2018年12月21日金曜日

[234] Takao - Stealth


Label: EM Records

Catalog#: EM1180CD
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2018
DISCOGS

1  Stealth  2:28

2  Water Music  3:23
3  Boat  4:26
4  Matsura  1:17
5  Ama Nita  2:31
6  Trode  1:54
7  Crystal Tunnel  1:49
8  Bird Ensemble  2:39
9  Ce La  2:36
10  Wet Dry World  1:44
11  Secret Town  2:29
12  Song of Time  1:47
13  Sweet Dreams  4:11

何よりも鮮烈なエレクトロ・アコースティック・コンポジション。ネット空間に生成された音楽土壌に育まれた新世代の才能、Takaoが発表する脅威のデビュー・アルバム。濱瀬元彦、武満徹、新津章夫、ヤン富田、Sean McCann等々に影響を受けたと率直に語るタカオだが、これら先達に新旧有名無名の区別はなく、ただアクセスした特定の作品が作家の創作意欲を突き動かしたのみで、そこから得たインスピレーションを衒いなく定着させたのがこの『Stealth』だ。ゆえに『ステルス』は作曲の楽しさと想像性に溢れ、心地よい美しさと、聴き込めば現れる意想外の深さが同居している点で近年まれに見る(感じる)存在感をもつ。1年半かけて仕上げたという『Stealth』は13曲で33分(!)この流儀の作風にしては異端的な短さで、なおかつひとつとして同じ体裁の曲がないにもかかわらず、シームレスな環境音楽的体験ができる。それは装丁にあるような晴れた日の海の表情を映し出しているかのようだ(※写真はTakao自身が湘南で撮影したもの)。控えめだがこだわり抜いたタカオの音感覚にも注目。この末恐ろしい才能には今後も目が離せない。


“Stealth” is certainly an apt title for this disarming collection of crypto-New Age. From its opening, one might be forgiven for assuming that what follows is a tableau of digital disruption, and noise in one of its less offensive iterations. However, Takao instead presents a rich and detailed tapestry of compositions that take New Age affectations, fashioning them into something far grander. There’s a penchant for the naïve, the more garish of digital instruments in the vein of James Ferraro – but importantly, Takao steers away from submitting to gestures themselves naïve or garish, opting instead to focus attention to a more nuanced, delicate style. Indeed, a more intrinsic tradition to posit “Stealth” as an inheritor of would be the Impressionism of Debussy, or even Satie, with Takao’s approach drawing light and composure from his instruments at their most bare and unadorned. Ever so pleasing and atmospheric, “Stealth” is remarkably affecting in its subtlety. - Nico Niquo


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2018年12月19日水曜日

[233] Andrew Wasylyk - Themes For Buildings And Spaces


Label: Tape Club Records

Catalog#: TAPCLB083V
Format: Vinyl, 10", Album
Country: UK
Released: 2017
DISCOGS

A1  Drift  3:01

A2  Under High Blue Skies  2:19
A3  Via Crucis  2:22
A4  Ghosts Of Park Place  2:34
B1  Come The Autumn  3:13
B2  Lower Dens Works  2:52
B3  Menzieshill  2:11
B4  The Howff  2:49

The Hazey JanesやIdlewildといったインディロック・グループのヴォーカリストとしても活動するスコットランド在住の音楽家Andrew Mitchell(アンドリュー・ミッチェル)によるソロ・プロジェクトAndrew Wasylyk(アンドリュー・ワシライク)の2作目となる10インチ盤。「建築物と広場のためのテーマ」というタイトルからも窺えるように、彼の生まれ故郷である港町=ダンディーに存在する8つのランドマークから着想を得たというもので、戦後何十年にも渡って大きく変化し続けてきた都市風景を記憶・空想とともに巡る、ノスタルジックな空気に包まれた旅のサウンドトラックとなっています。厚みのあるサウンドを特徴付けているホーンセクションには、Rachel Simpson(Flugel Horn & Trumpet)とIain Robertson(Trombone & Euphonium)という2名のゲストプレーヤーが参加していますが、それ以外のギターやベース、鍵盤、エレクトロニクス、弦のアレンジメントといった全てのパートはミッチェル本人によるもの。Brian Eno、Robert Wyatt、David Sylvianら英国の巨匠や同郷のインディバンドの影を感じさせつつ、練り上げられた作曲・アレンジで自身の心深くにある古き時代の匂いや手触りを見事に表現した、傑作といってよい出来栄えです。待望の新作フルレングス「The Paralian」はエジンバラのレーベルAthens Of The Northより2019年2月リリース予定。


Andrew Wasylyk, the alias of Scottish writer, producer, multi-instrumentalist, Andrew Mitchell, invites the listener to explore his hometown of Dundee. Eight architectural sites and open spaces have inspired an album of instrumental compositions echoing the materials, the everyday use and the romanticised memories of a post-war cityscape continually shifting and evolving throughout the decades. From the emotive and hypnotic motifs in ode to Brutalism, “Under High Blue Skies”, the plaintive brass and piano work in “Drift”, “Lower Dens Works” prevailing percussion, harking back to Tayside’s Jute mill machinery ghosts, or the unnerving minimalism of “The Howff”; with “Themes For Buildings And Spaces”, Wasylyk soundtracks both the celebrated and the forgotten, the melancholic and the optimistic and asks the nostalgist in us all to consider an alternative view of the city of “Jute, Jam & Journalism”.


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2018年12月17日月曜日

[232] Max Folmer ‎- Omega


Label: Oreade Music

Catalog#: OR 2804
Format: CD, Album
Country: Netherlands
Released: 1989
DISCOGS

1  Vibrations (Part One)  20:40

2  Vibrations (Part Two)  20:41

特定の場所・空間に添えるための消極的聴取可能な音楽とその聴取方法として命名された「環境音楽」に対し、「ニューエイジ音楽」は消費文化や効率主義に抗おうとする都市生活者の内面に潤いと平静をもたらす穏やかなインストゥルメンタル・サウンド全般を指すマーケット用語でした。つまり、限定された様式を指すものでなく、ライト・クラシック調から民族調、ジャズ・フュージョン、シンセサイザーを使ったミニマル音楽まで、さまざまなタイプがあり、それらが大凡ファッション感覚で聴かれていたのだと思います。観葉植物や壁紙のように作用する環境音楽は、そのあり方から基本的に静かな作風のものが多かったために、元々のコンセプトだけでなく様式や演奏方法の典型(例えばオスティナート、ドローン)を包含し、思索や瞑想を誘起する音楽として、ニューエイジ音楽の様式の一つに取り入れられたと考えるなら、環境音楽もまたニューエイジの精神性やライフスタイルに近いニュアンスを帯びるようになったと想像できます。例えば「アンビエントな生活」という言葉は、特におかしな表現だと感じることなく、自身の内面や社会を静観する質実な暮らし振りを想像させるのではないでしょうか。

とはいえ、耳ざわりのよいニューエイジ音楽は、それ自体盛んに消費される結果になりました。作家性を抑えた控えめな音楽の作曲方法は、その反面、多くの似たような作品を生んだのでしょうか。または、その音楽のもつ、生活にそっと寄り添う存在の軽さが、音楽に対する「軽視」に繋がったと見るべきでしょうか。そのような静的で療養性をもった音楽は、後にヒーリング・ミュージックとして売られるようになり、ポップスを好む人々の耳にも丁度よく馴染むポップ系ヒーリング作品の需要は、「イマージュ」シリーズのような市場企画で応えられるようになった──と、ここまでくると「環境」から遠く拙紙の範疇ではなくなるような気がしますが、環境音楽と言うときにこういった「癒し」のイメージが離れないのも事実です。
この青緑色のうず潮のジャケットは、ヨーロッパでも指折りのニューエイジ音楽レーベルOreade Musicからの一作。やわらかなシンセサイザーの上をゆっくり歩くようなテンポの電子ピアノが重なる音楽は、ミューザック社がHarold Budd(ハロルド・バッド)を模したような印象もあり、時々鳥の鳴き声が小さく聞こえます。作者のMax Folmer(マックス・フォルマー)はユトレヒト大学で工業デザインを学び、美術学校での講師やウェブ・デザイナーを務める傍ら、東洋の叡智、自己の探求/解放といった内面世界や自然をテーマにした20以上の音楽作品を発表。日本での輸入販売元であるプレム・プロモーションは、1989年から同時代の優れた海外レーベルからリラクセーション向けの音楽を流通させており、本作「オメガ」の国内盤はその運営最初期のもの。当時のカタログにはAnugama(アヌガマ)やFlemming Petersen(フレミング・ピーターセン)、Frank Lorentzen(フランク・ローレンツェン)など、今ではニューエイジ音楽の古典とされる作品も多くあります。 - 「水と循環の音楽」冊子より一部改稿

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2018年12月12日水曜日

[231] 東洋ビージーエム - ゆらぎ


Label: Toyo BGM Corp.

Catalog#: TO-0011
Format: CD, Album, Promo
Country: Japan
Released: 1992

1  パープル・ラグーン  5:00

2  静寂の彼方から  5:00
3  時は流れて  5:00
4  訪れ  5:06
5  虹の架け橋  4:58
6  夢のように  5:00
7  パープル・シャドウ  5:16
8  ドリーマー  4:55

60年代から米アルトフォニック社と契約し全国にBGMを配給してきたBGM業界の草分け=東洋音楽放送を前身とする東洋ビージーエム(現・東洋メディアリンクス)が、「1/fのゆらぎ」理論に基づく自社オリジナル楽曲のサンプラーとして企業等に配布していたとみられる非売品CD。収録曲は、シンセサイザーのアルペジオの反復にシンプルなメロディが添えられたミニマル・ニューエイジ調と、都会的なムードを漂わせた甘く切ないピアノのフレーズをシンセのオーケストレーションが静かに盛り上げるライト・クラシック調に大きく分けられ、いずれも1曲の中で雰囲気を大きく変えることなく、5分程度で静かにフェイドアウトして終わります。作曲者のクレジットはありませんが、演奏者として記された篠崎正嗣(バイオリン)、佐佐木功(ピアノ)、YASUO SHONO(シンセサイザー)の3者による作曲でしょうか。リーフレットには、香川県の醤油醸造家に生まれ東洋音楽放送の創業に参じ、平成元年の社長就任からほどなくして逝去した故・栗生友三郎氏の生い立ちや人柄(さぬきうどんをこよなく愛した健啖家)を偲ぶ文章と、旧津田町の松原を詠んだ郷土愛溢れる詩句「春」を掲載。


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