2017年2月19日日曜日

[113] Kengo Tokusashi - Music For Sauna


Label: Vihta Records

Catalog#: VIHT-001
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2016

1 Section 1 6:53

2 Section 2 5:01
3 Section 3 3:28
4 Section 4 6:49
5 Section 5 6:57
6 Section 6 8:39
7 Section 7 3:41
6 Section 8 9:49

熱い石にアロマを含む水をかけることで発生する水蒸気で全身を包み、体を温めて発汗と血行を促進させるフィンランド式サウナ「ロウリュ」。日本のサウナの主流であった高温低湿のドライサウナと異なり、80度ほどの中温多湿のサウナで、体への負担や刺激が少ないという点から女性や若年層の支持を受けて、近年のサウナブームの火付け役になっているそうです。この「ロウリュ」の静けさに身を浸し、蒸気音を耳で楽しもうというマニアックなプログラム「サウンドロウリュ(Sound Löyly)」を立ち上げ、2015年より全国を巡るツアーを行っている作曲家兼ロウリュ師=とくさしけんご。本作「Music For Sauna」は、とくさし氏がサウナで「ととのう」ためのイージーリスニング・ミュージックとして作曲し、昨年11月26日(いい風呂の日)にリリースされた作品。アート・ディレクションを担当しているのは、もう一人の「サウンドロウリュ」提唱者でありサウナ大使のタナカカツキ氏。
タポンと水の音。続いて聞こえてくるシューシューという蒸気音は、ツアー初日の会場であった横浜駅直結のスカイスパYOKOHAMAで録音されたもの。そんなサウナの情緒にのせて聞こえてくる、クラシックや軽音楽、古いシンセサイザー・ミュージックへのオマージュ。高級スパやサロンのラグジュリーなイメージよりも、ひなびたハワイアンセンターや歌謡曲の有線が流れる銭湯が似合いそうな、J-WAVE時代の「デイジーワールド」的な20世紀魅惑音楽の趣きを感じさせるエレクトロニック・サウンドが、とろとろゆらゆらと流れる長閑な時間を演出しています。本編と同様に素晴らしいのが付属の特典冊子「ととのう音楽100選」。岩波新書風にデザインされたこの冊子では、クラシックやジャズ、大滝詠一やビーチボーイズに及ぶ作品が、サウナというお題からユーモアを交えた独特の語り口で紹介されています。
現代人の心と体を癒すサウナのエキゾチックな静けさから生まれたこの音楽が、かたや消費社会のBGM的なるものを反転化させたヴェイパーウェイヴと「蒸気」という線で繋がってしまうことも……偶然とはいえ、なんだか印象深いことでありました。

「サウナ室の静けさがちょうどいいんですよ。静けさって決して無音ではなくて、水や蒸気の音が小さく聞こえるからこそ、逆に静けさを感じる。」(Coyote No.60 インタビューより)