2016年7月3日日曜日

[058.1] jun

6月のリスニングから
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Sakanoshita Norimasa - Toshi No Mezame (Weiss, 2016)
異種混合のセッションで様々なプレーヤー達と交流し、ソロでは、ギャラリーや書店など人と人が交差する空間での演奏活動を行っている東京在住のギタリスト/作曲家=坂ノ下典正。スペインの作曲家Francisco Tárrega(フランシスコ・タレガ)やAndrés Segovia(アンドレス・セゴビア)の楽曲を出発点としながらも、クラシックやジャズ、ブラジル音楽などのエッセンスを織り交ぜたインストゥルメンタル作品を発表している。「都市の目覚め」は、クラシカル・ギターとエレクトリック・ギターを奏した最新作。8曲のうち3曲がスタジオ録音、5曲が伊豆の国市にあるギャラリーnoir/NOKTAで行われたライブ・パフォーマンスで、特にライブ音源を聴いていると、瞬間的に湧いてくるリズム、アレンジ、曲中の呼吸、室内で人が動く気配や少しの躓きも泰然と受け入れ、完全であることから一歩引いたところに自由さを求める姿勢が、このギタリスト特有の打ち解けた空気や心地よいバランス感に繋がってゆくように感じられる。ブダペスト出身の現代美術作家Richard Weiss(リチャード・ヴァイス)が立ち上げたレーベルWeissの第2弾タイトルとして今春にリリース。

Conrad Setó ‎– Joc De Dames (Audiovisuals De Sarrià, 1986/2016)
初作「Magic」を超える傑作。4月からデジタル・フォーマットで配信されはじめ、念願かなってダブルアルバムの全てを聴くことができた。Conrad Setó(コンラッド・セト)は、スペイン国内でも独自の文化を持つカタルーニャ州のタラゴナ県モンブラン出身のピアニスト。76年に室内楽グループTanitを結成し、民主化により音楽市場が開放された70年代後期以降は新たな音楽シーンを先導した。「Joc De Dames」はカタルーニャ文化圏の伝統音楽や現代音楽を扱うバルセロナのレーベルから86年にリリースしたソロ2作目。身近な老婦方に捧げたアルバムだろうか、ベッツィやシルヴィ、アレハンドラという曲名は女性の名前で、タイトルは「婦人達の遊び」と訳せる。互いの作品を支えあう盟友ギタリストAlbert Giménez(アルベルト・ヒメネス)をはじめ、ベーシストEduard Altaba(エドアルド・アルタバ)、打楽器奏者Angel Pereira(アンヘル・ペレイラ)といったカタラン・ジャズロック最前衛の面々が参加し、Giménezのソロ作にも通じるフォークロアの情調に、近代音楽や電子音楽の要素を折衷したコンテンポラリー・ジャズを全編にわたって展開している。自治政府によるベストアルバム賞の第一回受賞作。

Erik Wøllo - Where It All Begins
(LP: Hot Club Records, 1983 / CD: Monumental Records,1999)
北欧のニューエイジ・ミュージック界を代表するノルウェイの作曲家/ギタリストErik Wøllo(エリック・ウォロ)。10代の頃にイギリスのプログレッシヴ・ロックに多大な影響を受け、ドビュッシーやサティなどクラシック音楽の技法を身につけた。電子楽器を使った新しいアプローチを模索するため、84年にスタジオ=ウィンターガーデンを構え、シンセサイザーやシーケンサーで絵を描くように作り上げた85年作「Traces」で、ソロ・アーティストとしての方向性を確立。自然の神秘、感情と風景、汎地球的な民族幻想をモチーフに、現在まで数多くのソロ作品をリリースし、映画・演劇・バレエなどの音楽も手掛けている。「Where It All Begins」は、ニューエイジ・エレクトロニクス路線に転向する以前、83年にリリースされた初のリーダー作で、Terje Rypdal(テリエ・リピダル)の継承者とも称されるWølloのウェットなギターと、Brynjar Hoff(ブリニャル・ホフ)のオーボエをフィーチャーし、冷たい水の底で揺れる蒼い炎をイメージさせる幽寂としたコンテンポラリー・ジャズ寄りのサウンドに仕上げられている。本編はもとより、CD化に際して追加された "Searching For Hidden Pictures"(84年のアルバム「Dreams Of Pyramids」に収録、現在は廃盤)が殊に素晴らしい。ECMとジャーマン・エレクトロニクスを結ぶ、21分にも及ぶ3部構成のミニマリスティックな組曲は、その後の作風を左右する大きな手がかりになったのかもしれない。

Kenichi Kanazawa - To Strike the Iron: Fragments of Sounds (NAF, 2000)
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「松本一哉『水のかたち』リリースツアー」の新潟公演で、第二部に行ったレコードリスニング会のために用意した資料の一つ。その日のライブは、波紋音や三昧琴といった鉄製音具など打楽器によるパフォーマンスで、楽器一式の中には「音のかけら」という音具のミニサイズが含まれていた。「音のかけら」は、円形の鉄板をパズルのように不規則な形に熔断し、大小様々な形状の欠片に触れることで、それぞれが持つ固有の響きを発見してゆく、彫刻家=金沢健一による視覚・聴覚の作品。このCD付きカタログは、2000年8月から10月にかけて新津市美術館(現・新潟市新津美術館)で開催された「共鳴する空間 金沢健一 音のかけら展」に際して出版されたもので、同年7月から現地滞在しながら制作した直径1.5mの鉄板による5枚の連作など展示の解説が掲載され、CDには、会期中に行われた金沢氏本人とパーカッショニスト永田砂知子によるサウンド・パフォーマンスの模様が収録されている。作者ゆかりの作家として環境音楽家=吉村弘が文章を寄せているが、吉村弘が87年に企画・プロデュースしたサウンドアート展「サウンド・ガーデン」(ストライプ美術館)への参加が、「音のかけら」制作の第一歩になったという。

Ashberry - In Music We Are Still Together: The 'R' Trilogy (Wylfen Editions, 2014)
listen Myra
夢の断片を縫い繕った淡く霞んだ音像に、土や草の匂いや手触りを感じさせるアンビエント・フォーク作。作者はトルコ・アンカラを拠点に活動するAshberry(アシュベリー)ことAtay İlgün(アタイ・イレグン)。Wounded Wolf Pressというレーベルを運営し、詩・短編小説・写真・フォークロアにフォーカスした手製のチャップブックやCD/レコードを出版している。今年3月、既作EP「'R' 3部作」を中心とする「In Music We Are Still Together」が、新たに2つの異なる仕様でリリースされた。5種類の混抄紙を使った美しいハードカバー・スリーヴのアート・エディションには、同レーベルアーティストによるリミックスやアウトテイクを含む3枚のCDに加え、詩のカード、冊子、メグサハッカやマウンテンタイムなどドライハーブが入った小瓶がパッケージされている。元々、レーベル立ち上げのきっかけとなった「'R' 3部作」は、屋根裏のアトリエと庭を行き来しながら即興的に作られ、古くから家に眠る楽器へのオマージュが込められているという。このグレーのカバーは、2つのEPをまとめたWylfen Editionsのデジタル・エディション。3年前のインタビューでは、トルコのギタリストErkan Oğur(エルカン・オグル)や吟遊詩人Asik Veysel(アシュク・ヴェイセル)を好きな音楽家に挙げている。

Wolf Müller - The Ransom Note Mix
International Feelのミニアルバム・シリーズからCassとのコラボレーション作「The Sound Of Glades」をリリースした、デュッセルドルフのDJ/プロデューサーWolf Muller aka Jan Schulte(ヴォルフ・ミュラー/ヤン・シュルテ)。UK拠点のウェブメディアThe Ransom Noteに提供したゲストミックス。

2016年6月24日金曜日

[058] Ralf Kothe - Regendurst


Label: AMIGA
Catalog#: 8 56 250
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Germany
Released: 1987
DISCOGS

A1 Regendurst 2:38

A2 Parkblick 1:54
A3 Großstadtspatz 2:58
A4 Dünengeflüster 4:57
A5 Fiesta 2:50
A6 Für'n Freund 2:15
A7 Vorfreude 2:19
A8 Saitenslight 2:40
B1 Schnelle Füße 3:10
B2 Skateboard 2:33
B3 Future 3:38
B4 Jenny's Tanz 2:47
B5 Guitar Boogie 2:01
B6 Glasperlen 3:54
B7 Durst Nach Regen / Am Ende Des Tages 4:00

Kompositionen und Arranements: Ralf Kothe

Ralf Kothe - 6 und 12 saitige Naturgitarre, Konzertgitarre, Slidegitarre, Zither, Percussion 
Gerald Stange - Percussion

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2016年6月23日木曜日

[057] Sextant - Sextant 2


Label: Fax +49-69/450464

Catalog#: PK 08/34
Format: Vinyl, 12"
Country: Germany
Released: 1993
DISCOGS

A1 It's Gonna Be Alright 5:57

A2 It's Gonna Be 5:10
B1 Missing You 6:53
B2 Lakeshore Drive 5:02

written by - DJ Hubee (A1-B1) & Pete Namlook

Saxophone - Bobby Sattler (B2)

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2016年6月22日水曜日

[056] Osso Exótico - V


Label: AnAnAnA

Catalog#: III001
Format: CD, Album
Country: Portugal
Released: 1997
DISCOGS

1 9 Esteiras Para 1 Acorde De Piano #1 0:24

2 9 Esteiras Para 1 Acorde De Piano #2 0:39
3 9 Esteiras Para 1 Acorde De Piano #3 0:18
4 9 Esteiras Para 1 Acorde De Piano #4 0:27
5 9 Esteiras Para 1 Acorde De Piano #5 0:26
6 9 Esteiras Para 1 Acorde De Piano #6 0:31
7 9 Esteiras Para 1 Acorde De Piano #7 0:20
8 9 Esteiras Para 1 Acorde De Piano #8 0:33
9 9 Esteiras Para 1 Acorde De Piano #9 1:06
10 Ciclo #1 13:39
11 Ciclo #2 6:03
12 Fuga Doméstica 27:45
13 Corrimão / Comunidade Das Mãos [1° Lanço / Todos Os Andares] 5:38
14 Corrimão / Comunidade Das Mãos [Patamar / Rés-Do-Chão] 3:40
15 Corrimão / Comunidade Das Mãos [2° Lanço / Cave] 5:43
16 Corrimão / Comunidade Das Mãos [Cisterna] 1:18

ポルトガルの作曲家David Maranha(デヴィッド・マランハ)率いる実験音楽アンサンブルOsso Exótico(オッソ・エクゾティコ)。89年結成から作品を重ねる毎に少しずつ作風を変え、マランハ兄弟とパトリシア・マチャスのトリオ編成になった前作以降は、民族楽器のマイクロトーナルと西洋楽器のトーナル、2つの構造を並列させたミニマリズムへの追求姿勢をより強めています。TelectuNuno RebeloRafael Toralら実験音楽家が集ったリスボンのレーベルAnAnAnAからリリースされた5作目は、兄デヴィッド作の#1-9, 12、弟アンドレ作の#13-16、パトリシア作の#10-11、各々のスコアをグループで演奏した4つの楽曲を収録。中でも注目したいのが兄デヴィッド作「Nove Esteiras Para Un Acorde De Piano(ピアノの1和音による9つの模様)」。この曲は、冒頭フォルティシシモで指示されるピアノの強い和音の後、減衰・余韻部にバイオリンやグラスハーモニカ、ボウルとビー玉など異なる音色を組み合わせて、9通りの精妙な模様を描いた組曲。エステイラは「水面にできる波紋」や「ゴザ・ムシロ」を意味する語で、静かな水面に大きな石を投げ込む衝撃から、激しく揺れる水面が徐々に静まり、再び静穏さを取り戻すまでの一連の推移をイメージします。音楽における「minimal」というと、装飾を削ぎ落としたミニマルテクノやプリミティブなシンセ・パンク、微音・沈黙を多用する現代音楽やマイクロスコピックまで、多様なフォームの音楽で「最小限」をこえた意味で使われていますが、アコースティック楽器の音をシンセサイズするように、新しい楽器や響きへの想像力をわずかな時間に凝縮させる「
一石のミニマリズム」は、多くのミニマル音楽の中でも異彩を放つ作風だと思います。


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2016年6月15日水曜日

[055] Master Wilburn Burchette - Mind Storm


Label: Numero Group
Series: Project 12 Subscription
Catalog#: NUM1247.7
Format: Vinyl, LP, Album
Country: US
Released: 2016 (1977)
DISCOGS

1 Deep Dimensions 15:08

2 Ceremony Within 15:15

カリフォルニアのメイルオーダー神秘指導者=ウィルバーン・バーチェットは、初めはウェイト・マガジンやビヨンド・リアリティ、 グノースティカ・ニュースの広告で知られていた。それは音楽の聴き方を人々に教える、7つのサイキック・メディテーション・コースの宣伝だった。彼はレッスンで、装飾的なドローイングをあしらったカバーと、自身による完璧な解説が付いた、インストゥルメンタル・ギターと電子音のレコードを販売した。12歳の頃から超心理学にのめり込み、音の絵画や模様を描くヴァイブレーションとギターの練習と同じくらい、多くの時間をチベット神秘思想の読書に費やした。クラシカルギターの教師をした後、71年から77年の間に7枚のアルバムを発表。そして、音楽に関わる全てを燃やして廃棄した。断固たる引退に先がけて制作した最後のアルバム「マインド・ストーム」では、精神の扉を開く現象として音響科学で知られる「ピンク・サウンド」を使い、深い脳内イメージのスコールのための水晶の反射を形成する2つのロング・ピースを作り上げた。- Numero Group


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The psychedelic occult music of Master Wilburn Burchette | Dangerous Minds