フランスの偉大なアンビエント智者エクトル・ザズーが、北極圏周辺の厳しい自然環境とその土地に息づく伝統歌にフォーカスして制作した94年作「Songs From The Cold Seas」(原題:Chansons des mers froides)より。アルバムでは3曲目に収録され、後にリミックスカットされた曲。作曲はザズー自身。歌詞はアイルランドの詩人オスカー・ワイルドの詩「Silhouettes」に基づき、ヴォーカルはスザンヌ・ヴェガとジョン・ケイルが担当。ブックレットには、1878年に史上初めて北東航路を制覇したフィンランド出身の探検家ノルデンショルドの航海記録からの引用が添えられています。文化人類学的な視座、遠い歴史に静かに耳を澄ます姿勢、人種と文化を越えた文学的知性に至るまで、素晴らしくクワイエット・ヒップな作品だと思います。
「北西航路を初めて切り拓いた船の一隻は、「ヴェガ号」と呼ばれていました。氷の極地を征服したその船と、スザンヌ・ヴェガの温かな歌声が同じ名前であることは、単なる偶然とは思えないほど密接に結びついています。今回、「ラ・ヴェガ(ヴェガ号/スザンヌ)」に同行するのは、ウェールズ人のジョン・ケイル(彼の先祖もまた冷たい海を渡った人々です)と、ダブリンの不逞の輩、オスカー・ワイルドです。それは確かに長い航海であり、脳波をたゆたう物憂げなクルーズでもあります。浮き沈みを繰り返しながら描かれるこの「大いなる北(The Great North)」の様式化された肖像は、見かけよりもずっと現実味を帯びているのです。」
「ヴェガ号の乗組員と、係留地の隣の村に住むチュクチの人々との関係は、すぐに非常に友好的なものとなりました。そこには多くの子供たちがいて、彼らは幸せそうで健康、そして親たちに大切にされていました。女性は男性と対等に扱われていました。チュクチの人々は、いささか混乱した清潔感を持っています。さらに冬の間、水を手に入れるのが非常に困難な時期(彼らはオイルランプの上で氷を溶かして水を作ります)、女性たちはためらうことなく尿を使用します。食事の後、この独特な「オー・ド・トワレ(化粧水/トイレの水)」を満たしたボウルで彼女たちが手を洗うのを目にすることも珍しくありません。この人々には、生まれ持った誠実さがあります。冬の間ずっと、ヴェガ号の乗組員から窃盗に関する苦情はただの一件も出ませんでした。」 - アドルフ・エリク・ノルデンショルド男爵 ▲