その水の名前は 雲。雲は地上にこがれて。その水の名前は 雨。初夏のやわらかい雨になる。その水の名前は 川。歓びの声をあげて流れる。川は大地を潤し、水は音もなく吸いあげられる。草に。木に。その水の名前は 花。一斉に咲き乱れる、高原の桜。ツツジ。その花びらを剥げば。私は水。あらゆる草や木とともに、めぐる水に足を浸している。あらゆる生き物とともに、私はめぐる水の名前のひとつ。その名前の水は 海。無数の流れはただひとつの大きな水となり。たゆたう光の中、空にこがれる。その水の名前は 雲。
St.GIGAアーカイヴ「Time of water A」より。Brian Eno「2/2」と、寮美千子によるヴォイス「水の名前」。(※放送時の朗読を聞き起こしたため、作者ご自身が公開されているテキストとは一部表現が異なっているようです。)音の潮流はその後、小久保隆「森の目覚め」、Morgan Fisher「Shinesound #1」、小久保隆「水の城」、吉村弘「Time Forest」と連なっていきます。St.GIGAは、遙か遠くに存在する誰か——あるいは自分自身の——足音に、目を閉じて耳を澄ますような感受性を必要とする人々にとって、心の拠り所として聴かれていたのかもしれません。