2018年4月18日水曜日

[196] Mitar Subotić & Goran Vejvoda - The Dreambird


Label: Paulinas COMEP

Catalog#: CD-6442-4
Series: Mistic Series – Vol. 2
Format: CD, Album
Country: Brazil
Released: 1992
DISCOGS

1 Meditation I - Aurora 11:10

2 Meditation II - Zenith 19:05
3 Meditation III - Poente 9:50
4 Meditation IV - Nadir 18:50

ノヴィ・サド生まれのMitar Subotić(ミタル・スボティッチ)と、セルビア人外交官の父を持ち、イギリスやイタリアを転々とした後にベオグラードで青年期を過ごしたGoran Vejvoda(ゴラン・ヴェイヴォダ)。共に旧ユーゴスラビアのアンダーグラウンド・ロック・シーンでの活動を経て、80年半ばにパリに移住。スボティッチはIRCAM=フランス国立音響音楽研究所でエレクトロ・アコースティックの知識を広げながら劇場などの音楽を手掛け、方やヴェイヴォダはメディアアーティストとして美術と音楽の分野を股にかけて活動していました。本作「The Dreambird」は、この2人が86年に共同制作し、同年から92年までの間にユーゴスラビア、イタリア、ブラジルの都市部にある主要パブリックスペースで披露されたサウンド・インスタレーション「The Dreambird, in the Mooncage」(夢の鳥、月の鳥かごの中で)に基づいています。
2015年にOffen Musicにより公式リリースされた「In The Moon Cage」とは双子のような関係にあたる作品ですが、セルビアの古い子守唄をモチーフにしながら民族色を色濃く打ち出した「In The Moon Cage」とは向きを変え、本作はブライアン・イーノ研究家でもあったヴェイヴォダ(84年にイーノに関する本を出版)の趣味が反映されたためか、スボティッチ関連作品の中でも際立って楽園的なアンビエント・サウンドを聴かせる一枚となっています。主要素になっているのは、マダガスカルで録音された野鳥の鳴き声と、柔らかなシンセのリフレイン。それらのエレメントが幾重にも重ねられた4つのセクション「オーロラ」「天頂」「西」「天底」がシームレスに連なりながら、野性の精気に満ちた瑞々しく透明な世界を、ゆるやかな時間の推移ととも描き出した、全1曲といってもよいトータルアルバム的構成。ニューエイジ諸作のようにメロディを押し出しすぎることもなく、聴く人に深い安らぎをもたらすような調和のとれたサウンドが素晴らしいです。レーベルはサンパウロを拠点とするPaulinas COMEP。「ミスティック・シリーズ」の第2弾タイトルとして92年にリリース。このシリーズはインストゥルメンタル作品に焦点を当てたものとみられ、続く第3弾タイトルとして、本作にブラジルでのコーディネーターとして記載されているギタリストEdson Natale(エドソン・ナターレ)とバイオリニストAlex Braga(アレックス・ブラーガ)による共作アルバム「冬の太陽」がリリースされています。
「The Dreambird, in the Mooncage」の功績によりユネスコ国際文化振興基金を受賞し、アフロ・ブラジル音楽のリズムを研究するための奨学金を得たスボティッチは、1990年から活動の拠点をブラジルに移し、伝統的なリズムに最先端のダンス・ミュージックを融合させた新しいブラジリアン・サウンドを作り上げ、シーンを代表するプロデューサーとして地位を確立。しかし、Suba名義のアルバム「São Paulo Confessions」のリリース直後、99年11月に自宅スタジオが火災に見舞われて不慮の死を遂げました。近年Offen Musicが未発表作品をリリースしたことで新しいリスナー層にも認知され、ブラジリアン・サウンドだけに留まらないスボティッチの開明的作品が再評価を受けていますが、この作品におけるアンビエントなアプローチを聴くと、多数残されているという未発表音源や劇場やコマーシャルのための楽曲など、今後のリリースにもさらに興味が高まってきます。



The interest for electroacoustic music, which he had shown since his early works through the motifs of Serbian folkloric lullabies, took him to Paris where in 1985 he composed theatre music and at the IRCAM institute he expanded his knowledge in the field of electronic-acoustic music. During his stay in Paris, with Goran Vejvoda he started recording the album The Dreambird, in the Mooncage, which was the last to feature the pseudonym Rex Ilusivii, featuring the a combination of bird-twitter recordings, made at Madagascar, combined with the Serbian traditional lullabies and electronic music arrangements. The recordings were promoted in an original way in the period between 1986 and 1992 by broadcasting the recordings on the main squares of Yugoslav, Italian and Brazilian cities. Owing to the UNESCO award for promoting traditional culture, which he had got for The Dreambird, in the Mooncage, he got a scholarship in São Paulo where he landed on March 15, 1990 and decided to permanently inhabit. Part of the recorded material was released as The Dreambird in 1994 by the Brazilian label COMEP Music.



Rex Ilusivii ‎– In The Moon Cage (Offen Music, 2015)

Edson Natale & Alex Braga - Sol De Inverno (Paulinas COMEP, 1992)