2016年5月19日木曜日

[045] Seigen Ono - Seigén


Label: Innovative Communication

Catalog#: KS 80.049
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Germany
Released: 1985
DISCOGS  AMAZON

A1 Manhattan 14:37

A2 Model-93 4:16
A3 Waterfront 2:48
B1 Mallets 4:57
B2 Shikaruni Pt. 1 9:04
B3 5/8 RP 3:06
B4 Suimen-Jo Niwa 4:33

サウンド・プロセス・デザイン「波の記譜法」、ミサワホーム総合研究所「サウンドスケープ」、ポニー「AXIS サウンド・リフレッシュ」をはじめとした、空間デザインや風景として機能する音楽が広いリスナー層に浸透しはじめた80年代中頃。ビクター音楽産業の「音のインテリア」シリーズ第1弾タイトルとして、84年にリリースされた作曲家・録音エンジニア=小野誠彦による初のリーダー作。絵画やオブジェのように生活に溶け込むビデオ・インテリアとして、当時の高画質・高音質メディア=VHDで同時販売された映像作品「マンハッタン」のサウンドトラックを兼ねて制作されたもの。各曲に優れた作曲家・プレーヤーを迎え、小野氏は作曲/演奏のほか、プロデューサー/ミキサーとしてもアルバム全体の指揮をとっています。笹路正徳作曲のピアノ・ナンバー "Manhattan" 、近年多方面のDJミックスにセレクトされた渡辺モリオ・山本秀夫・小野誠彦の3人によるパーカッション・アンサンブル "Mallets" 、清水靖晃作・編曲のストリングス・アンサンブル "Shikaruni Pt. 1" など、
ライヒやグラスのミニマル音楽のフォームを主軸とした鮮鋭なサウンド。VHD「マンハッタン」では、光と影の推移を淡々と捉えたダイナミックな映像とともに、都市の躍動感〜刺激過多時代の一片の長閑さ・孤独感といった動静のコントラストを描いています。爽やかな海のカバーは、翌85年にKlaus Schulze(クラウス・シュルツェ)主宰のICレーベルよりライセンス・リリースされた独盤。カセットのみに収録されていた「雲の速度」「マンハッタン: ピアノ・ソロ」に加え、2曲のボーナスを収録したCDが、6月にビクターエンタテインメントより32年ぶりにリイシュー。


「MANHATTAN」 (1984, Victor: Video Interior Series) directored by Shigeru Uchida & Koichi Inakoshi



2016年5月17日火曜日

[044] Osso Exótico - III


Label: Carbo Records

Catalog#: CR003
Format: CD, Album
Country: Portugal
Released: 1992
DISCOGS

1 Detendeur 4:44

2 Untitled 3:53
3 Untitled 4:33
4 Untitled 11:36
5 Untitled 7:04
6 Untitled 4:12
7 Untitled 3:33
8 Untitled 7:42
9 À Medida (...) 3:12

89年に
ポルトガルで結成された実験音楽アンサンブル=Osso Exótico(オッソ・エクゾティコ)。初期メンバーは建築・彫刻・音響の分野で活動するサウンドアーティストDavid Maranha(デヴィッド・マランハ)を中心に、弟André Maranha(アンドレ・マランハ)、後にビデオクリップやドキュメンタリーなど映像制作の道に進むAntónio Forte(アントニオ・フォルチ)、シンガーソングライターとして分派するBernardo Devlin(ベルナルド・デブリン)の4人。90年、Vítor Rua(ヴィトル・フア)をプロデューサーに迎え、ロックフィル構造研究機関内の地盤学試験室で録音した初作「I」を発表。
当初はポエトリーやノイズの要素が濃く、Current 93やNWWといったUKノイズ/インダストリアルが引き合いに出される奇怪なサウンドでしたが、フォルチとデブリンがグループを離れ、Patricia Machás(パトリシア・マチャス)が新たに参加するなど、作品毎に流動的に編成を変えながら、徹底してアコースティック楽器によるミニマルな音響/ドローンを追求していきます。
92年8月にリスボンで録音、自主レーベルから発表した3作目が本作「III」。中東の水煙管・ナーギレの奇妙な音に囁くようなポエトリー・吐息が聞こえる弟アンドレ作、ガラス瓶の笛・パンパイプ・チベットホルンの掠れや唸りにシロフォンのアルコ奏法が重なるデブリン作、カリンバやレインスティックの音粒から弦の不安定なトレモロへ移ろう兄デヴィッド作など。いずれも楽器をコンテクストから切り離して、響きの木理や質感のみを写し取るような手法。おそらくスコアは使わずに、曲毎に作曲者のアイデアをもとに各者の役割を決め、半ば即興的に録音したものと見られます。粗織りの布地に印字された「passivo em madefacção(湿される)」、CDのラベル面の「demorar a voz de muito perto, bafo sobre vidro da boémia(ボヘミアンガラスのそばに、いつまでも息が残る)」は、この作品の鍵となる「ガラス/息」「水煙管/水音」に関係した弟アンドレによる詩句。簡素枯淡の佇まいとラディカルな空白感は、ボヘミアの音楽家夫妻Irena & Vojtěch Havelに近い志向を感じさせます。

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2016年5月15日日曜日

[043] Mixmaster Morris - Ambient Classics Mix


Tribute To: Ambient Classics Mix

レッドブル・ミュージック・アカデミーの特集記事「Ambient House: The Story of Chill Out Music, 1988-1995」(2016年2月)と連動して、ウェブラジオRBMA Radioのプログラム「Tribute To」で放送された、チルアウト・アンビエント史の長老格 Mixmaster Morris(ミックスマスター・モリス)によるアンビエント・クラシックス・ミックス。

Although he’s often referred to as the “Godfather of Chillout”, that lofty title doesn’t come close to encapsulating Morris Gould’s extensive body of work. His work as a DJ dates back to 1985, where he was on the team at London pirate radio station Network 21 – it was the station manager who suggested he take the name Mixmaster Morris. He was also involved with KISS FM during its early days as a pirate outlet, and in 1987, Gould adopted another moniker, The Irresistible Force, and issued a number of singles before the project’s 1992 debut full-length Flying High caught fire with its relaxed rhythms. The album, along with 1994’s Global Chillage, continues to be regarded as one of the touchstone ambient LPs today. He’s also been responsible for a number of highly regarded mix CDs over the years, including The Morning After (1997) and Abstract Funk Theory (2000). Gould also turned out a classic remix of Coldcut’s seminal Autumn Leaves track, made a collaborative album with Jonah Sharp and Haruomi Hosono of Yellow Magic Orchestra, helped found The Big Chill festival and also ran a multitude of DJ nights and residencies. Even now, more than 30 years into his career, he continues to play all over the world.

[042] Orior - Strange Beauty


Label: DDS
Catalog#: DDS017
Format: Vinyl, LP, Album
Country: UK
Released: 2016
DISCOGS

A1 Larbico 7:45

A2 Hollow V2 1:21
A3 Earth Rhythm 4:33
B1 Hollow V3 1:48
B2 Dust Glow 6:19
B3 The Other Side 2:41
C1 Call 5:43
C2 EOS 3:41
C3 Hollow V1 3:07
D1 From View 4:26
D2 C5Particle 1:04
D3 MA 5:06

英国出身のマルチ奏者Clip=Jeff Sharp(ジェフ・シャープ)と、Snatch Tapes主宰の実験音楽家Phil Sanderson(フィル・サンダーソン)により70年代後期に結成、後にClipのソロ・レコーディング・プロジェクトとして続行したポストパンク・ユニットOrior(オリオル:ラテン語で現れる、生まれるの意)。79年から83年にかけてロンドン周辺〜サウス・イーストのスタジオで録音されるも、長い間埋もれたままになっていた未発表音源が、彼らの唯一作「Elevation EP」に多大な影響を受けたという
Demdike Stare(デムダイク・ステア)の手により、ファースト・アルバムとしてリリース。Craig LeonやBruce Gilbertを彷彿とさせるプリミティヴな音響/リズムの骨幹。幻妖な暗霧をまとうメランコリックなアンビエント・ウェイヴ。


70年代後期、ロンドンにあったジェイムズ・アスマンズ・レコードストアで、Clip=ジェフ・シャープとフィル・サンダーソンの交流が生まれたことから始まった。79年の終わり、「Elevation EP」がリリースされた。フィルと私は定期的に音楽制作をしていたが、ほとんどスタジオ録音を試みなかった。結果として、ライブやリハーサルで演奏した楽曲は、「Elevation EP」の他にレコードにならなかった。その後私達が録音したいくつかの楽曲をうち、1つはガジェットLPに(訳注:パソコン上のアルバム1枚分のストックのことと思われる)、残りの2つはこのレコードに収録したいと思った。オリオルは決して分裂したわけではなく、むしろ私達のそれぞれの道で続いた。フィルはバイオレット・サーキットというバンドで活動を始め、私はこのアルバムにある曲を録音した。私達2人を代表して述べるなら、少なくとももう一枚のアルバムをフィルと一緒にリリースしたいと思っている。素晴らしい物語に相応しい締めくくりとして。 - ジェフ・シャープ


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[related]

現在形の先鋭アーティストを紹介するウェブ・ジャーナル「Secret Thirteen」のミクスト・コンピレーション・シリーズより。Miles Whittaker(マイルス・ウィッテカー)とSean Canty(ショーン・キャンティ)によるUKインダストリアル/テクノ・プロジェクトDemdike Stare(デムダイク・ステア)が提供した2013年8月の83番。実験音楽の過去と現代を自在に結わく70分のディープ・ミックス。



2016年4月4日月曜日

[041.1] mar

3月のリスニングから
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Andreas Martin - Doppelpunkt Vor Ort (Robot Records, 1993)
listen Bärenluder
ビザール音響グループH.N.A.S.のメンバーとして、弟Christoph Heemann(クリストフ・ヒーマン)と共に80年代初期から活動する独アーヘン生まれのギタリストAndreas Martin(アンドレアス・マルティン)。H.N.A.S.解散後、The Legendary Pink DotsのメンバーやJim O'Rourkeを交え、Mimir(ミーミル)として活動していた93年に、米Robot Recordsから初のソロ作としてリリースされた10吋盤。もう1枚のソロ作である「Live im Loft」(CDR収録のライブ動画がJon Whitneyのチャンネルで公開されている。)では、Michael Hedgesをはじめとした米ニューエイジ・ギタリストの楽曲を取り上げ、両手タッピングやハーモニクスを多用した技巧的なプレイを見せているが、今作ではその土臭いルーツを匂わせつつも清々しいギターフレーズの反復を主軸に、クラウトロックに通底するトリップ感に満ちた音像を組み上げている。長い活動歴とこの音楽性でソロ2枚はあまりに寡作。

Michel Banabila - Changing Sceneries (1989)
listen Zoom
80年代後期から90年代初期にかけて録音された3作「The Lost Drones Tape」「Harmonium/Piano」「Changing Sceneries」が、昨秋にバンドキャンプ上のディスコグラフィに加えられ、また、今年に入りChiの唯一作がダブテクノのレーベルからヴァイナル化されたりと、現在の作曲活動と並行して、初期作への再評価に応じた動きを見せていたオランダのベテラン・サウンドアーティストMichel Banabila(ミシェル・バナビラ)。複数のレーベルがリイシューを申し出たという初作「Marilli」に関しては、Chiのメンバーをはじめとしたリミックス集「Marilli Remixed」を発表するかわりに、リイシューの可能性はきっぱりと否定していた。その経緯もあって、3月頭にアナウンスされた「Early Works」は、少し意表を突かれるような嬉しいニュースだった。この89年作「Changing Sceneries」は、英独アンビエントからの影響や民族的志向を窺わせつつ、自身のピアノやハーモニウムによるメランコリックな旋律が前面に現れたアルバムで、リリースページには「New Age.」と添えられている。レコーディングに参加したギタリストOscar Peterseの元にあったカセットから起こされたデジタル版。

Michel Banabila - Gardening (Tapu Records, 2012)
listen Changing Weather
ャズ・クラシカル・電子音楽・エレクトロアコースティックなど広範にわたるフォームを掛け合わせ、映画・ドキュメンタリー・演劇などのスコアを手掛けてきたBanabila。民族的要素は長いキャリアを通じて基柱の一つになっている。Eno/ByrneやJon Hassellなどに触発された初期ニューウェイヴ・エスノの民族性が、太鼓・笛・ゴングなどの楽器の音色や抑揚といった音楽的な要素で成り立っていたとすれば、近年のエレクトロアコースティック作「Gardening」では、風・火・土・水のテクスチャの擬態や、木の棒で穀物を突いたり、畑を耕したりする人の動力(労働力)のリズムにフォーカスし、自然と協和する民の精気そのものを抽出するようなミニマムな解釈に迫っている。

Reinhold Friedl - Golden Quinces, Earthed For Spatialised Neo-Bechstein (Bocian Records, 2015)
listen
CageやStockhausenといった現代音楽楽曲をはじめ、Lou Reed「Metal Machine Music」、Manuel Göttsching「E2-E4」など再演、数多くのコラボレーションを果たしている独アンサンブルZeitkratzer(ツァィトクラッツァー)。そのリーダーであるReinhold Friedl(ラインホルト・フリードル)は、主にプレパレーションを施したピアノの内部奏法で知られる異能作曲家。ポーランドの実験音楽レーベルBocianから昨年リリースされた本作は、1920年代の終わりに開発された世界初の打弦式電気ピアノ「ネオ・ベヒシュタイン」を使った作品。振動を減退させるための響板を持たないこのピアノの特性に、2003年頃からピックアップの修正やEQ設定、スピーカーの配列など、ライブ演奏のために重ねてきた試みを集約した56分1トラック。ハムバッカーのピックアップで拾った弦の音を増幅・電子変調したドローンは、ピアノとはにわかに信じ難い、巨大な金属板を叩いたり擦ったりするような硬質な感触で、目が眩むような光を放射したり得体の知れない混沌とした音塊へ形を変えてゆく。


Yui Onodera & Vadim Bondarenko - Cloudscapes (Serein, 2015)
listen
Brian Enoの70年代のスケッチによると、アンビエント・シリーズは当初イマテリアル(重要ではない・取るに足らない)レコーズとして構想され、「空港のための音楽」に続く作品として「治癒のための音楽」というタイトルが候補になっていたという。実際に発表されたのはEno/Budd「鏡面界」で、「治癒/ヒーリング」は彼のリスナーから忌避されることになる。でも、アンビエント・シリーズは非スピリチュアル・無信仰の音楽ではなく、作者の生死観(「空港のための音楽」は死に備えられたものだった)や浄化のイメージが微かに投影され、どこか境界地域上に浮かぶ冥界の、ガラスのように張りつめた静けさを醸出する透明なエキゾとして響く。「Cloudscapes」の美しいカバーイメージは、そのような雲の領土をさらに上から写した地形図のよう。東京を拠点に建築音響設計に従事するサウンドデザイナーYui Onodera(小野寺唯)と、ロシア・オペラ/バレエのマリインスキー劇場管弦楽団に属するクラリネット/ピアノ奏者Vadim Bondarenko(ワジム・ボンダレンコ)のコラボレーション。


NTS Radio - Lee Gamble (Tom Scott Guest Mix)
listen
バーミンガム出身、現在はロンドンを拠点に活動するエレクトロニック・ミュージックのコンポーザー/DJ=Lee Gamble(リー・ギャンブル)がホストを務めるNTS Radioのマンスリー・プログラム。3月16日の放送回は、Gambleの友人であり、自主レーベルSkireからAndrew Chalkとの共作を発表している英音響作家Tom James Scottが、チベットやイランの伝統音楽、現代音楽からインダストリアルまで、ミスティックなゲストミックスを提供。オープニング(2:00-)の幻想的なトラックは、Scottの12年ソロ作「Crystal」収録の "Lown" 。