2017年1月16日月曜日

[106] The Residents - Eskimo


Label: Ralph Records

Catalog#: ESK 7906
Format: Vinyl, LP, Album
Country: US
Released: 1979
DISCOGS

A1 The Walrus Hunt 4:01

A2 Birth 4:32
A3 Arctic Hysteria 5:57
A4 The Angry Angakok 5:19
B1 A Spirit Steals A Child 8:42
B2 The Festival Of Death 10:29

グリーンランド北方に北極圏内、北極点周辺の氷の上に、エスキモーとして知られるモンゴル族子孫の遊牧民族が暮らしていた。彼らの文化は冒険談や儀式音楽の中に幾世代にも渡り引き継がれてきた。このアルバムはエスキモーの儀式音楽だけでなく、彼らが生存していくための暮らしぶりをエスキモーの物語を通じて再現しょうと試みている。レコードでは物語が純粋に音だけで語られていくが、このユニークな文化の鑑賞を手助けするための解説文が用意されている。最大限に楽しむには、中の解説を読みながらこのレコードをヘッドフォンで聴くこと。このレコードを最初から最後まで通してかけること。気持ちをリラックスさせて聴くことが不可欠。そして暖かい衣類か毛布を手の届くところに用意すること。


...



[related]

The Residents Official Site - Eskimo

2017年1月15日日曜日

[105] Kon Teifi


Label: Coracle Audio Documents
Catalog#: COR001
Format: Cassette, Album
Country: UK
Released: 1974/2015
DISCOGS

A Untitled 19:24

B Untitled 19:11

ウェールズのテイフィ川沿い、ストラータ・フロリダの泥炭沼地の地中深くから発見された一体の木像。造形からポリネシア製と思われたが、なぜウェールズに人が住みはじめた先史時代の地層に眠っていたのかが大きな謎だった。研究が進むにつれて「古代ウェールズはポリネシア人が移住し開拓したのではないか」という推論が導きだされ、それを裏付けるいくつかの具体的な証拠が提示された。1つ目は、南太平洋ニウエの伝統楽器ログハープ(logo tellie)とウェリッシュハープ(telyn)が、言語的にも音楽学的にも同じ起源から派生したこと。2つ目は、フィジーとウェールズの伝統的住居の構造が似ていること。3つ目は、イギリスやアイルランドの河川で使われていたコラクル(籠舟)が、ポリネシアからウェールズまでを航海するための条件を満たしていたこと。テイフィ川は、何千年も前にポリネシア人が上陸した場所だった。ウェールズの歴史研究を根底から覆す古代のロマンに魅せられたある学者が、その航海を身をもって再現しようと、手製のコラクル=Kon Teifiをニウエに運び、18,000マイルの船旅を決行。1971年7月に出発し、南アメリカ東岸〜北アフリカ西岸に沿って大西洋を北上、1年2ヶ月後の72年9月にウェールズにたどり着き、その試みは成功に終わった。 2015年夏のある日、イギリスのレーベルTuluum Shimmering Recordingsに12本のカセットテープが入った箱が送られてきた。差出人の名前も返送先の住所も書かれておらず、テープを配布してほしいという旨のメッセージのみが記されていた。タイトルは「Kon Teifi」。それは44年前、古代の航路を旅した学者が、航海の間にNorelco製カセットレコーダーで現地録音した音声資料を、74年に自費出版したものだと分かった。


以上が「Kon Teifi」がリリースされるまでの経緯。ニウエの浜辺で録音されたという穏やかなギターの調べからはじまり、中継する島々で出会った民族音楽、海の上で学者自ら演奏したハープ、テイフィ河口で旅の到着を迎えるフルート、テイフィの奥深くの森に響く儀式的なドラムまで、旅のルート順に収録され、録音した地点を示す地図を掲載したリーフレットが付属しています。しかし、なぜ多重録音になっているのか。本当に小さな籠舟で18000マイルも旅することができたのか。そもそもポリネシア人起源説はどうなったのか、と色々な疑問が沸いてきますが、本作は架空の物語を創作した音楽作品であり、おそらくその仕掛人はレーベル主宰のJake Webster(ジェイク・ウェブスター)。

Jürgen MüllerUrsula BognerTim RobertsonMartin ZeichneteFlat Staticなど、架空の人物やプロジェクトを装い、彼らの発掘音源としてリリースされた作品は、単なるフェイクではなく、映画や小説と同様のフィクション形式とみることができ、それは音楽の新しい表現手法として近年確立されつつあるのかもしれません。ハープが物語と音楽の鍵となっている本作の場合は、Todd Bartonが小説に登場する先住民族の音楽を創作した「ケシュの音楽」に近いアプローチ、フィールドワークの音声資料という設定よりも物語全体のサウンドトラック的な構成で、壮大な海の旅を素朴なタッチの空想民族音楽で演出しています。

...



[related]

microphones in the trees: kon teifi
Tuluum Shimmering Records: Audio Archaeology

2017年1月13日金曜日

[104] Roméo Poirier - Plage Arrière


Label: Kit Records

Catalog#: KR22
Format: Cassette, Album
Country: UK
Released: 2016

A1 Prioni 3:19

A2 Apella 5:16
A3 Atsipades 4:00
A4 Firiplaka 2:58
B1 Avlaki 3:19
B2 Kyra Panagia 4:17
B3 Alogomandra 3:38
B4 Sarakiniko 4:52

WunderやPacific 231を思わせるラウンジ/イージーリスニング的ムードのフレーズループと、プツプツと泡が弾けるようなアナログな質感のクリック、そこかしこに挿入される水の音。写真家でありスイミングプールのライフガードの顔をもつ、フランス出身ブリュッセル在住の音楽家Roméo Poirier(ホメオ・ポイリエ)が、Swim Platførm(スイム・プラットフォーム)名義のEPに続いて、UKのレーベルKit Recordsから発表したデビューアルバム。ギリシャ・エーゲ海に浮かぶ島々のビーチを巡る船旅をテーマにしたサブアクアティック・リゾート・ミュージック。


French photographer, musician and lifeguard Roméo Poirier (formerly known as Swim Platførm) appears for his debut album, Plage Arrière, a deep sea meditation on a constellation of Greek beaches across three islands. Trumpets, echo-clicks and Harold Budd-esque shimmer piano whirl together on these seductive scapes, which recall the sub-aqeaous ambitions of Jürgen Müller or Sebastian Palomar.

'Atsipades' is a keepsake from the song's namesake beach, on western Crete. Roméo writes, 'on the back of a boat, leaving an island. We can see a pool, but that is empty and covered by a net. People looking into distance. A man walks across the platform, hand moving towards his mouth. Maybe he is drinking a café frappé. During his time on the island he was drinking it every day. Now, on the journey back home, that café frappé represents a souvenir of the beach. In it there is water (sea), coffee (sand) and ice cubes (rocks).'  

...



2017年1月9日月曜日

[103] Llorenç Barber - Linguopharincampanology


Label: Hyades Arts
Catalog#: hyCD-19
Format: CD, Album
Country: Spain
Released: 1994

1 Cantinela 8:38
2 Manjar 38:41
3 Lingua Ludens 16:28

1960年代以前のスペインで、人々の誕生と死、祭りなどを告げるための通信手段として使われていた教会の鐘。孤立した村々では、その目的によって固有の「鐘の言語」が存在したといいます。バレンシア出身のLlorenç Barber(リュレンツ・バルベー)は、人類学者Frances Llop(フランセス・リヨップ)と共同で鐘の伝統的な鳴鐘法を研究、それを再構成し、街中すべての教会の鐘を交響させる大規模な作曲に取り組んだ作曲家/音楽学者。フォークロアに基づく「環境の音楽」として展開された市民コンサート・プロジェクトと並行して、屋内空間で行われていたソロ・パフォーマンスが「リンゴファランカンパノロジー」。この呼び名は、Linguo(言語)とCampanology(鐘学・鋳鐘術・鳴鐘術)を組み合わせた作者自身の造語とみられます。本作に収められている3曲は、バルベーが70年代から近年まで活動拠点としていたマドリッド市内にあるギャラリーCRUCEで録音されたもの。木製ラックに吊り下げられた16の鐘。調律の精度もサイズも個々で異なるその鐘を「鐘の言語」に基づいて打ち鳴らし、口腔で共鳴させ、ホーミーに似たハーモニック・ボイスを発する。鐘と声の倍音をコントロールしつつ、建物内の反響による複雑なリズムや予測不能なエフェクトを招きながら、金属・肉体・空間が浸食しあう響きの迷宮を作り上げています。この創作楽器は、薪ストーブの煙突を探していた時に、ある工房で発見したという小さな鉄製皿(ストーブの熱水を受けるため部品)が元になり、当初は1枚の皿のみを使った演奏からはじまり、持ち運びのできる組み鐘へ発展したとのこと。ライナーノーツでは、バルベーを「バルセロナのCarles Santos(カルレス・サントス)と並び、スペインにおけるミニマル音楽の最重要作曲家の1人」と紹介。Hyades Artsレーベルのカタログでは、Francisco López(フランシスコ・ロペス)、Suso Sáiz(スーソ・サイス)、Iury Lech(ユーリ・レッヒ)らサウンドアート〜実験音響探究の先覚者として大きな存在感を放っています。

...


[related]
Concierto Para Campanarios Y Espadañas De La Ciudad De Granada
(Hyades Arts, 1992)

Taller De Música Mundana ‎– Música Con Papel (1986) 

2017年1月3日火曜日

[102.1] dec

12月のリスニングから
...

C Duncan - The Midnight Sun (FatCat Records, 2016)
listen Do I Hear
この作曲家らしいメロディだと思いながら聴き耽っていた「EP」収録の "Pearly-Dewdrops' Drops" は、実はCocteau Twinsのカバー曲だった。幻想的な音楽性を構成するクラシック以外のルーツを明かしてくれるような選曲だと思う。C DuncanことChristopher Duncan(クリストファー・ダンカン)は、彼らと同じスコットランド・グラスゴー出身の作曲家/画家。ソフトサイケ色を帯びた田園フォークと、フォーレやラヴェルといった作曲家に喩えられるコーラル的和声が融和された、深く甘い針葉の香りを放つ独特のサウンド。TVドラマ「トワイライトゾーン」のシーズン3にインスパイアされたという新作でも基本は変わらず、牧歌性が少し後退するかわりに幻想的なスケールをさらに押し広げている。今もっとも好きなシンガーソングライターのひとり。

Port St. Willow ‎- Syncope (People Teeth/flau, 2016)
C Duncan同様に、Grizzly Bearや後期Talk Talkが引き合いに出されていた作品。即興によるフリーフォームで実験的なセクションに比重が置かれ、ダウントーンの密室空間にファルセットが舞い漂う幻想耽美なサウンドが展開される。Port St. Willow(ポート・セント・ウィロー)は、ポートランド出身で現在NYブルックリンを拠点に活動するNicholas Principe(ニコラス・プリンシペ)によるソロ・プロジェクト。エンジニアのVictor Nash(ヴィクター・ナッシュ)がフレンチホルンとトランペット、他にアルトサックスやピアノでゲストを迎えているが、この統制されたバンドアンサンブルの骨格はマルチ・インストゥルメンタリストであるプリンシプ自身が演じている。2015年にプライベートレーベルPeople Teethからヴァイナル、年を跨いで東京のレーベルflauからボーナストラックを含むCDがリリース。昨年末いろいろな方のベストディスクに選ばれていたことも納得だった。

Gaspar Claus & Casper Clausen - Claus & Clausen (L'autre Distribution, 2016)
listen Channel
Arthur Russellを彷彿とさせるエコーと静寂、空間を震わすチェロと声の霊舞。フラメンコ・ギタリストPedro Soler(ペドロ・ソレール)を父にもつフランス人チェロ奏者Gaspar Claus(ギャスパー・クラウス)と、コペンハーゲンのオーケストラル・ポストロック・バンドEfterklangのメンバーとして活動してきたヴォーカリストCasper Clausen(キャスパー・クラウセン)。名前のスペルがよく似ているが、それぞれの祖父が1954年の初めにリスボンの同じ場所に居合わせていて、彼ら自身も10代の頃に同じ住居で顔を合わせずに1週間過ごしたことがあり、これまで何度も同じ場所ですれ違っていたという。2人が出会ったのは、共通の友人である映像作家Vincent Moon(ヴィンセント・ムーン)が、2014年12月にリオデジャネイロで見た奇妙な夢がきっかけに。「2人の老人がほとんど並行した長い道を歩いていて、その道が合流する地点でもうひとりの男が立っていた……」老人がポルトガルを話していたことからリスボンだと確信。クラウスとクラウセンにその予言的な夢の内容が告げられ、2015年2月に3人はリスボンに集まりこのアルバムを4日間で録音させた。幾多の偶然の物語を引き寄せたVincent Moonは、本作の影の脚本家だと思う。

Hiele - Saints OST (Ekster, 2016)
初代フランス皇帝ナポレオン幽閉の地として知られ、世界一孤立した有人島としてギネスに登録されるイギリス領の火山島・セントヘレナ。広大な南太西洋に浮かぶこの島に行くためには、南アフリカ・ケープタウンから3週間おきに運行される郵便船に乗るほか手段はなかった。しかし、セントヘレナ空港が開港すれば、片道5日間かかっていた距離を5時間で移動できるようになるという。新たな空路を活用し、絶海の孤島をエコツーリズムの楽園に変え、観光客を獲得しようとする外国人投資家と英国政府。島の在り方や住民の生活が大きく変わろうとしているセントヘレナを映した、Dieter Deswarte(ディター・デスワルト)監督によるドキュメンタリー映画「Saints」のために、ベルギーの作曲家Roman Hiele(ローマン・ヒール)が制作したサウンドトラック。クラリネットやダブルベースに、アルモニカやハンドパンに似たやわらかな響きを主調とした、Laurence Craneの新作にも通じる簡素な室内・器楽曲と、Eksterらしいエキゾ感漂うレフトフィールドな電子音。全体で約18分。

Arden Day & Wysozky, Benjamin Tixier - Totems (Cairos Edition, 2014)
スイス・ロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞したSarah Arnold(サラ・アーノルド)監督による短編映画「Totems」のサウンドトラック。Arden Day(アーデン・デイ)はプリペアードピアノとハーディガーディに似た箱形楽器ボアタ・ボードンBenjamin Tixier(ベンジャミン・ティクシエ)はギターを演奏しWysozky(ヴィソツキー)がコンピューター・プロセッシング、録音アレンジ、ミックスを担当している。BABの発するぼんやりとした持続音の上を、ブリッジミュートしたギターと打楽器感の強いピアノが転がる "L'arrivée" や "Libération" のリズミックな耳心地。デイとヴィソツキーは、今月末にPenultimate Pressから初のヴァイナル作品「The Pancrace Project」をリリースする。

Phantom Posse - Be True (2016)
Phantom Posse(ファントム・ポッセ)は、NYブルックリンで活動するEric Littmann(エリック・リットマン)が、個人的な感情を投影したオーディオ日記として毎月EPをリリースしていたプロジェクトPhantom Powerが基本となり、そこに個性溢れるシンガーソングライターが集結したインディポップ・コレクティヴ。「Be True」は彼らが自主リリースした4枚目のアルバムで、スリーヴには11名のソングライターの名が記されている。1曲毎に作曲者兼リード・ヴォーカルが変わるヴォーカル曲と、その間にインタールード的に挿入されるインスト曲。各ソロ作品へ分岐する交差点の道標ともいうべきアルバムで、コレクティヴのフレンドリーな雰囲気が伝わってくるような素敵な作品だと思う。フェイヴァリット・トラックは、Nadia Hulett(ナディア・ヒュレット)が歌う "Carmela & Tone" と美しいアンビエント・シンセ "Stay True" 。Chris Masullo(クリス・マスロ)のソロ名義Nicholas Nicholas(ニコラス・ニコラス)の新作「About Town」も素晴らしい。