2018年10月31日水曜日

[225] Consequential - MicroComposed 1980-86


Label: Discom
Catalog#: DCM-007
Format: Vinyl, LP, Compilation
Country: Serbia
Released: 2018
DISCOGS

A1  I Love Her

A2  Magic Key
A3  Behind The Soul
A4  Vasiona Desire
A5  Tokyo
B1  Love To Me
B2  Daydream
B3  Danger Lover
B4  Happy Together
B5  Future

旧ユーゴスラビアの知られざるエレクトロニック・ミュージックを発掘するインディペンデント・レーベルDiscomより、80年代ベオグラードで活動していたシンセポップ・バンドConsequential(コンセクエンシャル)の未発表音源集がリリース。メンバーは、同レーベルからリリースされたDATAやŠizikeなどのプロジェクトの仕掛人でもある重要人物Zoran Jevtić(ゾラン・イェヴティッチ)と、国内初となる電子音楽スタジオを設立したNikolaj Bežek(ニコライ・ベゼク)。


私たちが旧ユーゴスラビアの音楽に取り組んでいるように、ある地域に残された音楽をリリースすることに焦点を置く場合、発掘すべき質の高い音源がなくなってしまうのは恐ろしいことです。しかし、情熱と高い倫理基準を持っているなら、その願望は、音楽愛好家だけでなく、アーティスト自身によっても評価され始め、時にアーティストが忘れられた作品を救うために密接に関わってくることさえあります。今回、ユーゴスラビアの電子音楽の先駆者であるゾラン・イェヴティッチ(DATA、Šizike、The Master Scratch Band、Digitronの創設メンバー)とニコライ・ベゼク(ベオグラードの初期エレクトロニック・シーンの重要な貢献者)との関係は、職業上の境界を越え、初期ユーゴスラビアン・エレクトロニカを明らかにするという使命を私たちに与えてくれました。私たちの新しいリリース「MicroComposed 1980-86」は、その相互の労力の成果です。このレコードは、彼らのグループConsequentialによって1980年から86年にかけて作曲され、ベオグラードのセルダーヨラ通りにあったユーゴスラビア初の純粋な電子音楽スタジオで録音された、10曲の未発表曲コレクションです。この地域的条件においては非常に希少で、不可欠な、ローランド製アナログシーケンサーMC-4B、モジュラーシンセSYSTEM-100M、ボコーダーSVC-350とVP-330のような機材のおかげで、イェヴティッチとベゼクはキャッチーなボコーダーと80年代の実験的エレクトロニカ、イタロディスコとシンセポップからの強い影響を組み合わせ、彼らが本当に好きな音楽を作り出すことができました。

イェヴティッチとベゼクは、とても面白い方法で音楽の旅を始めました。まるで作り話のように。彼らは、80年代初めにベオグラードで開催された最初の電子機器見本市のローランドの売り場で出会いました。ベゼクはイェヴティッチに新しいスタジオのためにお勧めの機器を尋ねました。ゾラン・ヴラチェヴィッチとDATAというグループで活動していたイェヴティッチは、面白半分で、最も理想的な10のスタジオアイテムとシンセのリストを作成しました。当時、これらの機器を調達するのに苦労していたイェヴティッチとヴラチェヴィッチの2人は、この新しい知り合いがリストから実際に何かを手に入れられるとは考えませんでした。しかし驚いたことに、そのすぐ後、ベゼクは全ての機器を調達しました。「次は何?」とベゼクは尋ね、その話はさらに広がりました。スタジオを組み立てたイェヴティッチとヴラチェヴィッチは、DATA、Šizike、The Master Scratch Band、そして彼らの友人であるMax & Introを録音しました。最初は、経験不足のためベゼクはあまり関与しませんでしたが、TR 808とPro Oneをプレイしたセッションの後、イェヴティッチとベゼクはŠizikeの有名な曲 "Don't Stop!" のベースラインを作りました。イェヴティッチはすぐに、2人がより深いレベルで協力できることに気付きました。そして、アナログシンセを愛していた彼らは、Kraftwerk、Yello、Depeche Mode、YMO、Logic System、Landscape、Torch Song、Georgo Moroder、Miko Mission、Ken Laszlo、Silver Pozzoliなど、彼らに最も影響を与えた音楽やアーティストへの関心を反映して、次第に多くの曲を作るようになりました。

Consequential is synth-pop band active in period between 1980 and 1986 in Belgrade, former Yugoslavia. It is founded by Zoran Jevtić (DATA, Šizike, The Master Scratch Band, Digitron) and Nikolaj Bežek (the founder one of Yugoslavia's first purely electronic music oriented studios, in Serdar Jola Street, Belgrade). The duo's equipment included: Roland MC-4B Microcomposer & OP8 Interface, System 100M, TR-808, TR-707, Juno 60, SH-101, SVC-350, VP-330 Vocoders, Korg Mono Poly, Polysix & MS10, Sequential Circuits Pro-One & Drumtracks, RSF Kobol and a Simmons drum module.


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2018年10月17日水曜日

[224.1] Radio Relativa 10TRAX



10月8日にマドリッドのオンラインラジオRadio Relativaで放送されたミックスが、Relativaのサウンドクラウドで公開になりました。「ジャンル・時間制限なしの10曲」というコンセプトの10TRAXシリーズ。今回、フュージョンやスムースジャズのトラックを中心に選曲しています。 

Radio Relativaは、音楽・アート・建築・グラフィティなど共通の趣味をもつ学生により6年前に始動したプロジェクトUndermadが母体となって、今年2月に新たに立ち上げられたラジオ局。現在Undermadのクルーは6〜7名で、それぞれが異なる場所で、Limbo Clubなどのパーティーを主催しながら、オンラインでのアートインタビューやラジオの放送に取り組まれています。彼らの過去5年の活動については、ストリートカルチャーを発信するウェブマガジン25 Gramosの特設ページ「5 años de Undermad」に詳しく書かれています。 
今回ミックスシリーズに参加するきっかけになったのは、UndermadのメンバーであるMiguel Martinezからいただいたメッセージでした。LYL Radioでの3月の放送(スペインのギタリストMiguel Herreroの特集回)を聴いてくださったといい、また、以前彼らが関わったパーティーにSuso Sáizが出演したことを教えてくれました。医師になるための勉強をされているMiguelさんがギャップイヤーで本国を離れている間、やりとりを引き次いでくれたのが、もう1人のメンバーPablo Losa Andrés。元々は別の設立メンバーが始めた10TRAXシリーズは、現在この2人が中心になって続けられています。彼らとのメッセージの交換を通じてスペインのアンダーグラウンドなシーンを知り、身近に感じられたのは、自分にとってとても嬉しいことでした。Miguelさん、Pabloさん、声をかけてくださりありがとうございました。


tracklist:
Mark Egan - Valley Hymn
Ray Russell - Point Perfect
Danny Heines - Pinnacle Wheel
Bernardo Rubaja - Passion Fruit
Marc Moulin - Igor
Jana Kirschner - Potopa (Primavera Mix - The Phantom)
Mich Live - Safety Room
Jaak Jürisson - Laste Mängutuba
Juan Martin - The Diver: David Hockney
DSK - Catch A Clear Sky

Undermad
Madrid based music collective

2018年10月16日火曜日

[224] Gordon Hempton - Silence and the Presence of Everything



米ミネアポリスの独立非営利組織On Being Studiosが運営するラジオ番組のアーカイヴより。騒音制御プロジェクトOne Square Inch of Silenceの創設者であり、Miramarの自然音シリーズをはじめ、現在まで60以上ものサウンドスケープCDを制作・発表してきた著名プロデューサーGordon Hempton(ゴードン・ヘンプトン)の特集「サイレンスとすべての存在」。

「サイレンスは絶滅の危機に瀕しているとゴードン・ヘンプトンは話します。 彼は真のクワイエットを存在感として定義します。音の不在ではなく、騒音の不在。 彼が知るように、地球は "太陽光駆動のジュークボックス" です。 クワイエットとは "魂のシンクタンク" です。 私たちは彼の耳で世界をとらえます。」

2018年10月9日火曜日

[223] Atlantis - Paradise


Label: Apollo

Catalog#: APOLLO 2
Format: Vinyl, 12", EP
Country: Belgium
Released: 1992
DISCOGS

A  Paradise Part 1 (Chill Out Version)  10:31

B  We Came In Peace (Armstrongs Message)  6:41

ドイツにおけるハウス・ミュージックの礎を築いたDJの1人と評されるHeinz Felber(ハインツ・フェルバー)と、フェルバーと共に複数の名義で活動し、多くのクラブヒットを放ったプロデューサーMichael Rödiger(ミヒャエル・オーディガー)。この2人のプロジェクトAtlantis(アトランティス)が、92年にベルギーの名門Apolloからリリースした唯一の作品。ZENライクな尺八をフィーチャーしたA面 "Paradise Part 1" は、翌年のレーベル・コンピレーション「Apollo 1」にも収録されたチルアウトの名トラック。「チルアウト」というと、90年代後期以降はダウンテンポ〜ラウンジが典型となり、現在ではリラクゼーショナルなムードを持った音楽全般を指すものになっていますが、90年代初頭は単なるリラックス、クールダウンさせる音楽ではなく、レイヴの狂乱と並行して存在する仮想世界へのトリップを促すサイケデリック〜スピリチュアル・ミュージックとしての側面が強かったのだろうと思います。下の動画は、Atlantisのほか、Silence (Pete Namlook and Dr. Atmo)、Aphex Twin、The Orbらの曲を収録した、ベルリンのヴィデオ・レーベルStud!o K7の映像作品「3 Lux-3」。


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[related] 3 Lux-3 - A Journey Through Ambience (1993)

2018年10月7日日曜日

[222] Bartosz Kruczyński - Selected Media 2016-2018


Label: Emotional Response

Catalog#: ERS040
Format: Vinyl, LP, Album
Country: UK
Released: 2018

A1  I

A2  II
A3  III
A4  IV
A5  V
A6  VI
A7  VII
B1  VIII
B2  IX
B3  X
B4  XI
B5  XII
B6  XIII
B7  XIV
B8  XV

Earth TraxやPejzażの名義でディープハウス作品をコンスタントにリリースする一方で、「Baltic Beat」以降は影を潜めていたBartosz Kruczyński(バルトシュ・クルシェンスキ)のクワイエット・サイド。実際は、この数年間ポーランドの国営テレビ局Telewizja Polska SAの芸術・映画・文化専門チャンネルTVP Kulturaのサウンド・デザインに従事していたといい、そのコラボレイティヴ・ワークスの中から選ばれた15曲が、英Emotional Responseから新作アルバムとしてリリースされることがアナウンスされています。レーベルによると、これらの曲はフリー・アーティスティック・ライセンスのもとで管理され、これまでMagdalena Abakanowicz(マグダレーナ・アバカノヴィッチ)、Miroslaw Balka(ミロスワフ・バウカ)、Tadeusz Kantor(タデウシュ・カンター)、Enrico Prampolini(エンリコ・プランポリーニ)、Ai Weiwei(アイ・ウェイウェイ)、Monica Bonvicini(モニカ・ボンヴィチーニ)といった国内外の現代美術家のためのプログラミングに採用されたとのこと。「Baltic Beat」や「Schleißen 2」にも通じる木管楽器アレンジによるミニマル・ミュージックから、第四世界音楽、アトモスフェリックなダブテクノまで、彼がメディアの裏方として手掛けてきたアンビエント・ワークスの集成としてとても楽しみな一枚です。リリース予定日は11月26日。


Emotional Response is delighted to present a special project, a collection of music from Bartosz Kruczynski, recorded for "Selected Media" and presented here as a time-piece of his continuing works. Initially known as one half of sample based project Ptaki (The Very Polish Cut Outs / Transatlantyk), Kruczynski first appeared for Emotional Response as The Phantom for the first series of SchleiBen in 2015. Featuring two works of deep 'fourth world' sounds, they highlighted a shift to more mellow, synthetic and hazy compositions. His break out came, however, when he explored this sound further on his eponymous album Baltic Beat, for the acclaimed Growing Bin Records. This has been augmented with the recent club based music as one half of the wonderful Earth Trax (Rhythm Section International / Phonica Records) project. Here though, Kruczynski returns to the ambient and ethereal - plus a touch of dub techno - to showcase his expansive collaborative work with Polish studio, TVP Culture. Given free artistic license, the 15 'short form' recordings included here were for programming, in the main, on modern Polish Art including the likes of Magdalena Abakanowicz, Miroslaw Balka and Tadeusz Kantor, as well as some international aspects for Enrico Prampolini, Ai Weiwei and Monica Bonvicini. Taken from over 70 episodes the material included recollects imagery, video and memory to present a series of short vignettes that together create one whole. Minimal and hazy ambience (V, VII, VIII, XI, XII) envisages classic melodies and chords and is accompanied by further 'fourth world' pieces (I, II, III, VII, X) that present an oeuvre that is recognisably the music of Kruczynski, while remaining fresh and perfectly meditative. A counter can be found in the atmospheric dub works (IV, IX, XIV) that hint at echo chamber environs to get infinitely lost in. As an album then, "Selected Media" can be heard as a snapshot to Kruczynski's music journey, a meeting of art and music that is oft overlooked but very much essential.


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2018年10月3日水曜日

[221] Nils-Aslak Valkeapää & Esa Kotilainen - Eanan, Eallima Eadni


Label: DAT
Catalog#: DAT CD-5
Format: CD, Album
Country: Norway
Released: 1989
DISCOGS

1  Eanan, Eallima Eadni  30:02

2  Beaivái, Beaivvi Guvlui  31:37

フィンランドの電子音楽〜アンビエント史を振り返る上で最も重要な音楽家のひとりであり、現在も自国の環境にインスパイアされた作品を発表し続けている鬼才作曲家・鍵盤奏者Esa Kotilainen(エサ・コティライネン)と、2001年に死去したサーミの英雄的詩人Nils-Aslak Valkeapää(ニルス=アスラク・ヴァルケアパー)の共作アルバム。古くは1860年代から1930年代にかけて撮影されたサーミの歴史的資料を含むヴァルケアパーの詩集「Beaivi, Áhcážan」(91年北欧理事会文学賞受賞:タイトルは「太陽、父」の意)のための音楽として、詩集発刊の翌年、89年にサーミ芸術専門の出版社DATから発表されました。

サーミとは、スカンジナビア半島北部からコラ半島に広がるラップランド地方で、ツンドラの大地を季節ごとに移動し、トナカイを追って暮らしてきた先住民族。その土地の精霊・シャーマニズム信仰を背景に、自然界と交信するための道具・方法として古くから伝承されてきたのが、この作品の中でヴァルケアパーが歌う「ヨイク」。現代まで残る伝統歌謡としてはヨーロッパ最古とも言われるヨイクですが、キリスト教の介入によりサーミ古来の信仰が弾圧された時期、ヨイクを公の場で歌うことは処罰の対象とされていたため、60年代までは衰退の一途を辿ったそうです。しかし、60年代以降、サーミ文化復興運動の高まりとともにヨイクは再興。ヴァルケアパーがクラシックの作曲家らと共作した68年のデビュー作「Joikuja」が、伝統と現代を融合した新しいヨイクの指針となり、70年代以降も前衛ジャズのサックス奏者Seppo Paakkunainen(セッポ・パーックナイネン)やコティライネンらの協力を得て、さらに斬新なアプローチによるレコーディング作品を発表しました。94年にノルウェーで開催されたリレハンメル冬季オリンピック(オリンピック運動における環境保護・自然との共生の重要性を呼びかけた大会)の開会式で彼が披露したヨイクの歌声は、多くのサーミ人に勇気と希望を与えるものであったといいます。
本作に収録された2曲「地球、生命の母」「太陽へ、太陽の方へ」は、どちらも30分を超える長大曲。海鳥の鳴き声、波の音、コティライネンが操るシンセサイザーの温かみのあるアンビエント・サウンドと、ヴァルケアパーの深奥なる歌声。録音が行われたのはヘルシンキのスタジオで、フィールドレコーディング音源は海のイメージを誘起させるものとして導入されていますが、ヨイクが森羅万象の生命との仲立ち役であると考えるのなら、海に留まらずあらゆる自然環境・霊性と目に見えない次元で共演・交感した作品と捉えることもできます。人間と大地、大地と宇宙を等しく結ぶ、サーミ固有の環境音楽、もしくは高次フォークロア音楽と呼びうる傑作です。

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Nils-Aslak Valkeapää, Johan Anders Bær, Seppo Paakkunainen & Esa Kotilainen
Dálveleaikkat - Wintergames (DAT, 1994)

 Esa Kotilainen - Jäänalainen II (2018)