2026年6月23日火曜日

Pluramon - Dreams Top Rock


Label: Karaoke Kalk
Catalog#: Karaoke Kalk cd 23
Format: CD, Album
Country: Germany
Released: 2003

1 oo4 0:04
2 Time For A Lie 4:49
3 Noise Academy 5:07
4 PS 1:25
5 Flageolea 4:22
6 Have You Seen 4:44
7 Hello Shadow 3:55
8 Difference Machine 4:28
9 Time (Catharsia Mx) 4:54
10 Log 5:55

ドイツ・ケルンの重鎮作家Marcus Schmickler(マルクス・シュミックラー)が、自身のプロジェクトPluramon名義で発表した4thアルバム。David Lynch作品で知られる歌姫Julee Cruise(ジュリー・クルーズ)を全編でフィーチャー。さらにKevin DrummやKeith Roweといった即興/ノイズ音響の異能たちがゲスト参加しています。
ギターノイズを解体した硬質なグリッチ作品を手掛けてきたPluramon。本作ではクルーズの甘美な歌声を中心に据えたことで、サイケデリックなポップ感が強まり、当時隆盛していたエレクトロ・シューゲイザーの潮流へと一歩踏み込んだような印象を受けます。同時期を象徴する作品としてまず思い浮かぶのは、同じくケルンを拠点とするGuitarの名作「Sunkissed」。ノイズとイーサリアルなヴォーカルの組み合わせという点で両者は共通していますが、MBV「Soon」直系の恍惚感をサンプリングの反復によって最大限に増幅させた「Sunkissed」が燦然たる太陽光だとすれば、この「Dreams Top Rock」はぼんやりと陰る妖艶な朧月。そんな例えが似合うダウナーでビザールな夜想世界。
いびつなグリッチ、ザラついたデジタルエラー、そしてポストロック的な即興演奏。これらを緻密なポストプロダクションによって脱構築していく、ケルン派らしい理知的でストイックなアプローチ。その中を浮遊するクルーズの、天使のようでありながら不穏さを孕んだ美しい歌声。「ツインピークス」の幻影とシューゲイズの轟音。夢のようなふたつの要素が溶け合いながら、深い淵へとゆっくり沈殿していくメランコリア。馬を配したアートワークや、中盤で見せるアメリカンゴシック的な枯れたバンドアンサンブルも含めて、どこかリンチ作品の世界観や、その作品群の中で特異な存在感を放っていたクルーズ自身へのオマージュが、さりげなくも巧みに織り込まれているようにも感じられます。

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Singer and David Lynch Collaborator Julee Cruise Dead at 65

2026年6月18日木曜日

Natural Calamity - Wipe Out


例年カタクチイワシが接岸し、回遊魚を狙うアングラーで賑わう時期。しかし今年はまだその姿が見えず。今朝のホームもかなり静かでした。それでも、釣果に関わらず朝の海辺の雰囲気は良いものです。この「Wipe Out」は、今年リリースされたビーチライフマガジン「SALT...」監修による、海をテーマにしたアンビエント・コンピレーション「DEEP BLUE」の収録曲。先週末に新潟・砂丘館で開催されたExperimental Rooms #52(素晴らしいイベントでした)の会場BGMとして選んだトラックのひとつです。Natural Calamityのアルバムを心待ちにしていて、こういう形で新曲が聴けるなんて嬉しい驚きでした。穏やかでチルな表情だけでなく、時に人の命さえ奪ってしまう自然の恐ろしさも含めて、やはり海は尊いです。

2026年6月12日金曜日

Danielsson / Dell / Landgren - Salzau Music On The Water


Label: ACT
Catalog#: ACT 9445-2
Format: CD, Album
Country: Germany
Released: 2006

1 Part I 9:17
2 Part II 4:51
3 Part III 7:39
4 Part IV 6:54
5 Part V 2:45
6 Part VI 5:53
7 Part VII 6:18
8 Part VIII 1:48
9 Part IX 3:21
10 Part X 3:04
11 Part XI 10:50

スウェーデン出身のベーシスト/チェロ奏者Lars Danielsson(ラルス・ダニエルソン)、トロンボーン奏者Nils Landgren(ニルス・ラングレン)、ドイツ出身のヴィブラフォン奏者Christopher Dell(クリストファー・デル)。欧州ジャズシーンの最前線で活躍する3人の名手が、2005年7月にドイツ北部のザルツァウで開催されたジャズフェスティバルJazzBalticaで行った早朝ライブの記録。
舞台になったのは、緑に囲まれたザルツァウ城の池に設置されたインスタレーション「Salzau Music on the Water」。旧ソ連出身の現代美術家カバコフ夫妻とウラジミール・タラソフが手がけたこの作品は、浮島のように造られた木製のステージであり、その空間全体が水上に浮かぶ「巨大な楽譜」として設計されたもの。五線譜に見立てて張り巡らされたワイヤーには、無数の金属棒やカトラリーが音符のように吊り下げられ、風が吹くたびに揺れてランダムな音を奏でる仕掛けになっています。
夜明けとともに始まる穏やかな即興演奏。風鈴を思わせる涼しげな金属音、水鳥の羽音、小鳥のさえずり。周囲の気配や息遣いのすべてが音楽の一部となり、奏者たちもまた刻々と変化する朝の空気に呼応するようにフレーズを重ねてゆく。そうした人と自然との交感の一部始終が、場の臨場感とともに克明にドキュメントされています。湖畔や川沿いをひとり散歩した時のような、清々しい充足感が感じられる名作です。

「ウラジーミル・タラソフと私は、閉鎖空間でのインスタレーションに長年取り組んできたため、当然のことながら、開放空間におけるインスタレーションの構造についても慎重に検討し、様々なアイデアを交換してきた。ある時、ヴェネツィア・ビエンナーレの準備のために滞在していたリド島のビーチを散歩していた際、海に向かって長く伸びる桟橋を作り、そこに様々な金属製の物体(私たちの頭に浮かんだのは、錆びた缶、スプーン、釘など)を取り付け、海から吹く風でそれらがぶつかり合い、思いがけない音楽的な音を生み出すというアイデアが浮かんだ。海に向かって桟橋を歩く人の視点から見れば、すべてがロマンチックで魅力的に映るだろう。孤独な散歩、風、そして鐘の音に似た、どこか物悲しい金属の音……。1994年、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州にあるザルツァウ城でのコンサートの際、タラソフはこのアイデアを音楽祭の主催者であるライナー・ハールマンに話した。ハールマンは並々ならぬ熱意を示し、城の前にある小さな湖にそのようなインスタレーションを制作することを提案してくれた。彼が送ってくれたカラー写真から、そこがまさにこのプロジェクトに最適な場所であることは明らかだった。そして間もなく、私たちは現地を視察し、どのように実現するかを検討するためにザルツァウへ向かった。」 - イリヤ・カバコフ

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2026年6月9日火曜日

長谷川有機子 - 編鐘 水の祈り


Label: 有機音工房
Catalog#: -
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2003

1 水の源(源流) 3:16
2 緑したたる(上流) 6:12
3 命はぐくむ(中流) 5:04
4 海へ(下流) 6:20

2008年1月、NHKで放送された「京 音をめぐる」という番組。私が幸い見ることができたのはそのうちの何章かで、「晩鐘の音」(中川真氏が登場)「技の音」「暮らしの音」など、古くから続く京都の生活や文化をサウンドスケープの視点から紹介する内容でした。番組のなかで一人の女性が風変わりなカリヨンを演奏する様子が映し出されていて、その方が編鐘演奏家の長谷川有機子さん。復元された古代中国の宮廷楽器「編鐘(へんしょう)」を奏で、自然・風景・祭礼を写し取る作曲活動を行うかたわら、森羅万象に耳を澄ますことで感受性を育てる「イヤー・ゲーム」を教育の場で実践されています。賀茂川の源流から淀川の河口まで辿り、風景からメロディを授かったという本作。現地録音された瑞々しい水の音を背景に、琴鐘や編鐘、カリンバ、タイの太鼓やジャンベといったリズムを際立たせる楽器が加わり、音の風景は動的に移り変わっていきます。なかでもカリンバと久乗編鐘を組み合わせた#3「命はぐくむ」は何とも不思議な異国情緒があります。

... An instrumental CD of the rare instrument, Chinese Bells called "Hensho". Titled "Hensho Mizu-no Inori" (Bell and River's Prayer). Composer / performer Yukiko Hasegawa has written four pieces inspired by her fondness of the sound of the river. In this disc, Hasegawa plays the Chinese Bells in Honen-in Temple (Kyoto) and as a harmony has recorded the sound of water flowing from its source (Kamogawa River) until it meets with the Yodogawa River and enters into Osaka Bay - the juxtaposition of human and nature dance together in a sound scape of quiet beauty. The origin of Hensho dates back to ancient palace music. A Hensho was placed in a Chinese burial tomb 2400 years ago (400 B.C.). In Japan, only a handful of Hensho exist.

※旧ログ整理のため一部リライトして再投稿しました

2026年6月6日土曜日

Flow - Another Time (Universal Mix)


St.GIGAアーカイヴ「Spacey night A」より。NYのレーベルBottom Line Recordsから1992年にリリースされたディープハウス・クラシック。作者はレーベル主宰の鍵盤奏者/プロデューサーEd The RedことEdward Goltsmanと、彼のパートナーNancy Kay Goltsman、カルト的な人気を誇るプロデューサーNelson "Paradise" Roman。跳ねるようなベースラインと夢心地なシンセのコード、そしてトライバルな混声チャントを織り交ぜたスピリチュアルでフローティングなトラック。日の入りから日の出までの「星の時」。セントギガのストリームの中でも特に高揚感のある満潮に向かう時間帯だと思います。

2026年6月3日水曜日

Adrian Knight - Damn the Flood


Label: Regional Attraction
Catalog#: REG007
Format: Digital, Album
Country: US
Released: 2021

1 Damn the Flood 9:39
2 Flood Prototype One 15:42
3 Flood Prototype Three 9:48
4 Flood Prototype Two 10:34
5 Bottomlands 5:08

ポストミニマルなスコアを手がける現代作曲家であり、一方でヘナヘナな歌声を披露する80'sフェイクなベッドルームポップ作家でもある。そのどちらにも本腰が入っていて、実にミステリアスな人物だなと思います。
スウェーデン・ウプサラ出身、現在はニューヨークを拠点に活動するAdrian Knight(エイドリアン・ナイト)。本作「Damn the Flood」は、サンフランシスコ・ベイエリアの現代バレエカンパニーPost:Balletの委嘱により制作された作品で、2017年3月に同市の文化芸術センターSOMArtsにて、Robert Dekkers振付によるダンスパフォーマンスの一部として初演されました。単なるダンスの伴奏にとどまらず、音と身体が空間の中で対等に作用し合う、没入型の舞台芸術として構想。「流れる水の儚さと永続性」をモチーフに、ひとつの楽章に5つの異なる和声構造がシームレスに組み込まれ、Juno 6とRhodesの柔らかなドローン、ヴィブラフォンなどの生楽器の繊細な響きと電子音響の残響処理が溶け合うようにブレンドされています。多作かつ変幻自在な作家ゆえに、その全体像は掴みがたいところがありますが、本作だけを切り取ってみても、彼自身の美意識や緻密な構築力が静かな音像の奥からひしひしと伝わってくる。純度の高い音世界を堪能できる一作です。

He is a contemporary composer of post-minimalist scores, while also crafting a sort of faux-80s bedroom pop with delightfully limp vocals. There is a genuine commitment to both sides of his craft, leaving an impression of someone truly mysterious.
 Adrian Knight is originally from Uppsala, Sweden, and is currently based in New York. This work, Damn the Flood, was commissioned by Post:Ballet, a contemporary ballet company based in the San Francisco Bay Area, and premiered in March 2017 at the city’s cultural and arts center, SOMArts, as part of a dance performance choreographed by Robert Dekkers. Conceived not merely as an accompaniment to dance, the piece was envisioned to create a space where sound and the body occupy the performance space as equals, resulting in an immersive performing art. Guided by the motif of "the fleeting nature of running water and the timeless," five distinct harmonic structures are seamlessly woven into a single movement, where the soft drones of a Juno 6 and Rhodes, the delicate resonance of acoustic instruments like the vibraphone, and electronic reverberations blend almost imperceptibly.
Given how prolific and versatile he is, his complete artistic vision can be elusive to grasp. Yet, even when listening to this work on its own, one can quietly feel his distinct aesthetic and meticulous sense of architecture breathing beneath the calm soundscape. It is a piece that invites you to gently savor an exquisitely crafted sonic world.

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2026年6月1日月曜日

Gak Sato & mama! milk - Furniture Music vol.2


Label: Ricordi & Sfera
Catalog#: SCD-002
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2007

1 Honen-In 1 4:33
2 Honen-In 2 4:33
3 Honen-In 3 4:33
4 Gion 6:33
5 Bead 7:10
6 Trois Toy Piano 2:48
7 Fukuzo-In 4:33
8 A (440Hz) 3:43

京都のプロダクトブランド「Sfera」が、ミラノ在住のサウンドアーティストGak Satoとともに展開したオリジナルCDシリーズ「cosmosSfera」の第2作。環境音や生楽器をポストエレクトロニカ的手法で構築した前作のスタイルを踏襲しつつ、本作では室内楽ユニットmama! milkの生駒祐子と清水恒輔を迎え、新たな方向性が探られています。
レコーディングは、京都の法然院、福蔵院、スフェラビルにて。3日間にわたるセッションの素材をもとに、Gak Satoが編集/再構築。トイピアノ、カリンバ、アコーディオン、オルガニート(手回し式オルゴール)、カシオトーン、コントラバス、クラリネット、バラフォン、竜笛、笙、さらにはサウンドホースや風鈴まで。多様な楽器や音具が用いられています。それぞれの場が持つ固有の空気感のなか、気まぐれに繰り返しては止まり、静かに漂う音のかけら。さまざまな音が不規則かつ不定形に交錯する様子は、公共空間に置かれた音響彫刻や自動演奏装置の動きを彷彿とさせ、それらが生み出す音を周りの環境ごと作品化したかのような趣があります。音のエレメントの多くは西洋的でありながら、簡素な配置は日本庭園のよう。偶然と秩序が不思議な均衡を保ちながら共存する、穏やかで奇妙な音世界。全体として淡々と慎ましい作風ですが、ラストトラック「A(440Hz)」を聴き終えたあとに訪れるじんわりとした余韻が実に佳いです。

This is the second installment in the original CD series “cosmosSfera,” developed by the Kyoto-based product brand “Sfera” alongside Milan-based sound artist Gak Sato. While following the style of the previous release—where ambient sounds and acoustic instruments were constructed through a post-electronica lens—this album seems to seek new directions by welcoming Yuko Ikoma and Kosuke Shimizu from the chamber music unit mama! milk.
Recording took place at Hōnen-in, Fukuzō-in, and the Sfera Building in Kyoto. Based on materials from three days of sessions, the tracks were edited and reconstructed by Gak Sato. A diverse array of instruments and sound objects find their way into the mix, including a toy piano, kalimba, accordion, organetto (hand-cranked music box), Casiotone, double bass, clarinet, balafon, ryuteki, shō, and even sound hoses and wind chimes.
Amid the distinct presence and atmosphere of each location, fragments of sound drift quietly, repeating and pausing on a whim. The way these varied movements intersect, irregularly and amorphously, briefly brings to mind sound sculptures or automated musical instruments placed in public spaces; there is a sense as if the very sounds they generate, along with the surrounding environment, have been captured whole as a piece of work.
While many of the sonic elements lean Western, the sparse arrangement evokes something akin to a Japanese garden—a gentle, peculiar sound world where chance and order coexist in a curious balance. While the overall tone remains detached, one is left with a warm, quiet afterglow after the final track, “A (440Hz),” fades away.

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2026年5月27日水曜日

Mix for Mitamine Lab


2016年5月にメキシコシティ拠点のプラットフォームMitamine Labに提供したミックス。公開から10年が経ち、改めてトラックリストとあわせて残しておこうと思いました。アコースティックなミニマリズムや創作楽器、サウンドアートの派生音源などに興味を持っていた時期で、そうした関心が素直に反映されているように感じます。選曲に対する気負いもなく、自由に楽しみながら録音しました。当時声をかけてくださったこと、10年間たった今も公開されていること(相当な月日だと思います)に改めて感謝したいです。

This is a mix I contributed to the Mexico City-based platform Mitamine Lab back in May 2016. Now that a decade has passed, I wanted to archive it here alongside the tracklist. Around that time, I was drawn to acoustic minimalism, folklore, homemade instruments, and sound art derivatives from a post-ambient perspective, and I feel those interests are honestly reflected here. I recorded it freely and with enjoyment about the selection. I would like to express my gratitude once again for being invited back then, and for the fact that it remains available even now, ten years later (which feels like a considerable amount of time).

tracklist:
Anna Meredith - Blackfriars (ft. Oliver Coates)
Mary Lattimore - The Quiet At Night
Craig Kupka - Acoustic Piano, Bess, Bass And Drums
Entourage Music & Theatre Ensemble - Euphoric Bells
Valentin Clastrier - Rituel Ii
Warren Burt & Ernie Althoff - Improvisation In An Ancient Greek Mode
Dan Joseph - Conclusion
Jam Money - Noble Spruce
Matteo Nasini - Montescrew 1998
James Stephen Finn - This Antique Metronome Keeps Me Awake When I Should Be Dreaming
Loto Retina - Oisiveté En Milieu Aquatique
Nick Storring - Unexpecting
Killing Time - Psychotropicnic


MITAMINE LAB
Culture Curators based in Mexico City

2026年5月25日月曜日

Rocco Notte & Richard Bush - Elysian Fields


Label: Mu-Psych
Catalog#: MP-5002C
Format: Cassette, Album
Country: US
Released: 1985

A1 Three Pieces In A Shape Of A Pair Of Pants 5:30
A2 Echostasis 10:52
A3 Wake Up In Baby's Room 6:50
B1 Inevitable In 8b 7:57
B2 Eleanor 8:23
B3 Rite On The Beach 6:03

フィラデルフィアを拠点とする5人組パワーポップ・バンドThe A’sの中心メンバーRocco Notte(ロッコ・ノッテ)とRichard Bush(リチャード・ブッシュ)の2人が、バイオフィードバックや心理療法を専門とするカセットレーベルMu-Psychからデュオ名義で発表したアルバム。タイトルはギリシャ神話における「死後の楽園」の意。短命に終わった同レーベルのカタログにおいて、その立ち上げと同時にリリースされた第一弾タイトルと見られます。
幼少期よりジャズとクラシックを学んできた鍵盤奏者のノッテは、シンセサイザーを用いて繊細なメロディやハーモニーを構築。一方、普段バンドのフロントマンを務めるブッシュは、ここでは歌う代わりに自身の声を霧のような音響素材へと加工し、空間エフェクトなどのサウンド・プロセッシングに専念しています。リラクゼーションや瞑想という実用性を背景に持ちながらも、ニューエイジ特有の神秘主義的な演出はなく、徹底して慎ましく抑制された構成は同時期の日本の環境音楽作品にも近しい作風。夢の中で柔らかな芝生の上を裸足で歩くような、あるいは小さな水たまりの奥に広がる透明な別世界を覗き込むような感覚。優しい空想時間へと静かに誘うイマジナリーなエーテル・アンビエント。

「MU-PSYCHは、ニューエイジ・ミュージックという広範な枠組みの中で、優れた音楽的才能の発掘と育成に注力するレコードレーベルです。私たちはニューエイジ・ミュージックを、音楽家自身がリラックスするため、そして自分自身や他の人々にインスピレーションを与えるために創造する音楽と定義しています。MU-PSYCHは、バイオフィードバックや心理的セルフヘルプ技術の世界的リーダーであるFUTUREHEALTH社の音楽事業部門です。同社のニューエイジ・ミュージックへの関心は、トワイライト・ラーニング(半覚醒学習)や催眠誘導オーディオカセットの開発から自然な流れで発展したものです。これらのカセットは、深いリラックスや活力をもたらす音楽と、コロラド大学ヘルスサイエンスセンターのバイオフィードバック先駆者、トーマス・バジンスキー博士によるガイダンスを組み合わせたものです。MU-PSYCHの心理技術専門家は、レコーディングスタジオでアーティストと連携し、音楽がより強力な心理的効果を生むようサポートを行っています。

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The Philadelphia Inquirer - Rocco Notte, 72, keyboard player and songwriter for Philly rock band the A’s, has died

2026年5月22日金曜日

Because - Mad Scared Dumb And Gorgeous


Label: Haven Records
Catalog#: HAVENCD 1
Format: CD, Album
Country: UK
Released: 1992

1 Orientation 5:05
2 Her Rhythm And Her Blues 3:47
3 A Glass Room 4:02
4 Song Of All Things 5:48
5 Archaeology 4:30
6 Love Is Coming 5:15
7 Stolen 4:19
8 Feast Of Stephen 2:38
9 You Don't Forget 3:44
10 Mad Scared Dumb And Gorgeous 4:52

イギリスのニューウェイヴ・バンドFurnitureのフロントマンであり、後に音楽ジャーナリストへと転身するJim Irvin(ジム・アーヴィン)。バンドが解散へ向かっていた90年代初頭、長年の友人であるジャズ畑出身の鍵盤奏者Chris Ingham(クリス・インガム)と共に、新たに始動したソングライティング・プロジェクトBecause。本作は、The BibleのBoo Hewerdine(ブー・ヒュワディーン)が立ち上げたレーベルの第1弾タイトルとしてリリースされた唯一のアルバム。
当時最新鋭だったシンセサイザーKORG M1をはじめ、最小限のレンタル機材を自宅に持ち込んだプライベートな環境でレコーディング。彼らが傾倒していたBrian Wilsonの内省的な世界観や、The Blue Nileの静謐な都市感覚を手がかりに、インガムが緻密なシンセサイザーでサウンドの骨格を構築し、アーヴィンが独自の語り口で翳りを帯びたヴォーカルを重ねるスタイルで制作されています。壊れゆく関係性や孤独感を描いたPrefab Sprout風の男女デュエット「A Glass Room」。アトモスフェリックな音響に人生の省察を投影した「Song Of All Things」。Brian Wilsonの影を朴訥としたアレンジで表現した「You Don't Forget」ほか。いずれの楽曲も音数を削ぎ落とし、余白を活かしたクワイエットなプロダクジョン。同じ志を持つヒュワディーンが共感したのも納得できる、UKスムースポップ〜ソフィスティポップの静かな地平を指し示すような秀作です。

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2026年5月18日月曜日

Stefano Delù - Chitarre Solo I + II


Label: -
Catalog#: -
Format: CDr, Album
Country: Italy
Released: 2011

1-1 Aelfraed 3:25
1-2 Lao-Tzu & Harry Haller 7:10
1-3 Ealafrith 7:55
1-4 Rosso Profondo 4:20
1-5 Viaggio Di Un Bhikku Con Un Bagaglio Di Pane E Ideali 7:20
1-6 Bijou 1:25
1-7 Guarda Dritto E Vai Avanti! 2:35
1-8 Buonanotte 0:40
2-1 Serenatassira I 2:53
2-2 Serenatassira II 5:09
2-3 Autoharp I 6:22
2-4 Serenatassira III 4:34
2-5 Autoharp II 3:11
2-6 Come sarà Milano? 6:53
2-7 Mr. Jeff Gurd 1:35
2-8 Ergon & Parergon 5:58
2-9 Aelfraed II 8:41
2-10 Al Farabi 6:28
2-11 25 May at Brienz 4:33
2-12 Prestidigitami 4:32
2-13 Glaßharpe 6:51
2-14 Aelfraed I 4:25

ドイツの先達Hans Reichelが提示したギター音響拡張のアプローチに感化を受け、自作カスタムギターによる即興演奏の可能性を追求したミラノ出身の音楽家Stefano Delù(ステファノ・デルゥ)。前衛ロックバンドStormy SixのメンバーであるFranco Fabbriらが設立した非商業音楽のためのレーベルL'Orchestraから、1983年に発表された唯一のソロアルバム「Chitarre Solo」を、作者自らの手で復刻した私家再発盤。2枚組CD-R仕様となっており、ディスク1にはオリジナルLPの全8曲を収録。ディスク2には同時期に録音された未発表音源や別テイクがコンパイルされています。
デルゥが考案したカスタムギターは、ブリッジサドルとネックの間に木製バーを梯子状に増設した特殊な構造。右手で弦をバーに押し当てて弦長を区切ることで、高域の倍音や不均一なうねりが発生し、金属造形やガラス細工の光の煌めきのような繊細で澄んだ音色が引き出されます。本作ではこの変則的な楽器と通常のギターを駆使し、既存音楽の枠組みにとらわれない自由な爪弾きに、穏やかな余韻と空白を交えて瑞々しい音像を立ち上げています。
アヴァンギャルドの文脈にありながら決して難解なものではなく、全編通じて牧歌的で親しみやすいメロディセンスと、随所で滲む風通しの良い実験精神や遊び心が印象的です。静けさと点描的なフレーズが際立つディスク2のなかでも、エフェクトを効果的に用いた「Come sarà Milano?」や「25 May at Brienz」といった楽曲は、Durutti Columnの初期作にも通じるナイーヴな創作衝動と地中海のメランコリーが交差する、本作ならではのハイライトだと思います。
現在のデルゥは活動の場を実用音楽へと移し、ドイツのヒーリング音楽専門レーベルSantec Musicの主要コンポーザーの一人として活動。アコースティック/クラシック・ギターを用いた内省的な楽曲の書き下ろし、クラシック古典曲の演奏など、自然の情景や静寂を表現する環境音楽・インストゥルメンタル作品を提供し続けています。

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2026年5月15日金曜日

Flipside - Inside


Label: Horizon
Catalog#: hrzn-002
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2003

1 Relief 6:30
2 Unwind 6:47
3 Swerve 4:00
4 Caló Des Moro 5:13
5 Outside 5:13
6 Suite 4:43
7 Goof 5:45
8 Cph/Malmoe 5:07
9 Re:Version 1:20
10 Andante (For Frederik) 5:20

ブログを休止していた間、Real Ibizaをはじめとするイビサ系コンピレーションの中古CDを買い集めて、ひたすら聴き入っていた時期がありました。CDの販売枚数がピークに達した2000年前後。チルアウトは大衆を巻き込んだ大きなムーブメントとなり、夕陽やビーチのイメージを掲げた企画盤が次々とリリースされていました。今日まで形を変えながら連綿と続くジャンルである一方で、当時の華やかなブームの中にあった作品の多くは、今ではほとんど話題に上ることもなく、ひっそりと静かなまま取り残されているような印象も受けます。それは、以前ウィンダムヒル作品の収集に没頭していた頃に感じた、往年の自然派ニューエイジの凋落ともどこか重なるものがあります。

2000年代初頭、このヨーロッパの潮流に日本から呼応し、BlissやCantomaなどの良質な作品を国内に紹介していたのがHorizonの「blueline」シリーズ。そのリリース作品にふれて特に印象深かったのが、コンピレーションに収録されていたFluffと、このFlipsideという二つのユニットでした。

Fluffは、北欧コペンハーゲンの名門Music for Dreamsを象徴するBlissの主要メンバーであるMarc-George Andersen(マーク・ジョージ・アンデルセン)とJan Winther(ヤン・ヴィンター)によるユニット。もう一つのFlipsideは、同じくBlissの核を担うKlaus Bau Jensen(クラウス・バウ・イェンセン)が、スウェーデン出身のギタリストSebastian Lilja(セバスチャン・リリャ)と組んだユニット。いずれもBlissの派生プロジェクトでありながら、ユニット名だけがさりげなく提示されているため、やや匿名的にも感じられます。しかしその背景には、イェンセンが共同設立したLoadstar RecordsやRealtime Studioを中心とするローカルコミュニティが存在し、身近なアーティスト同士が互いにリミックスを提供し、ゲストとして参加しあう、地に足の着いたクリエイティヴな関係が築かれていたようです。

本作「Inside」は、そのLoadstar Recordsから発表されたFlipsideの1stアルバム。哀愁を帯びたアコースティックギターのフレージング。淡く重なるメロウなシンセパッド。チェロやコルネット、ピアノといったゲスト奏者を迎え、当時の潮流のなかでもひときわ静謐なタッチで、清涼感と有機的な温かみが共存する独自のサウンドを構築しています。民族音楽やクラシックの要素を取り入れて壮大な世界観を提示したBlissに対し、Flipsideはあくまでインストゥルメンタルに徹し、映像的でイマジナリーな余白を残した表現にフォーカスしています。その志向は、かつてウィンダムヒルの奏者たちが身近な音楽仲間たちと、質直なアンサンブルを通してレーベルカラーを育んでいった歴史とも、やはりどこか共振しているように思えます。

彼らが残したオリジナルアルバムは、本作を含め全3作。作風に大きな変化はなく、リリースを重ねるごとにやや停滞感を覚える部分もありますが、それでも本作の静謐なタッチには、BGMとして消費されることを拒むような、穏やかながら研ぎ澄まされた職人的な美意識が確かに感じ取れます。レイヴ文化の熱狂に対するカウンターとして生まれ、ダブやジャズを吸収しながら深化を遂げたダウンテンポ/チルアウト。やがてリゾートカフェやラグジュアリーホテルのような洗練されたイメージが付加され、消費の対象へと加速していきました。自分にとっては好きな部分と、そうではない部分の両方があります。Flipsideの音楽は、その境界線の上で理性を保ち、確かな場所へ踏みとどまろうとする良心のような存在にも感じられます。

コロナ禍を境に社会の雰囲気や自分自身の生活も大きく変化し、また子どもたちの成長という個人的な節目も重なり、その移り変わりのなかで聴いていた作品には、特別な感情が湧きます。ブルーリスニングのクラシックとして、聴き続けたい一枚です。

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2026年5月11日月曜日

Boozoo Bajou - Aurelia


Label: PILOTTON
Catalog#: No 037
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Germany
Released: 2025

A1 Deckards Harp 5:11
A2 Una Nuova Distessa 6:21
A3 The Novelist 5:06
B1 Stillight 5:38
B2 Nemune 4:55
B3 Mila 5:34

ドイツ・ニュルンベルクを拠点とするベテランデュオBoozoo Bajou。キャリア25周年の節目に自主レーベルを立ち上げ、自らの原点を見つめ直した前作「Finistère」を経て、よりディープで内省的なアンビエント・サウンドへと踏み込んだ6thアルバム。具象的な風景描写から、存在の状態そのものへの関心の変化、そして本質へ向かう止観の境地。彼ら特有の渋みのある枯淡の世界観が、余剰を削ぎ落とした静謐で純度の高い表現へと昇華されています。Another Fine DayとRobin Guthrieが出会ったかのような穏やかなハイライト「Una Nuova Distessa」が殊に素晴らしく、聴くたびにじんわりと馴染んでくる一作です。

Deep atmospheric soundscapes have always been a part of Boozoo Bajou during their 27 years as producers. Each of their previous 5 albums had those almost beatless melancholic beauties as part of the musical presentation. Since this is a key element Peter Heider & Florian Seyberth aka Boozoo Bajou decided to dedicate a new six track album called „Aurelia“ to this genre of music which might be called Ambient but is rather a free flow through their musical minds. Based on a warm analog mix there are various instruments giving guidance to this journey even enriching the overall quality impression of the music which is provided by this new output from Boozoo Bajou.

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2026年5月7日木曜日

C.W. Vrtacek - Silent Heaven


Label: Cuneiform Records
Catalog#: Rune 79
Format: CD, Album, Compilation
Country: US
Released: 1996

1 Poison 1:20
2 War 1:05
3 Tumbling 3:30
4 Inside 1:11
5 Revenge 2:13
6 Song For Marcel 1:59
7 Rain 2:07
8 Emily, Are You Happy ? 3:21
9 Breathing 1:01
10 Silence 0:24
11 When 1:42
12 Thinking 3:16
13 Fly / Wave 6:01
14 Picture In An Empty Frame 5:05
15 Minus My Friend 1:33
16 History Of The Heart, Mystery Of The Mind 1:35
17 Part Of Me Here, Part Of Me With You, Always 1:20
18 Stone Steps 1:17
19 Preparing The Bridge (For Heaven) 5:09
20 Saying Goodbye To The Beauty And Complexity Of Life On Earth 5:42
21 When Heaven Comes To Town 26:16

1970年代もいよいよ終わりを迎えようとしていた頃、ヴルタチェク(後にチャールズ・チャック・オメアラの名でも知られる)は、当時市販されたばかりの世界初となる4トラック・カセットデッキTEAC 144を購入し、1980年から1988年にかけて4枚のソロアルバムを録音した。「ポータスタジオ」の名称でも知られるこの革新的で比較的安価な機材は、ミュージシャンが自宅において低コストで音楽を録音することを可能にし、宅録ブームの火付け役となった(当時の雑誌「OPのバックナンバーを参照してほしい)。これは彼がフォーエバー・アインシュタインを結成する数年前のことである。
本作「Silent Heaven」は、彼の3作目「Learning to Be Silent」(1986年)と4作目「When Heaven Comes to Town」(1989年)を1枚にまとめた特別盤だ。フォーエバー・アインシュタインとは全く異なり、ここでの音楽は静かで落ち着きがあり、内省的で、時に遊び心を感じさせつつも、しばしばどこか暗い影を帯びている。オメアラは、2018年に心臓発作のため65歳でこの世を去った。

「静かな部屋で瞑想に耽ることができれば、それに越したことはない。だが、私たちがそんな場所に身を置けることは滅多にないのだ。だから、いつも同じ疑問が浮かぶ。この混沌のただなかで、いかにして静寂を見出せるだろうか?」 - C.W. ヴルタチェク

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2026年5月4日月曜日

Tim Weston / Shelby Flint - The Lady Weeps


St.GIGAアーカイヴ「Coral reef A」より。LAジャズ/フュージョンの名門グループを渡り歩いたギタリスト/作曲家Tim Weston(ティム・ウェストン)と、60年代初頭のフォークシーンから活動するシンガーソングライターShelby Flint(シェルビー・フリント)。公私ともに長年のパートナーである二人が1993年に発表したアルバム「Providence」からの選曲。Gary Willisのフレットレス・ベース、Peter Erskineのドラム、John Beasleyのピアノという、当時のLAシーンを象徴する精鋭たちが支えるクワイエットで洗練されたジャズサウンドで、穏やかな緊張感の中で各奏者の細やかなニュアンスをじっくり味わえる構成になっています。50代を迎えたフリントの深みのある歌声と、40代前半のウェストン。二人の信頼関係から生まれる親密な熱量が伝わってくる実に佳い一枚です。音の潮流はその後、波のSEとともにLiz Story「Leap of Faith」、David Foster「Water Fountain」へと連なっていきます。

2026年4月30日木曜日

Fila Brazillia - Mess


Label: Pork Recordings
Catalog#: pork 031
Format: CD, Album
Country: UK
Released: 1996

1 The Last Of The Red Hot Brethren 2:15
2 Big Saddle 4:58
3 Space Hearse 6:07
4 Half Man Half Granary Thorax 1:39
5 But Momma 4:55
6 Laying Down The Law On The Lard 5:03
7 Wavy Gravy 4:37
8 Soft Music Under Stars 10:10
9 Hairy Insides 6:50
10 Dp's R Us 2:32
11 On Yer Haunches 4:51
12 Howard Dan Ryan 5:34
13 Blood 5:33
14 The Return Of The Red Hot Brethren 2:13

掴みどころがなく、なんとなく入り込めずにいたFila Brazillia。それがふとしたきっかけで腑に落ちて、それからは初期から中期にかけての作品を繰り返し聴くようになりました。なかでも特に気に入ったのが、フロア志向から生バンド的なアプローチへの移行期にあたる「Mess」と「Black Market Gardening」。
彼らのサウンドは、大まかにはダウンテンポやチルアウトに分類されるもの。しかし、実態はとても複雑でプログレッシヴな折衷主義で、一つの楽曲から特徴を捉えようとすれば、次の曲ではぐらかされることもあります。カウチに座ってテレビをザッピングし、積み上げられた雑誌を斜め読みし、棚から古いレコードを気まぐれに選んだりする。そんな散漫な好奇心が、いつの間にか自分が宇宙飛行士やロックスターであるかのような妄想遊泳へと繋がっていく。男臭くも繊細で、夢見がちな感性を備えた英国趣味人たちが集うメゾンやコーポ。あるいは秘密基地。彼らの拠点としていたインディペンデント・レーベルPork Recordingsは、そういった場所だったのだろうと思います。
1996年発表の3rdアルバム「Mess」は、自然体で力の抜けた彼らの美学が高純度で具現化された一枚。初作に見られた電子的なダンスグルーヴはさらに抑えられ、よりオーガニックで緻密なリスニング志向のサウンドへと移行しています。テクノ/ハウスやヒップホップのフォーマットを前提としながらも、自分たちのバンド経験に裏打ちされたサイケデリック・ジャム的な反復、ズレやヨレといった呼吸感に重きを置いたルーズでレイドバックしたファンクネス。さまざまな音楽からの引用や奔放なアイデアを感性の赴くままに詰め込んだようでいて、アルバム全体としてはミックステープを聴いているような統一感があり、どの楽曲も人の手が作り上げた生々しい感触が充溢しています。
過度に主調せず、手も抜かず。飄々として粋を尊ぶ、彼らなりの音楽愛。現代のインターネット・ブラウジングやプレイリスト文化を先取りするような雑食的な編集感覚と、決して意味を捨てない絶妙なバランス。それが、本作を色褪せない名作たらしめている所以なのかもしれません。掴みどころがないゆえに、聴くたびに意外ところで仕掛けや遊び心に気付かされることもあり興味深いです。

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2026年4月28日火曜日

Marco Lucchi - Il Gioco delle Perle di Vetro


Label: Muscando
Catalog#: MUS 032
Format: CD, Album
Country: Italy
Released: 1999

1 Intro 5:21
2 Invito 1:18
3 Meditazione # 1 5:18
4 Musa 2:20
5 Danza # 1 3:33
6 Danza # 2 4:49
7 Invocazione 5:43
8 Canto 0:52
9 Lied 2:32
10 Meditazione # 2 9:32
11 Outro 3:51

80年代イタリアン・エクスペリメンタルの地下水脈から現れた、モデナ出身の作曲家/マルチ奏者Marco Lucchi(マルコ・ルッキ)。初期の電子音楽をはじめ、イーノの生成音楽や武満徹作品の再解釈、Arvo PärtやSimon Jeffesへのオマージュ、東洋美学への傾倒を投影したピアノ・アンビエントに至るまで。自主レーベルStella Neraを拠点に、現在まで膨大な作品群を発表し続けています。本作は、ヘッセの遺作であり精神的到達点「ガラス玉演戯」を主題に、1997年に開催された水彩画展「Mostra degli acquerelli di Hermann Hesse」での朗読とダンス・パフォーマンスの付随音楽として構想されたコンポジションを収録。Lino Capra VaccinaやFrancesco Messinaらとも共鳴する、地中海特有の幽かなエキゾチシズムと迷宮めいたミニマリズム。「音楽と数学が統合された架空の遊戯」というヘッセの知的ヴィジョンを、中世的な静けさと夢想的アンサンブルで音像化した、彼のキャリアにおける名演のひとつです。

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2026年4月26日日曜日

Alberto Lizarralde - Haizetxe


Label: Hegoa Records
Catalog#: Heg 006
Format: Vinyl, LP, Album
Country: UK
Released: 2023

A1 Herrikoia 2:46
A2 Plegaria 3:22
A3 Shhh... Klakk 2:57
A4 Mr. Josef's House? 2:48
A5 Jokuak 3:04
A6 Ballerina 1:00
A7 Langsam 3:25
A8 Haizetxean, Gauez 3:05
B1 Paisaia 2:17
B2 A L'Aube 3:23
B3 Aingeruak 7:44
B4 Time Of Memories 3:06
B5 Katrin Kanta 1:27
B6 Ai Alai Alai! 2:20
B7 Hiart Kanta 1:46

「緑のスペイン(エスパーニャ・ベルデ)」と呼ばれる大西洋沿岸、バスク地方。乾燥した中南部とは対照的に、曇りや雨の日が多い湿潤な気候と海岸線から峻険な山々が切り立つ地形は、日本でいえば北陸の富山や能登に近い風土なのだそうです。
本作は、深い原生林に囲まれた山間の村ザルディビアに構えられた自宅スタジオ「アイゼチェ(風の家)」で、80年代半ばから90年代にかけて4トラックのオープンリールに録り溜められていた、ごく私的な音の記録。長年リリースされることなく棚の奥で眠っていたこれらの音源を、ロンドンのレーベルHegoaが発掘・編纂。作者は、サン・セバスティアンの即興音楽学校「Jazzle」の創設者であり、自身のレーベル運営を通じて現地のジャズ/現代音楽シーンを支えてきたAlberto Lizarralde(アルベルト・リサラルデ)。
Prophet 5やRoland D-110といったシンセサイザーのシーケンスを軸に、ギター、フィールドレコーディング、ラジオの断片、伝統的なメロディや文学・映画からの引用がモザイク状に編み込まれたポストミニマル/アンビエント。ECMにも通じる静謐な美意識を感じさせつつ、それ以上にバスクという固有の文化圏が醸し出す土の匂いや、民族的な手触り、独り音と対峙してきた親密で穏やかな空気感が色濃く漂っています。Pablo Mirónによる趣深いアートワークを含め、「La Llama De Prometeo」の系譜に連なる素晴らしいコンパイル。

The Basque Country, along the Atlantic coast, is often called “España Verde” (Green Spain). Unlike the dry central and southern plains, its damp air and the way the rugged mountains rise straight from the sea feel very much like Japan’s Hokuriku region, perhaps Toyama or the Noto Peninsula.
This album is a very private “sonic diary,” woven from 4-track open-reel recordings made between the mid-80s and the 90s. These sounds were captured at “Haizetxe” (House of the Wind), a home studio tucked away in the mountain village of Zaldibia, surrounded by deep, ancient forests. After resting quietly on a shelf for many years, these recordings were finally found and gathered together by the London label Hegoa. The music comes from Alberto Lizarralde, the founder of the “Jazzle” school in San Sebastián and a long-time heart of the local jazz and contemporary music scene.
Building around sequences from the Prophet-5 and Roland D-110, the music is a delicate mosaic of guitar, field recordings, radio snippets, and echoes of traditional melodies or films. It carries a serene beauty reminiscent of the ECM label, but even more, you can feel the "scent of the earth" and a handmade, folk-like texture unique to the Basque culture. There is a beautiful, intimate stillness here—the feeling of someone quietly facing their own sound in solitude. With its lovely artwork by Pablo Mirón, this is a wonderful archival release that truly belongs in the lineage of “La Llama De Prometeo.”

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2026年4月22日水曜日

Cinq - Sketch


Label: Noble
Catalog#: CXCA-1094
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2002

1 Rill 5:44
2 Kicker 8:02
3 Lefty 5:56
4 Spillover 6:34
5 Sugamo Beach 7:02
6 Sleepy Eyes 7:49
7 DaN 5:48

「ケルンの深い針葉樹林」「綺麗な蜘蛛の巣をぬける木漏れ日」「夜と朝のあいだの、薄青い時間」「誰もいない学校の体育館」。───これらの言葉は、本作リリース時に他のアーティストやライターたちが寄せたコメントから一部抜粋したものです。既成のジャンルやタームをなるべく避け、それぞれに思う風景や出来事を重ねながら、この作品の不思議な魅力に触れようとしている。それがなんだかとても納得がいきます。エレクトロニックとアコースティック。都市と自然。冷たさと温かさ。音響派以降の繊細な感性が、何かと何かの間にある最も平穏な場所にぽつんと浮いている。本作「Sketch」は、涼音堂茶舗の中心的ユニットsnoweffectのメンバーである竹村理明が、ソロプロジェクトcinq(サンク)名義で発表した1stアルバム。リリース元は、MIDI Creative傘下で「日常のための音楽」をコンセプトに立ち上げられたnoble。公式ページはいまも当時の空気のまま残されています。

“Deep coniferous forests in Cologne.” “Sunlight filtering through a beautiful spiderweb.” “The pale blue hour between night and morning.” “An empty school gymnasium.” — These fragments are taken from comments by artists and writers at the time of the album’s release. It feels only natural that they chose to avoid conventional genres, reaching instead for personal landscapes to describe the mysterious allure of this music. Electronic and acoustic. Urban and natural. Cold and warm. A delicate post-digital sensibility floats quietly in the serene space between one thing and another.
Sketch is the debut solo album by Masaaki Takemura (a member of the unit snoweffect) under the name cinq. It was released on noble, a sub-label of MIDI Creative dedicated to “music for everyday life.” Even today, the official website remains, capturing the same atmosphere of those early days.

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2026年4月19日日曜日

The Painted Word - Universal


Label: Firestation Records
Catalog#: FST 181
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Germany
Released: 2020 (1995)

A1 Somewhere In the World Tonight 4:51
A2 I Dream 4:10
A3 Universal 6:20
A4 Breathless 4:00
A5 The Blues In Your Eyes 4:58
B1 Night After Night 5:34
B2 Smile 4:02
B3 Starlight 5:24
B4 Life 5:22
B5 My Song 6:16

80年代末にRCAから「スコットランドの新しい才能」として華々しくデビュー。その後、90年代半ばにセルフプロデュースで制作されるも、プロモ盤がごく少数出回るのみにとどまったという不遇なセカンドアルバム。長年幻とされてきた本作を、ドイツの名門レーベルFirestation Recordsが尽力し正規再発。3-4人ほどのバンド形態を思わせる佇まいですが、実態はグラスゴー出身のシンガーソングライターAlan McCusker-Thompson(アラン・マカスカー=トンプソン)によるソロプロジェクト。ソングライティングから編曲、ボーカル、楽器の演奏のほぼ全てを一貫してトンプソン自身が担っています。メジャーを離れ、一人真摯に向き合い大切に温めてきた楽曲たち。前作「Lovelife」にあった若々しさが後退する代わりに、よりパーソナルで内省的な空気感と、磨き上げられた美しいメロディが詰まっています。誰かを優しく励ますような「Smile」。遠く輝く星の光を希望に喩えた「Starlight」。生きていくことの重みを肯定する「Life」。そして、孤独に歌い続ける決意を刻んだ「My Song」へ。終盤にかけてのメランコリックな流れに引き込まれます。ブリットポップの狂騒の裏側で、静かに聴かれるべきであったクワイエットなポップソング。The Blue Nile、It's Immaterial、Prefab Sprout。その「ブルーアルバム」の系譜に連なるタイムレスな秀作です。

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2026年4月17日金曜日

PJ Moore & Co - When A Good Day Comes


Label: Mozie Records
Catalog#: MOZIE080CD
Format: CD, Album
Country: UK
Released: 2022

1 Need To Believe 3:56
2 Good Until It's Gone 5:10
3 Halfway Crazy 5:42
4 Pale Moonlight 3:52
5 All That You Wanted 4:33
6 Next Time It Rains 3:26
7 When A Good Day Comes 4:34
8 Windows For Submarines 4:32

近年、アンビエント・ポップの一つの指標として語られるスコットランドの至宝The Blue Nile。フロントマンであるポール・ブキャナンの切なる歌声。その溢れ出るような感情が安直なバラードに流れてしまわないよう、ストイックなまでに音を制御し、膨大な時間を費やしながら音響設計を追求し続けたのが、バンドのもう一人の核であるポール・ジョゼフ・ムーアの存在でした。都市の孤独感と温もりが同居する、あのエレクトロニックな質感は、サウンドデザイナーたるムーアの職人的気質と、静かな執念の積み重ねから生まれていたのだと思います。またその反面、執拗なこだわりゆえに寡作なバンドでもありました。
2004年に発表された4thアルバム「High」を最後に、バンドは活動を休止。他のメンバーがそれぞれの道を歩む中、ムーアは表舞台から完全に姿を消します。息子が大学を卒業するまで見守り、一人の生活者として平穏に暮らす日々。それでも自宅のスタジオでは、誰に聴かせるためでもない音源が少しずつ録り溜められていきました。その断片的な音源を世に出すべきだと背中を押したのが、クラシック作曲家である旧友マルコム・リンゼイ。パンデミックという苦難を経て、およそ18年ぶりに届けられたアルバムがこの「When A Good Day Comes」。ムーア自身は歌わず、若きシンガーのマイク・マッケンジーを起用。独りでは成し遂げられなかった証として、名義は「PJ Moore & Co(共同体)」とされています。
いまだ重苦しい現実の中にいることをどこかで受け入れながら、それでもいつか訪れるかもしれない「良い日」に向けて静かに息を整える。かすかな希望のような音楽。The Blue Nileの「その後の物語」として、一人の男の半生が刻まれた、実直で普遍的なポップネス。マッケンジーの歌声が実に素晴らしいです。すべての曲に魅力があり、若さをとうに通り過ぎた者として深く心に染み入るものがあります。

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2026年4月15日水曜日

Andreas Martin - Doppelpunkt Vor Ort


Label: Robot Records
Catalog#: RR-03
Format: Vinyl, 10", Clear
Country: US
Released: 1994

A1 Die Sagenhaften Hühne 6:38
A2 Bärenluder 5:57
B1 Wurstfinger 3:24
B2 Fahrradmusik 6:45
B3 Hirschmöhre 2:46

独ビザール音響の極北H.N.A.S.(Hirsche Nicht Aufs Sofa)やMimirの一員として知られる、アーヘン出身の異能音楽家アンドレアス・マルティン。Mimirでの活動期にあたる92-93年に録音され、米レーベルから10インチ盤で発表されたキャリア初のソロ作品。実弟クリストフ・ヒーマンとともに地下実験音響/ポスト・インダストリアルの深淵に身を置きながら、一方ではマイケル・ヘッジズに代表されるアメリカン・ニューエイジやプリミティブ・ギターとも共鳴する素養を併せ持つマルティン。本作では、その両極的なバックグラウンドを内なる風景を旅するような深遠なミニマリズムへと投影しています。清冽なアルペジオの反復、オルガンやアコーディオンの持続音、テープ変調などの実験的手法を交錯させたマージナルな音像。焚き火の煙、枯草、あるいは古い農作業小屋の匂い。サイケデリックでありながら過剰な逸脱はなく、地に足のついた没入感と乾いたトランス感覚が静かに醸し出されるフォーク・サイケデリアの秀作。タイトルは「現場からのコロン(:)」の意。「熊のふしだら女」「ソーセージの指」「鹿の人参」といった謎掛けのような曲名も、H.N.A.S.(ソファに鹿を上げるな)から連なる彼ら特有のシュールな美意識を映し出しています。

Andreas Martin, a singular musician from Aachen, is renowned for his work with Mimir and H.N.A.S. (Hirsche Nicht Aufs Sofa), a project that represents the outermost reaches of bizarre experimental sound. Recorded in the early ’90s during his time with Mimir, this 10-inch record was released in 1994 on a U.S. label as his debut solo work. While deeply immersed in the depths of German underground experimental music alongside his brother Christoph Heemann, Martin also harbors an affinity with American New Age and primitive guitar traditions, as exemplified by Michael Hedges. In this work, he projects that background into a profound minimalism that unfolds like a journey through an inner landscape. A liminal soundscape emerges, interweaving pristine, repetitive arpeggios with sustained tones from organ and accordion, alongside experimental techniques such as tape modulation. It conjures the smells of campfire smoke, dried grass, and old farm sheds. Psychedelic yet never tipping into excess, the album fosters a grounded and gently immersive atmosphere, imbued with a dry, understated trance-like quality—making it a standout work of folk psychedelia.

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2026年4月12日日曜日

va Music For Plants


Label: PerfectIfOn
Catalog#: 85926/2
Format: 2xCD, Album, Compilation
Country: US
Released: 2005

1-01 Mice Parade - Guitars For Plants 4:40
1-02 Tetsu Inoue & seed( ) - Untitled (Panspermia) 5:26
1-03 No-Neck Blues Band - Sekura Melody 3:43
1-04 Languis - Photosynthesis 5:38
1-05 HiM - Moss Garden 4:08
1-06 Syntony - Ceremony (To Grow By) 1:05
1-07 Deakin and Geologist - Seeing Twinkles 3:45
1-08 Ariel Pink - Passing The Petal 2 U 2:43
1-09 Delia Gonzalez & Gavin Russom - Field Effect 4 2:25
1-10 Sunburned Hand of the Man - Somaville Lumber 4:46
1-11 Ara Peterson - White Window 3:36
1-12 Hiroshi Sunairi & Hideyuki Mari - Piano By The Sea 1:09
1-13 Fugu - Pianolyre 1:40
1-14 Tony Goddess - Bees 2:52
1-15 Zs - Red On Still 3:29
1-16 Anthony Burdin - Prodigious Manipulator 4:04
1-17 Wiese & Koh - Guys From Paradise 4:03
1-18 This Invitation - A Silent Tropic 3:08
1-19 Kenta Nagai - Flower Ghost 1:58
1-20 Liam Gillick - Untitled Music For Plants 3:27
1-21 Kites - Miracle Of Thought 1:08
2-01 Jutta Koether, Alan Licht & Tom Verlaine - Plant Jam 5:13
2-02 Black Dice - Greenhouse Tune 2:30
2-03 Arto Lindsay - Plant Mix 2:15
2-04 DJ Olive - Coffee, Oxygen & Gas 3:06
2-05 Phil Manley - Green Theme 2:17
2-06 David Grubbs - Leopard Island 3:10
2-07 Electrophilia, Jutta Koether & Steven Parrino - Vibration 0:54
2-08 Carter Thornton - Zashikwarashi 6:56
2-09 LoVid - Pineapple 1:50
2-10 Flanged Confection - Chlorophoric Optimal Antics 2:44
2-11 Christian Marclay - Green Breath 3:04
2-12 Tim Barnes, Chris Corsano, Sean Meehan, Barry Weisblat & Michael Evans - Plant Music 13:20
2-13 Rusty Santos - Feel Radio Signals (Botanical Mix) 3:07
2-14 Roland Alley - Saya Mau Minum Air (I Want to Drink Water) 4:57
2-15 Dearraindrop - Cannabis Cloudfloat 2:18

アメリカの現代美術家ピーター・コフィンが、2002年にニューヨークのAndrew Kreps Galleryで発表したインスタレーション作品《Untitled (Greenhouse)》。ギャラリー内に文字通り「温室」が設置されたこのプロジェクトでは、招聘されたミュージシャンが温室内で植物に向けて演奏を行うライブ・パフォーマンス・シリーズ「Music For Plants」が並行して展開されました。本作は、そのライブ音源を中心にコフィン自身が編纂したコンピレーション・アルバム。参加したのは当時のインディー/オルタナティヴ・シーンの最前線をゆく錚々たる顔ぶれ。アンビエント的なアプローチに留まらず、ざっくりとした手触りのアコースティック・ミニマルからフリーフォームな即興演奏、宅録的なローファイ・フォーク、ライブ・エレクトロニクスまで多岐にわたり、当時の実験音楽や音響派界隈の空気感が色濃く反映されています。70年代の「植物の神秘生活(The Secret Life of Plants)」に代表されるロマンチックなオカルト思想を現代アート文脈で再解釈しつつ、音楽が植物に与える科学的効果よりも「植物の耳を借りて聴く」という人間側の知覚や想像力の拡張を試みる遊び心がユニークです。アートワークは、写真家ヴォルフガング・ティルマンスによる「Icestorm (2001)」。

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