratos(エストラトス)。父はグアテマラ人、母はヤキ族のネイティブ・アメリカン。幼少期からアメリカ西部、アムステルダム、アイルランドを旅しながら多様な音楽に触れてきたという多文化的なバックグラウンドを持つドラマー/作曲家です。本作は2025年3月にリリースされた彼のデビュー作。
浮遊感に満ちたギターのフレーズループで幕を開け、緻密なリズムワークに鍵盤やサックスが折り重なるレフトフィールドなジャズ/クロスオーバー、Michael MayoやJulia Easterlinをフィーチャーしたアトモスフェリックなボーカル曲、さらには短いインタールード的なミニマル小品まで。Ramirez自身の旅の記憶や心象描写が投影されたノスタルジックなサウンドスケープが静かに広がっていきます。全21分というコンパクトな構成ながら、緩急自在なトラックの満ち引きが心地よく、一年通して移動中や仕事中に何度も繰り返し耳を傾けた1枚です。

Diego Joaquin Ramirez AKA Estratos is an Irish-born drummer and composer based in NY. Known for his vibrant sound, versatility and effortless groove, he has worked with a wide range of world-class artists, including Marc Cary, Carrtoons, Melanie Charles, Kiefer, Jeremy Pelt, and Wayne Tucker. He has performed on world-renown stages such as NPR Tiny Desk, The Blue Note, and The Kennedy Center.

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2025年12月27日土曜日

George Bishop - Mountain Path


St.GIGAアーカイヴ「Easy wind B」より。フィラデルフィア出身のサックス/マルチ奏者George Bishop(ジョージ・ビショップ)が1992年に発表した初のリーダーアルバム「Like A Butterfly」の収録曲。リリース元はドイツの名門Innovative Communication。プロデュースは同レーベルの看板アクトDancing Fantasyのメンバー2人が担当しています。スムースジャズ的なクールで都会的なタッチでまとめられたアルバムの中、この「Mountain Path」では風の音のSEが添えられ、ひときわ牧歌的で穏やかなサウンドスケープを感じさせます。

Smooth all the way, love-jazz vocals of the finest sort, great tunes, warm and soft as silk with a laid- back touch of cool. This thing simply grooves along while you slide through the night, a breeze of music gently ruffling the air-waves. One of New York's finest sax players merges his distinct sound and talents with the DANCING FANTASY producer team of Chris W. Williams & Curtis McLaw and the fine voice of singer Romy Camerun.