2017年4月15日土曜日

[123] Masahiro Sugaya - Ao


Label: Sweet Boon Music
Format: Digital, Album
Country: Japan
Released: 2016 (1994)

1 Tessa 20:26
2 Tsuki 30:30
3 Uta 30:15
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1987年から2000年まで舞台芸術カンパニーPappa TARAHUMARA(パパ・タラフマラ)に所属し、演劇・舞踏・オペラ・美術などの枠組みを越えた新しい舞台作品のためのスコアを担当した東京都出身の作曲・編曲家=菅谷昌弘83年に東京音楽大学作曲科を卒業。作曲を三枝成章、松村禎三、湯浅譲二に師事。大学在籍時の82年から劇団に加入するまでの間は、主に演奏会形式でサキソフォン・オーケストラやウィンド・アンサンブル、ソロピアノのための作品などを発表されていたそうです。また90年代から現在まで、舞台の仕事と並行して、NHKオーディオ・ドラマの劇伴やギターデュオGONTITIの編曲なども手掛けています。本作「青」はパパ・タラフマラが94年に発表した舞台作品のサウンドトラックで、昨年8月に新たにデジタル配信でリリースされた3作品のうちのひとつ。「青」とは “色彩としての青にまつわるさまざまなイメージを時間の痕跡として舞台上に表現した作品” 。その「アオ」という発音から音楽の原初へとイメージを広げたという第一部のための「テッサー」は、ブンブンと回転するブルロアラーのうなりに、鉄道の走行音、飛行機・ヘリコプターの飛行音、アイヌのムックリ、鳥の鳴き声といった異なる尺度のリズムが現れては消えてゆく、個人体験に基づく連想の連なり。第二部のための「ツキ」は、「変化量の少ない30分間連続した音楽」という演出家小池博史のアイデアに呼応したという、縺れと綻びを生みながら絶えず変化を続けるリズム反復。一転して東南アジア的な和声の「ウタ」は、いくつかのセクションから構成されており、夢見心地な雰囲気の中で次々と表情を変えていきます。具体音楽、ミニマル・ミュージック、モダン・ジャズ、日本の童歌やガムランをはじめとした民族音楽のエレメントを取り合わせ、現実と非現実の世界への想像力を刺激する創意に富んだアプローチは、この作曲家独特のものに感じられます。

1982年に始めたときにはコンピューターを使える音楽家はほとんどいなかった。// そこで、コンピューターを使える音楽ということで菅谷が入ってきた。// 菅谷の才能は輝いていた。彼とは、1987年~2000年までピッタリとつき合ってきた。実際に制作した作品数はかなり多くの数に上る。だから、作品をひとつひとつ取り上げたりはしない。とにかくこの14年間のほぼすべてだ。当時、菅谷宅には公演前には二日に一回の割合で通ったものだった。稽古が終わるとバイクを飛ばして国立から荻窪の彼の家に行き、音楽を聴いてはああでもない、こうでもないと数時間、やりあった。そして深夜2時か3時頃に帰ってくる。とても良い時間を送ったと思っている。さほど忙しすぎず、ゆえにじっくりと音楽を作り出し、それを舞台上に反映させる。こういう実に贅沢な時間を作ることができた14年間であった。非常に繊細であり、かつ、破壊力も備わった音楽。このセンシティブな感じがなんとも言えず好きであったし、こういうじっくりと腰を据えた作り方ができた事は以降、まったくなくなっていった。(小池博史「パパ・タラフマラを作ってきた音楽家たち」より抜粋)


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