12月のリスニングから
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Kazuya Matsumoto - Fragment Of Water (2015)
鍾乳洞の中、水滴の落ちる位置に一枚ずつ配される鉄琴の音板。キンキンという金属音が加わり、水のリズムが交感しあって音楽的な表情が生まれ、また誰も居ない素の空間の姿に、久遠へ続く時間に、聞き手の想像が広がってゆく。作者は石川県出身で東京在住の打楽器奏者・松本一哉。FilFlaやmergrim groupのグルーヴ/リズムを支えるドラマーとして活動する一方で、ソロでは銅鑼やシンギングボウルなど伝統楽器から自然物まで様々な音具を操り、響きの自然と静寂へアプローチしている。初のソロ作「水のかたち」(SPEKK, 2015)に先がけてリリースされた、もう一つのウォーターワーク。2011年録音。
Alvin Lucier + Nick Hennies - Still and Moving Lines of Silence in Families of Hyperbolas (Quiet Design, 2010)
一定の間隔で発せられるマリンバ、シロフォン、グロッケンシュピール、ヴィブラフォン。その残響に含まれる倍音成分に正弦波を干渉させ、モワレのようなゆらぎ/ビートを発生させる、アメリカの実験音楽家Alvin Lucier(アルヴィン・ルシエ)のスコアを、同国の打楽器奏者Nick Hennies(ニック・ヘニーズ)が演奏。音響学的角度から研究・設計されたコンセプチュアルな音響作で、視覚的な音の動き、不思議な聴感覚に引き込まれる。日本におけるルシエ研究の第一人者・佐藤実氏による研究会(第二期/2015年12月-2016年2月)では、1月23日にこのスコアを取り上げるそうです。▲
Devon Folklore Tapes Vo.III - Inland Water (Folklore Tapes, 2015)
グレートブリテン各地に伝えられる民俗伝承や神話のフィールドワークに基づく調査報告と、その物語をテーマにした音楽作品で、他に類を見ないフォーク・ライブラリーを築き上げるレーベル/プロジェクトFolklore Tapes。2012年夏に手製ハードカバー型と封筒型、各30部限定でリリースされたカセットを新たにマスタリングし、10インチレコード2枚組+ゲイトフォールド仕様で復刻したもの。ここでは、人々を溺死させてしまう妖精「緑の歯のジェニー」「ペグ・パウラー」や、水辺に現れる幽霊など、デヴォン周辺の河川や湖沼に残る伝説が題材に。作者はSam McLoughlin(サム・マクローリン)とDavid A Jaycock(デイヴィッド・A・ジェイコック)。
Sounds Of The Dawn - Emerald Web Special
12月12日にNTS Radioで放送された、ニューエイジ・テープ発掘ブログSounds of the Dawnによる2時間のロングミックス。Emerald Web(エメラルド・ウェブ)は、70年代末からフロリダで活動するKat EppleとBob Stohlの夫婦ユニット。13年にDisposableのライブラリーシリーズからSam McLoughlin(上記「Inland Water」の作者のひとり)&A. Cooperとのスプリットをリリース、14年には初期作「Whispered Visions」がFinders Keepersから再発と、近年イギリスのアンビエント/フォーク方面からスポットが当てられている。田園から天空へ、光の羽粉を散らしながら縦横に飛び回るシンセ・ファンタジー。